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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
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ガリュー狩りへ行く

学校へ入学することができるようになるまであと一ヶ月を切った。

 いつもと変わず、父さんと話しながら、朝食を食べていたら、突然父さんが言った。


「もうお前も一ヶ月でここから長いこといなくなることになる。まあそうならない可能性もないわけではないが、かなり確率は低い。そうなると、もう長いこと俺はお前と会えなくなるわけだ」


 ちなみに学校は寮生活。

 さらに、現代日本のように飛行機はおろか、新幹線、電車やバスなんてものは全く存在しない(と、聞いている)。あるのは馬車だけだ。

 休みの日にちょっくら帰るか。なんて甘い考えで帰ってこれるほどの距離でもないので、一値帰っている暇なんてありゃあしないのだ。

 

 そうすると、卒業までの三年間、この家に帰ってくることはまずないだろうと、父さんにも言われていた。

 前々から言われていたので、なんとなく決心はついていた。


 今更ホームッシックなんて言ってられないのだ。


 ああ日本が恋しい。なんて何度思ったことか。

 海外…まあこの場合国どころか世界規模で変わってくるが、とにかく日本を一歩出るとこんなにも文明の差が出てくるとは思わなかった。


 綺麗好きな俺からしてみれば、掃除機が恋しくて仕方がない。


 とは言いつつも、少しづつこの生活に慣れてきていて、結構大丈夫になってきたけど。


 掃除に関しては、父さんが風魔法で埃という埃を風で巻き上げて窓から外に放出するという荒技で、なんとかなっている。

 男だから、とか、父さんがもと冒険者だからガサツとかいうわけじゃなくって、それが一般常識らしい。


 まあそれはそれで埃が舞い上がって竜巻見たくなっているところを見るのは何気に面白いから嫌いってわけではない。


 問題なのは、ハウスダストアレルギーになりそうなことくらい。

 

「だからな。お前と一緒にしときたいことがあるんだ」


 俺が変なこと考えていた間にも、父さんの話は続いていた。


「何?」


「一狩り行こうかな。っと思ってな」


「一狩り?ってまさか、イノシシ的なのを狩りに行くってこと?」


「そうだ。何に出会うかはわからないが。お前に学校に行く前に魔術ってものを見せておきたくてな」


「魔術?魔法じゃなくて?っていうか同じもの?」


「いや。微妙に違う。同じように俺が手から火の玉を出しても、料理に使ったら魔法、生物に使ったり、ものとかを傷つけたりしたら、魔術だ。威力とか、使う対象とか、なんか色々な条件で呼び名が変わるってだけだ」


「使う用途によって言い方が変わるってことなの?」


「まあ、まとめてしまえばそうなる」


 ぽりぽりと顎の辺りを掻きながら、そういった父さんは、立ち上がり、家の玄関口の扉の横にかけてあった布袋をとって、俺に投げた。


「何も起こらなければ使わないとは思うが、少しの金と、食料、あと色々入っている。もう直ぐにでも出かけるぞ」


「え?直ぐ?午後からじゃダメなの?」


 俺は前世、サイクリングがちょっとした趣味で、午後でも時間があれば料理かサイクリングに出かけたもんだが…。

 だいたいまあ、二時間あれば30キロメートルは余裕だったはず。昼からでいいと思うんだが。


「ダメだ。何時に帰ってくるつもりだ。日があるうちに帰らないと、魔獣に襲われるぞ」


「ま、魔獣?」


 なんかエネミー的な名前がやっと出てきたな。


「そうだぞ。夜になると活発化するからな。絶対に夜の狩場なんかに行っちゃあダメだ。大人になるまでは」


「そんなに魔獣っていうのは恐ろしいものなの?」


「ああ。冒険者でも、多少腕のあるやつじゃないと一人で倒せない。厄介な野郎だ」


 冒険者でもてこずる相手、か。まあ冒険者がどれくらい戦える人なのか知らないから冒険者の物差しで言われてもあんまりピンとこないけども。まあそれは仕方がないか。


 魔獣もいるってことはやっぱり魔王とかもいるのかな。


 別にダークサイドに憧れ抱いているわけじゃないけど、なんか会ってみたいよね。魔王って。

 なんかかっこいいイメージある。まあそれ以上に勇者の方がかっこいいイメージあるけど。


「だから、もし野宿なんかするときも、準備は日があるうちからしないといけないし、実際に寝る時間になってっも、交代で見張りしないと、一晩眠るつもりが、永遠の眠りについてしまった。最後の晩餐がまさかの不味いシチューになるとはってことになりかねないしな」


 さらっと怖いこと言ってくれてんじゃねえよ。

 地味にギャグかましたつもりかもしれないが、実際そういう人がいそうで笑えない。


「まあとにかく、夜になる前。日が沈む前にここに帰ってこれるようにしたいから、もう直ぐにでも出るぞ」


「でもわざわざ魔術見せるくらいなら、別に遠くに行く必要ないんじゃないの?」


 頑なに拒否するわけではないが、できれば森とかそういうところに行きたくないんだよな。

 なんか虫がたくさんいそう。俺本当に虫が苦手なんだよね。まあ行きたくない理由はそれだけじゃあないけど。


 しかもどうせ、虫除けなんてないんだろうし。せいぜいて天然由来の肌に優しい薬があるくらいだろうし。

 本当に虫嫌い。だから狩場ってとこにはできれば行きたくないな。まあ将来的に確実に行かなくちゃならない日がくるはずなのは確かなんだけども。

 というか、虫のモンスターみたいなのもいるんだろうな。

 考えただけで虫唾が走る。気持ち悪くて仕方がない。


 できれば家から出たくないし、最悪、虫の多いところに行かなければいい。

 なんで森なんだ!?と、声を高らかにして叫びたいくらいだ。

 まだ小学校に入っていないような年齢の今なら、多少のわがままくらい聞いてもらえるのではないだろうか?


「やだ。家でやろう。森行くの面倒臭いし。ね?いいでしょう?」


「あのな。魔術ってのはそれなりに威力が高いんだ。俺だって最近まともに使ってないから、制御できなくなってこの家が木っ端微塵になることだってあるんだ。見てろ」


 そう言いながら父さんは、ぶつぶつと呟きながら、指の上に炎を出した。


 ゆっくりとその炎は大きくなったり小さくなったりを繰り返している。


「こんな風に、大きさを微妙に調節するのにも、まあまあ集中しないとならない。魔力の消費量が多いと多いほどにだ。今はそんなに難しいものでもないし、魔力もあんまり込めていないから、こうやって話しながらでも調節できるが、本格的に魔術を撃つときには、基本は制御の補助として呪文を唱え続けるのが一般的だ」


「じゅ、呪文?」


 なんか呪文ってダサそうな気しかしない。

 闇を灯せ!とか、水の精霊の加護を!とかそんななんか中二病感満載な呪文しか俺の頭の中には浮かんでこない。


 ちなみにさっき父さんがぶつぶつ言っていたのも、呪文の一種だそうで、どんな簡単魔法でも、詠唱なしではできない場合があるそうだ。詳しいことは知らないが、無詠唱で魔術が撃てると「無詠唱…だと?」とかなんとか敵キャラが言って驚くようなテンプレシーンが出来上がりそうだ。


「まあとにかく行くぞ。早く行かなきゃ日が暮れちまうよ。それとも家の中でやって家を爆発させたいのか?」


「わ、わかったよ。行くよ」


 さすがに家が燃えるのは勘弁だな。そう思った俺は虫がどうこう言うのを諦め、狩場へ行く支度を始めた。


 荷物をまとめ、カバンに詰め込む。

 日帰りの遠足のような気分だ。特に何か必要なものはなく(少なくとも俺は)、適当にカバンにそれらしいものをつ埋めて終わりだ。


 父さんの支度が終わると、俺たちは家を出た。

 馬車停(バス停的な場所)に行くのだ。

 そこで俺たちは馬車に乗り、ある場所へと向かった。

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