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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
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彼の国、その部屋より

ある国の話と、今後の展開ポロリです。

 ガリューが歴史や魔法について父から聞いていたその次の日の出来事であった。


 それはガリューたちのいる国からそう離れていない国。

 とある国。とある都。とある城の一つの部屋にて。


「して、お前。あの薬は?」


 男が二人、部屋の中でカップに茶を注いで午後のティータイムを楽しんでいる。


「はい。順調でございます。例の男から頂いたサンプルの方、ちゃんと研究を進めています。早ければ数年で実用化ができるかと思われます」

 

「そうかそうか。それはいい。実にいい。あの薬は実に画期的なものだ。くれぐれも、この研究を失敗させないように頼むぞ」


 おそらくこの二人の中では偉い方なのであろう。椅子に座って茶を飲み干した男は、ニヤリと笑う。


「今回の研究は、我々の国家の命運を分ける、大事な、それはそれは大事な研究になるだろう。我々の軍隊そのもの、いや、国民全員を不死の、不滅の戦士にすることもできる」


「はい。その通りでございます」


 メガネをかけ、座った男の方を向いて立って話をしている男は、メガネを指で押し上げ、そういった。


「ふふふ、夢のようじゃあないか。自我を持ったまま生物を魔獣化する薬。なんて。まさに夢の薬だ!ははははは!」


 空っぽになったカップを机に戻し、座っていた男は立ち上がった。


「ついに我々は、あの国さえも滅ぼし、この世界の実権を。この世界の実質的な支配をする手前までやってきたのだ。あの男は利用するだけ利用する。あの組織に関しても、それは同じ。案ずることはない。気がついたときには全て、我が手中に収まっている」


 そう言うと前方に手を伸ばした。

 手を伸ばした先には、小さな球体を半分に割ったかのような形をした模型。


 それを手に取り、力強く握った。


「まったくその通りでございます。全ては、計画の礎に過ぎません。捨てるものは捨て、必要なものだけを残す。実に良い方針です」


「うむ。もう覇道は見えている。いや、もう歩き始めている。今更踏み外すなどということはありえない。過去の我が国の人々さえも、過去の皇帝たちもなしえなかった、制覇へのリミットは、もう近い。私は過去の皇帝共クズドモとは違う」


 半球は男の手によって握りつぶされた。

 何か恨みでもあったかのように、ぐちゃぐちゃに。


「我々が目標とするのは、この世界ではない。神そのものだ。そのための一歩が、この世界の征服。もう、神への挑戦ははじまっている」


 くどいと言えるほどに男は世界を平定するといった意味合いのある言葉を連呼する。

 男の目からは闘志のような何かが明確に燃え上がっているのが伺える。


「して、申し上げにくいのですが、一つ、よろしいでしょうか?」


「むう?なんだ?」


 眼鏡の男の方から、座っていた男の話を遮るかのように話を始めた。


「実験の失敗作。あれらはどうしますか?」


「ああ。あれは全部やつらに渡しておけ、やつらはそういうのの専門だろう?」


 男はまた椅子に座り直して答えた。

 その間にもポッドからさらに茶を注ぐ。


「わかりました。そうしておきます」


「まあくれぐれも、人体実験はある程度の安全が確認できてからやるように伝えよ。できるだけ面倒なものは作りたくない」


 茶をすすりながら男はそう付け加えた。


「了解いたしました」


 眼鏡の男はそう言って、部屋から出て行った。


 一人、部屋に残った男は茶をすする。


 男、名をヴィルムヘムと言う。

 かの列強国、とも呼ばれる世界で上位8の国に入るいわば、最強角の国家の一つ。

 その国の皇帝であり、類まれなるカリスマ性より、彼はある薬品の研究に力を入れていた。


 生物を魔獣へと変化させる『史上最悪の薬品』。名ファング リ・バイビング。

 死んだ生物の死骸にかければ息を吹き返し、生きている生物に飲ませれば魔獣化する。

 魔術師が手に塗れば、魔術で魔獣を作り出すこともできる。


 そんな、裏社会でのみ扱われている薬を、彼は自身の国の軍に活用でいない考えた。


 魔獣そのものは、理性を失った化け物。脳みそなんてあってないようなもの。

 手当たり次第に動くものを破壊し尽くす。

 極端に低くなった知能の代わりに、強靭な肉体と高い生命力、そして特殊な能力を得る。


 そんな魔獣化をさせる薬が開発されて早数十年。

 そこから彼は、その薬を改良し、知能の低下を抑えることは不可能なのか、研究に研究を重ねた。

 彼が望むのは、魔獣人間、いわゆる、魔人の大量生産と、その魔人の軍隊への実用化、そして、自我を持った生物兵器とすることだった。


 そのためには、目先の他の列強国家が邪魔で邪魔で仕方がなかった。


 やつらを消す必要がある。


 そう考えた矢先の出来事だった。


 まさか数ヶ月後、地方の魔術師学校でそんな大事件が発生するとは。

 そんなことは、誰も予想していなかったのだ。

 

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