歴史を知る
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いつも通りに朝食を食べ終わると、俺は父さんに言った。
「ねえ。歴史について知りたいんだけど」
「はあ?歴史が知りたい?この国のか?」
「いや。この世界の歴史が知りたいんだよ。頼むよ父さん」
「この世界って…。そんなまだ6歳にもなってないような子供にするような話じゃないだろうに」
「そこをなんとか。最近興味ばっかり湧いちゃってさ」
今では完全に言葉を覚え会話することはもちろん、文字の読み書きも基礎的なものならできるようになった。
ここまで話ができるようになれば、本に書かれていないようなことを父さんに聞くのもいいだろう。
この転生してきた世界について知りたいと、もう何年も前から思っていたのだから。
魔法はあるわ、獣人はいるわ、家電はないわで、いろいろと驚きの連続だったこの世界で、最初に得るべきものはまず情報。
この世界について知ることは最も重要なことであると、俺は考えた。
「まあな、勉強することをダメだとは俺も言い難い。だがな、お前は勉強のしすぎで、近所の人たちに気持ち悪がられてるんだぞ」
「え?そーなの?まあそんなことはどうでもいいや。お願いだからさ。ちょっと昔話するみたいな感じで…」
「あのなぁ。大体お前。俺の知らないうちに文字の読み書きができるようになりやがって。どうすればそうなるんだ。大人になっても読み書きの出来ない人がわんさかいるこのご時世にそんなことができるなんて、お前は化け物か神か何かだろ?」
「そう言われても…。とにかくお願い!朝ごはんに新しい料理作るから!」
「新しい料理?新しい…うーん…仕方ねえな」
困ったら新しい料理といって、新たな卵料理を作ればいい。
父さんは俺の作る料理に目がないのだ。
まあ、俺の作る料理イコール前世の記憶にある料理ってことだが。
「特別だぞ」
そう言って父さんは昔の話をし始めた。
「世界には神様がいた。その神は正義の象徴だった。優しく、強く、美しく…」
「ちょま、神様って?何?空想上の何かってこと?」
「いいや。皆に想像上の人物でも、空想上の神でも、ただ人々に讃えられているだけの石像でもない。
実在した人間だ」
「人間?何それ?結局神なの人間なの?」
「ああ人間だ。ただ、魔法というこれまでの世界にはない力をもって生まれた、奇跡の子だ」
その後も話は続いた。
要約しよう。
神というのは、世界初の魔法使い。
人の怪我も、病気も治すことができる。
雨を降らせることもできる。
手から火の玉を出すこともできる。
遠く離れた的に、それをぶつけることもできる。
その魔法の可能性は、まさに無限だった。
やろうと思えば国を滅ぼすことも、国を潤すこともできた。
人を救うこともできる。人を殺めることもできる。
いつしかその魔法の力を持った人間を人は神と呼び始めた。
神の使い、いや、神様そのものなのではないか?
そんな話が世界中で飛び交った。
だが、そんな素晴らしい力があると知った国々は、その力を我が物にしようと、神を奪い合った。
戦争という手段で。
戦争は何年も何年も続いた。
これまでにないほどの大きな規模の戦争だった。
強い国は強い国どうしで同盟を結び、小国を少しづつ潰していった。
他の強い国とも戦い、挙げ句の果てには同盟国どうしでも戦いをし始めた。
全ての神の恩恵をわが国だけのものに。
どの国もその言葉を掲げて戦った。
結局、4つの大国だけが残った。
圧倒的軍事力で他の国の追随を許さなかった国。
どの国よりも最も早く行動し始め、最も急成長をした国。
周囲の国をひたすら取り込んでいき、最終的に最も大きくなった国。
どの国とも戦わず、完全に平和主義を貫き続け、ある程度の力を保ったまま、戦争とは全く無関係で生き残った国。
その後も戦いは続くかと思われたが、ある事件で戦争は終わった。
神が病気で亡くなってしまったのだ。
いくら神と呼ばれていたとはいえ、所詮は人間。
病気には勝てやしなかったのだ。
神は死ぬ直前に、自身の力を15に分けた。
自身の魔力、そして七つの神の力と、七つの大罪。
まず、自身の膨大な魔力を世界中に分散させた。
そして、自身の開発した15の魔法を精霊に宿し、それぞれの場所に分散させた。
無限に転生をすることのできる魔法を宿した精霊。
前世の力をそのまま受け継ぐ魔法を宿した精霊。
超大幅に自身の筋力や体力を増幅させる魔法を宿した精霊。
神の知識を全てを詰め込んだ精霊。
神の人徳やカリスマ性を詰め込んだ精霊。
人々の生死を司る魔法を宿した精霊。
時間と次元、そして記憶を司る魔法を宿した精霊。
そして、七つの大罪それぞれを司る魔法を封じ込めた精霊。
その中でも、七つの大罪系の精霊は、世界各地で厳重に封印した。
と、言ったような話だ。
「じゃあ神様が死んでから、魔法はどうなったの?」
「ああ。15に分けたうちの、神様自身の魔力が、徐々に他の人間に浸透していって、他の人も、神様レベルにはいかないにせよ、ある程度の魔法が使えるようになっていったらしい。個人差はあるそうだが」
まさか世界の歴史が、ここまでファンタジー戦記のような内容で出てくるとは。魔法の誕生にもきになるものはあるが、何より、魔法が生まれる前の世界のことについてもとても気になるものだ。
「じゃあ、そのあとは、他の人たちみんなが魔法使えるようになって、戦いは無くなったとか?」
「いや、それがな。その後50年近くの話が、どの本にも残っていないらしいんだ。もちろん当時のことを知る人なんて今は生きていないし、そのことを調べようという人たちも大勢いるが、何一つ手がかりが無いらしいんだ。まさに、無の50年。何があったのか?あるいは何もなかったのか?それは誰にもわからないって話だ」
「なんかミステリアスだ」
「そうだろう?って言ってもこの話自体、俺が学校に通っていた時に図書室で読んだ本の内容だから、どこまで本当のことなのかは不明だけどな」
そう言って父さんは頭をかいた。
「じゃあ魔力以外の14の力は?」
「よく分からない。ただ、一説では、精霊の力になったがどうとか…」
「精霊の力?」
「そうか。知らないのか。精霊の力っていうのはだな。まあ文字どうり、精霊の持っている力のことだ。精霊っていうのは、過去に死んでしまった人々の魂みたいなもんで、命が生まれた時に、その命と一心同体でついてくるものだ。まあ実際、話ができるわけでも、形として残るものでもないんだがな」
「じゃあ、俺にもその精霊ってのがいるの?」
「ああ。俺にもお前にもいるぞ。それで、12歳になったら、精霊の力を、教会に行って開放してもらうんだ」
「精霊の力っていうのはどういうものなの?」
「まあなんだ。皮膚が硬くなるとか、魔力が上がるとか、筋力とか体力が上がるとか、眠くなりにくくなるとか。いろいろある。当たり外れとかもあるし、使いようによっては、とてつもない力になったりもする」
「へえ」
言ってみればあれか。
某有名マンガで言うところの、食べたら不思議な力を手にできる果実みたいなもんか。
カナヅチにはならなそうだけど。
「まあとにかく、残りの14の力についてはよく分からない。まあなんであれ、正直俺たちにはあまり関係のない話だ。それよりも明日の朝飯頼んだぞ」
父さんからしてみれば、見えない14の力より、目先にある朝食のメニューの方が大事なようだ。
まあいい。面白いことを聞くことができた。
この話で卵料理一つ分の価値があると考えよう。
俺はそう思いながらも、何か心の奥で引っかかるものがあったことに気がつかなかった。
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