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私の想い
「…」
『中村さん、どうしました?』
170cmはあるだろう男の人が、143cmしかない私に合わせて屈んでくる。
そのお陰で、私はあなたの顔をゆっくりと見る事が出来るのである。
「…あっ、大丈夫です…」
途中ではっとして、大丈夫ではないのに大丈夫と言う私に、あなたは笑顔で話しかけてくる。
『次は、これをお願いしても良いですか?』
今は、仕事の打ち合わせをしていた最中なのだ。
「はい」
『じゃ、お願いします』
そう言って、礼儀正しく頭を下げて去って行く背中を見送った私は、ため息を吐いた。
「はぁ…」
私、中村 真莉は大手のドラッグストアで働く22歳である。
今話していた人は、横村 拓真さん。
24歳で、このお店の副店長である。
まだ出会って、5ヶ月しか経っていないのに…横村さんの事ばかり考えてしまう。
私には、戻りたい場所と大切な人がいるはずなのに…。