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第七話  適応と願望、そして別れ

「どうしたんだティア?何かおかしなところでもあったか?」

呆然としているティアに問いかけてみた。


「え...あれ?...もう終わり?ですか??」


「見ればわかるだろう。そう悪い戦いではなかったと思うんだが...」


「...黒崎さんは何かしていたんですか?」


「何かって?」


「武道を嗜んでいたりとか。」


「いや、そういった事はしていない。部活にも入ったことはないし。」


「その割には...何というか、慣れてません?」


「武道は経験したことはないが、喧嘩にはそこそこ慣れてるな。この目付きのせいで昔から絡まれることは多かったし。」


ーーーあまり良い思い出ではないが


俺のそんな心の声が聞こえたのだろうか、ティアは苦笑いを浮かべている。

幼女に苦笑いって似合わねぇな、なんて思った。


「それでも、流石に命を奪うとなると躊躇するものじゃないんですか?」


「ふむ...そうかもな。というか俺だって別に何も感じてない訳じゃないぞ。」


「え、そうなんですか?」


ティアは不思議そうな顔をする。


ーーー俺は殺しが平気そうな顔をしているのかね

確かに「人を5人ほど殺してそうな目」とはよく言われるが...


「ただ、覚悟をしただけだ。このくそったれなダンジョンで生きる覚悟を。」


「それってそう簡単に覚悟できるものなんですかね?」


「さぁな。ただ...人間ってのは環境に適応する生物らしいからな。ただ俺が、このダンジョンっていう環境に適応できただけだろ。」


「そういう...ものですか。」


「そういうもんだ。」


俺だってよくわからん。

ただ今まで通りじゃいられないと思っただけだ。




「んで、チュートリアルはこれで終わりなのか?」


「あ、待ってください。魔石を拾わないと。」


「魔石?...あぁ、そんなことも言ってたな。」


俺は地面を見る。

いつの間にかゴブリンの屍は消えていた。

そこには指の爪程の赤い石が落ちていた。


「これが魔石か?小さいな。」


「最下級の魔石ですから。」


強い魔物ほど大きな魔石を持っているということか。

そして大きな魔石ほど変換ポイントも高くなる...と。


「それでは、その魔石をポイントにしましょう。」


「あぁ、了解だ。」


ステータスを開いて魔石を入れる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:黒崎直人 Lv2

性別:男    pt10


固有スキル

・真理眼

・簒奪者


特殊スキル

・威圧Lv8

・絶倫Lv1


武術スキル

・体術Lv5

・格闘術Lv5


称号

・恐怖の眼光

・転移者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


と表示された。

どうやらゴブリンの魔石は一個10ポイントのようだ。


『ショップ』と唱えて変換リストを見てみる。

食料の欄にオニギリがあった。

一個10ポイントだ。

ーーーゴブリン一体殺してオニギリ一個か

これが安いのかどうかはまだわからないが、ポイントは取れるときに取っておいた方が良さそうだな。



「以上でチュートリアルは終わりとなります。何か質問などはありますか?」


ティアが少し寂しそうな顔で聞いてきた。


「上の階層に行った場合、下には戻ってこれるのか?」


「はい、一度行った階層へは、各休憩ポイントにある転移石より転移することが可能です。」


「わかった。...他には特にないな。」


「そう...ですか。それでは、これでお別れですね...。」


ティアは目の端に涙を浮かべている。


俺は小さく溜め息を吐いた。


「ティア...また会えるか?」


「...え?」


「俺はまたティアに会えるのか?」


「...わかりません。このチュートリアルを終えたら、私がどうなるのかは知らされていないのです。」


「そうか...んじゃ...」


俺は大きく息を吸ってーーー


「自称神ぃぃぃ!!!出てこいやぁぁぁ!!!」


           ーーーと叫んだ



「呼んだかい?」


「普通に出てくんのかよ...」


「呼んだのは君じゃないか」


自称神は微笑みを浮かべている。


ティアは固まっている。


いきなり俺が大声を上げたこと、自称神が現れたことに驚いているようだ。


「おい自称神。頼みがある。」


「それが人にものを頼む態度なのかい?」


「人じゃねぇだろ。ていうかアンタだって俺達に尻拭い頼んでんじゃねぇか。ちょっとした願いくらい聞いてくれよ。神様なんだろ。」


「それもそうだ。一応聞いておくけど、どんなお願いなのかな?」


「ティアを俺にくれ。」


ティアがこれでもかと目を見開いている。


「悪いけどそれはできない。」


「だろうな...。んじゃ偶にで良い。ティアに合わせてくれ。」


「...君、ロリコンだったの?」


神が若干ひいたような目で見てくる。

ーーーうぜぇ


「阿呆なこと言ってんじゃねぇよ。わかってんだろ。」


「...はいはいわかったよ。まったく君ってばつれないなぁ。」


「んで、俺の要望は?」


「そうだね、それくらいなら構わないよ。ただし、話す内容は制限させてもらうよ。それと、君がこの娘に会えるのは階層をクリアしたときだ。」


「わかった。それで良い。」


「こんなことを言ってきたのは君だけだよ。不思議な人だね。目付きも怖いし。」


ーーー目付きは関係ないだろ


「まぁとにかく俺の要望は通ったってことで。そこは感謝するぜ。」


「へぇ...意外だね。君も人に感謝することがあるのかい。」


「俺は基本的に善良な人間だ。悪人面の悪人なんて、救いようがないだろ。」


「悪人面の善人には救いようがあるのかな?」


「救ってくれる奴はいるさ。な、ティア。」


「え、あ、え?」


ティアは未だに混乱しているようだ。


「えっと...よくわからないけど、黒崎さんのこと、好きですよ!!」


「...へぇ、チュートリアル用に作っただけの妖精にここまで言わせるんだ。...やるじゃん。」


何が"やる"なのかわからんが、目を付けるのは勘弁してほしい。




「それじゃそろそろお別れだね。頑張ってね黒崎君。」


微笑みを浮かべたまま、自称神は消えていった。


「チュートリアル報酬は変換ポイント1000です。確認しておいて下さい。...それと、また会えることになって嬉しいです。ずっと待ってますから...どうかご無事で。」


満面の笑みでティアも消えていった。




「さて、俺も行くか。」


そう言って歩き出そうとした時、何かが体の中に入ってきたような気がした。

ふとステータスを確認し、新たに取得した称号を目にして、俺は小さく笑みを浮かべた。






ーーー称号【妖精の友】

   獲得経験値に補正がかかる。

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