第六話 説明と初戦
俺のスキルの効果をティアに伝えると、ティアも目を丸くして驚いていた。
曰く、「あらゆるスキルの中でも、反則に近いものを手に入れましたね」だそうだ。自分でもそう思う。
ティアによると、スキルの取得方法は二種類あるそうだ。
一つ目は自力で取得する方法。たとえば格闘術ならば、何度か素手で魔物と戦っていたら手に入るらしい。
二つ目はスキルオーブというアイテムを使う方法。これはダンジョン内に出現する宝箱に稀に入っていることがあるらしい。オーブを使うと特定のスキルを手に入れられるという物だ。
既に持っているスキルの場合、そのスキルのレベルが1上がるらしい。そういった効果を持つため、スキルオーブは非常に珍しい物なのだとか。
俺はそういったのを無視してスキルを手に入れることができる。
ヲタクの田村が言っていたチートというのは、こういうのを言うのだろうか。そんなことを考えた。
「黒崎さん、次の説明に入っても良いですか?」
「あぁ、すまなかった。頼むよ。」
「はい、では次に一般的なスキルの説明をさせていただきます。」
「通常のスキルには三種類あります。まずは特殊スキル。これは黒崎さんの持っている威圧や、鑑定系のスキルなどがあります。」
「次に武術スキル。剣術や槍術、弓術など、物理的な攻撃手段のスキルが主になります。」
「三つ目が魔術スキル。これはまだ黒崎さんは持っていませんね。魔術スキルには、魔力操作や属性魔術など、魔術に関するスキルが入ります。」
「なるほどな。魔術スキルは普通はどうやって手に入るんだ?」
「基本的には、先天的に属性魔術のスキルを持っている場合がほとんどです。スキルオーブによって手に入れる事もできますが...」
「つまり、先天的に属性魔術のスキルを持っていなければ、魔術を使うことができないってこともある訳か。」
「はい、その通りです。逆に魔術スキルを持っている人は、武術スキルが育ちにくかったりするので、一概にどちらが良いとも言えませんが。」
「称号ってのは?」
「称号は特定の条件を達成した時に取得できるものです。取得するのは大変ですが、称号には成長率の向上など、強力な効果を持つものが多いため、持っていると非常に便利です。」
「よくわかったよ。ステータスに関しては以上か?」
「そうですね。ステータスに関しての説明は以上になります。何か質問はありますか?」
「真理眼なんかの鑑定系スキルを使った時ってのは、相手にわかるものなのか?」
「相手が高レベルの感知系スキルを持っていたら、気付かれるかもしれませんが、真理眼は鑑定系の中でも最上位ですから、滅多なことでは気付かれる心配はいりませんよ。」
「そっか。そりゃ良かった。んじゃステータスに関しては終わりってことで、次は何をするんだ?」
「次はこのダンジョンについて説明致します。」
「ダンジョンとは何か、黒崎さんはわかりますか?」
「地球にあったRPGでは聞いたことあるけど。何かって言われると何とも言えないな。」
「ダンジョンとは、負の感情が集まってできた一つの世界なんです。」
「世界?ここが?」
何とも言えず周りを見渡す
「はい、あらゆる世界で発生する負の感情を、全て完璧に解消させることは神様でも不可能なのです。そこで、解消されなかった負の感情を別空間に隔離しておくのですよ。」
「まさか、そこに負の感情が集まってできたのがここだってのか?」
「はい、その通りです。負の感情が集まり、別種族に仇なす魔物やトラップなどが生まれるのです。そしてダンジョン自体が別世界から人間などを召喚し、その魂を喰らうのですよ。」
「負の感情が集まって世界への恨みに変わるってことか?あの自称...いや、実際には自称じゃないのか。...まぁ良いや。自称神は俺達にその尻拭いをさせようってのか?」
「言ってしまえばそういうことかと...」
「あの腐れ自称神め。次に会ったらぶん殴ってやる。」
そう言って俺は黒い笑みを浮かべる。
ティアが泣きそうな顔で後退った。
「ゴホッゴホッ、それで、ダンジョンを攻略するってのは、具体的に何をすれば良いんだ?」
「は、はい。ダンジョンには各階層に階層主がいます。その階層主を倒したら次の階層に行けるんです。全ての階層主を倒したら攻略達成となります。」
「ちょっと待て。次の階層?もしかしてダンジョンには階層が複数存在するのか!?」
「はい、そうです。ダンジョンには10の階層が存在します。」
「マジかよ...一つの階層はどれくらい広いんだ?」
「上に行けば行くほど狭くなりますので、1階層などはかなりの広さになります。全ての部屋を回るのはほぼ不可能ですね。」
「そんなに広いのかよ...地図はないのか?」
「もちろんあります!『マップ』と唱えていただければ、自分が通った事のある道を見ることができるんです。」
「それじゃ迷う心配はないのか。罠とかもあるんだよな?」
「はい。1階層ではまだ罠の心配はいりませんが、上に行くと危険な罠も増えてきますので注意して下さい。」
「了解した。」
「質問がないようでしたら、ダンジョンの説明は以上とさせていただきますが。」
「ダンジョン内で休憩や就寝はできるのか?」
「あ、申し訳ありません!その説明がまだでしたね。ダンジョン内にはいくつか魔物の入れない部屋があるのです。そこでは安心して過ごすことができます。少なくとも魔物相手には...」
「人間相手にはそうもいかないという事か...。まぁ色々と覚悟はしておくか。」
「更に、休憩部屋に入る際には、特殊な魔術によって自動的によって体の汚れなどが洗浄されるため、定期的に休憩部屋に出入りすれば、清潔面を気にする必要はありません。」
「ほう、それは助かるな。」
「質問は以上で宜しいですか?」
「あぁ大丈夫だ。次を頼む。」
いい加減チュートリアルも疲れてきたな...
もう少しで終わりだろうか
「最後に魔物についてです。ダンジョンには魔物がいるとお話しましたが、魔物にも様々な種類がいます。」
「ゴブリンやオーガなどの人型もいれば、虫系の魔物や死霊系の魔物なども存在します。各系統によって弱点なども存在するため、相手をよく知る事が重要です。」
「黒崎さんの場合は、高性能な真理眼があるので大丈夫だとは思いますが。」
と言ってティアは笑った。
「魔物を倒したら、経験値以外に何か手に入るのか?」
「はい、魔物を倒すと、魔石という物が落とされます。」
「この魔石をステータス画面に入れると、変換ポイントが手に入るんです。」
「変換ポイント?何だそれ?」
「変換ポイントとは、それを消費して食料や衣服、武器や防具など、様々な物に変換できるポイントのことです。『ショップ』と唱えると、変換画面に移ります。」
「なるほど。そんな便利なものがあるのか。」
食料などに関しては疑問に思っていたから、これは非常に助かるな。
「そういった道具などの持ち運びはどうするんだ?バッグなんかも無い訳だが。」
「『ボックス』と唱えると、異空間に物を入れる事ができます。自分のレベル1につき、一種類の物を入れることができます。」
「ほう、意外と便利な機能が多いんだな。」
「次でチュートリアルも最後になりますが、何か質問はありますか?」
「唱えて効果のあるのは、『ステータス』『マップ』『ショップ』『ボックス』の四つだけか?」
「はい、その四つだけです。」
「わかった。質問は以上だ。」
「はい、それではチュートリアルの最後は、実際に魔物と戦っていただきます。」
「何となく予想はできていたが、これは全員がクリアできるのか?できない奴も多そうだが。」
「そういった方はここでチュートリアル終了となります。チュートリアル完遂の報酬はなしになりますが。」
「そんなものがあるのか。どっちにしろ戦うけどな。始めてくれ。」
「武器は宜しいのですか?」
「俺がこの場で使えるのは格闘術だ。武器はいらない。」
「わかりました。それでは始めます。相手はゴブリン一体です。」
目の前にゴブリンが現れた。
身長はティアとあまり変わらない。
俺の腰くらいだ。
汚い布を纏っていて、緑色の肌をしている。
チュートリアルだからだろうか、武器は持っていないようだ。
ゴブリンがこちらに向かって走ってきた。
子供のような体躯にしては速く、大人なみの速さで迫りくる。
やはり魔物ということなのだろう。
俺は真理眼を発動させた。
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種族:ゴブリン Lv1
性別:雄
特殊スキル
・絶倫Lv1
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なるほど、雑魚だ。うん、雑魚だ。
所詮はゴブリンか。まともなスキルを持っていない。
唯一のスキルが絶倫。これは効果を見るまでもない。
やはりゴブリンやオークはそういう種族なのだろうか。
戦闘中にまで馬鹿なことを考えてしまった。
ゴブリンはすぐそこまで来ている。
俺は素早く前に出た。
急に出たからだろう、ゴブリンは驚いて腕をこちらに伸ばしてきた。
俺はその腕の横を通るようにして、左斜めに移動し、ゴブリンの腿にローキックをした。
レベル1のゴブリンは防御力も低いらしい。そのローキックでゴブリンの脚を破壊した。
蹲ったゴブリンを地面に叩きつけるようにして足を踏み降ろした。
ゴブリンの頭が半分ほど潰れ、ゴブリンは息絶えた。
その瞬間、何かが俺の中に入ってくる感じがした。
ステータスをみると、特殊スキルの絶倫があった。
どうやら今のが簒奪者の効果のようだ。
レベルも2に上がっていた。
初戦としてはなかなかだろう。
ティアはこちらを見て唖然としている。
いったいどうしたのだろうか?