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第三話  恐怖と嫉妬

「アンタ相変わらず目付き悪いわね。何か悪い事とかしてないでしょうね。」などと失礼極まりない事を宣う目の前のお母様と、「流石にこの年で犯罪者にはならんだろう。」などとほざく横の父を無視して朝食を取る。



この年でって何だよ...これから先にもそんな予定はねぇよ

と心の中で吐き捨てながら朝食を終えた俺は、手早く登校準備をして、家を出た。





教室の扉を開けると、既に登校していた生徒達がこちらを見る。

まるで鬼を見たかのように一瞬ビクリと体を震わせる者がほとんどだった。

ーーーお前らはもう見慣れてるだろうが

とは思うものの、これでも多少はマシな方だろうと思い直した。

なにせ初めて俺の顔を見た者は、一瞬と言わず数秒間は硬直するのだから。後退りしないだけこいつらも慣れてきてるのかもしれない。




それでもやはり他人から怯えられるのは気持ちの良いものではなく。

小さく溜め息を吐いた俺の元に、近寄ってくる影があった。


「お、おはよう黒崎君!」と一生懸命に挨拶をしてくる。



ーーーそんなに怖いなら来なければ良いのに

と思いつつも、適当に挨拶を返す。俺は挨拶も返せないコミュ障ではないのだ。ここ大事だから。超大事だから。



また馬鹿な事を考えてしまった。目の前の少女が若干俯きながらこちらをチラチラと盗み見ている。

なにそれ、怖い物見たさ的なアレなのか。毎度よくわからない人だ。




この少女ーー篠宮唯は美少女である。

整った顔にすらりとした均整の取れた体。腰まで伸ばされた濡羽色の髪は、光を反射してその美しさをこれでもかと表現している。

貞淑、清楚、大和撫子...そんな単語を思い浮かばせる彼女の姿は、見る者に育ちの良さを感じさせる。

また、性格的にも優しく誰にでも平等な彼女は、男女問わず人気が高い。



そんな篠宮唯だが、俺の前に立つと、たちまち今のように俯きがちになる。そんなに怖いのだろうか。ならば何故近付いてくるのかと思うが、それはきっと彼女の優しさによるのだろう。

誰にでも優しい彼女は、目付きの悪い俺に対しても優しくしてくれる。

毎朝の挨拶などがそれの最たるものだ。



だが俺としてもクラスメイトに迷惑をかけるつもりもない。

だから大抵、適当に挨拶を返した後は、俺はそのまま席に向かう。

その際、彼女が何か言いかけようとする事が度々あるのだが、なかなか言い出さない彼女の前にずっといては、俺が彼女を苛めていると受け取られかねない。

だから俺はなるべく早く席に向かおうとするのだ。



しかし、今回はそれがうまくいかなかった。


「おい黒崎!篠宮さんが挨拶してんだから、ちゃんと返せよな!!」


そう言って近付いてくる者がいたからだ。



内心ウンザリしつつも、俺は溜め息を吐きながらそいつの方を向いた。

俺と目が合うと体を震わせて一歩下がるが、その男は何とか前に出て良くわからないことをほざいてくる。


「篠宮さんが何でお、お前に挨拶してんのかわかんねぇけどよ!あ、挨拶くらいきちんと返せっつーの!」


などと言ってくるそいつに対し、篠宮が慌てて仲裁に入る。


「さ、佐久間君。私が勝手に挨拶しただけだし、黒崎君だってちゃんと挨拶してくれたから。そんなに怒らなくて大丈夫だよ。」



「だ、だけどよぉ...」

と食い下がるこの男の名前は佐久間圭一という。

容姿は普通。運動も普通で、勉強は普通以外という彼だが、どうやら俗に言う不良というものらしい。よく教師と言い争っているのを見かける。

さらにこの男、どうやら篠宮に惚れているようなのだ。

だから許せないのだろう。篠宮が俺に近付くことが。俺と話をすることが。



俺からすれば良い迷惑だが、そう言ったところで篠宮を傷付けるだけだろう。だからここは手っ取り早く終わらせるべきだ。そう考えた俺は篠宮に向き直り、「さっきはすまなかった篠宮。ちょっと寝不足だったんだ。許してくれ。」

と頭を下げた。



それを見て驚く佐久間と篠宮だが、篠宮がいち早く正気に戻り、慌てて「く、黒崎君!私は別に怒ったりしてないから。だから顔上げて!」と言ってくる。

その言葉を聞いて顔を上げた俺は、「本当にすまなかった。以後気を付ける。」

とだけ言って席に向かった。

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