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第十話  帝王と大狼、そして圧勝

ーーー俺が四度目の殺人を経験してから五日。

俺は第二階層の階層主を見付けた。



三人を殺した事に後悔はない。

それでも、人殺しなんて、やはり気分の良いものではなかった。

出来るだけ早くこの階層から離れよう。

そう考えた。



翌日から強行軍と普通の探索を繰り返し、ついにその場所を見付けたのだ。

安全地帯と同じように、そこには木が生えておらず、草地が円形に広がっていた。

その真ん中に陣取るのは、一体の黒い大狼だ。

顔を俯かせて、眠るように伏せている。

伏せている状態でも、俺と同じくらいの高さに顔がある。

あれが立ち上がったら、確実に3mは超えるだろう。



準備を整え、心臓を落ち着かせる。

ゴブリンロードとの死闘で感じた、死の予感が頭を過る。

それを振り払うように頭を横に振り、パチンと両手で頬を叩く。

ーーー準備はできた、後は戦うだけだ。

俺は大きく一歩を踏み出した。






主の領域に入って少し歩くと、大狼は耳をピクリと動かし、顔を上げてこちらを見据えた。

そしてゆっくりと優雅に立ち上がり、体をブルブルと震わせる。

そうしてもう一度こちらを見たその目は、先程までの眠たそうなものではなく、獲物を狩る猛獣のそれだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

種族:カイザーウルフ  Lv25

性別:雄


固有スキル

・帝王の咆哮


特殊スキル

・咆哮Lv5

・聴覚強化Lv4

・嗅覚強化Lv5


武術スキル

・体術Lv5


称号

・第二階層の主

・大狼皇帝

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


大狼が大きく息を吸い、遠吠えをした。

途端に森から九体の狼が飛び出してくる。

狼達は俺を囲むように陣取っている。

俺は剣を抜き、いつも大狼に向けて構えた。

大狼はこちらを威嚇するように鋭く吠えた。

それが戦闘開始の合図となった。




左右から狼が迫ってくる。

止まったら終わりだと判断し、俺は全力で右へと飛び出した。

大口を開けている狼を、上段から斬り降ろす。

その斜め後ろにいた一体を、ルビィが熱光線で焼き殺した。

俺は止まらず、そのまま走り抜ける。

複数を相手にして、囲まれたままでは不利だと判断した。



次は三体がこちらに向かってくる。

二体が左右から迫り、一体は正面から来ている。

俺は敢えて動かず、狼がギリギリまで接近した時を見計らって、思いきり上に飛び上がった。

風魔術で風を操り、その動きに補正をかける。

狼達は急に目標を失い、ぶつかって潰れる。

上空からルビィが全力で熱光線を放出し、三体纏めて焼き払った。



地に足を付けた瞬間、警鐘スキルが頭の中で鳴り響いた。

俺は周りを見ることもせず、全力で前に飛んだ。

俺のすぐ後ろで、大狼の爪が振るわれていた。

どうやらこの階層主は、ゴブリンロードのように配下がやられるまで待つのではなく、配下を使って隙を作り、そこを攻撃するタイプのようだ。

しかし配下の狼も残り四体だ。取る手段は限られてくる。



残りの四体で俺を取り囲もうとしてくる。

そう動くのはわかっていた。

俺はルビィを掴み、一体の狼へと投げた。

飛んでくる小動物?に困惑しながらも、警戒している。

ルビィはポトッと着地し、キョロキョロと見回している。

その姿に警戒を解いたのか、この距離なら先に殺れると判断したのか、狼は口を開いてルビィに飛びかかった。



しかし、狼は空中で魔力の障壁に遮られ、ルビィに近付く事はできなかった。

障壁にぶつかって落下した狼に、ルビィは余裕を持って熱光線を放射した。

そんな戦いに気を取られていたマヌケな一体に近寄り、後ろから首を叩き斬った。



これで残りは二体だ。

さてどうするのかな、と考えていると、大狼は俺を無視してルビィの方へと駆け寄った。

ーーーあの野郎、ルビィを狙ってやがる!!

急いで駆け付けようとするが、二体の狼が立ち塞がる。

一体を闇魔術で妨害し、一体を素早く斬り殺した。

残りの一体も斬り捨てる。



しかし、その二体を始末した時には、大狼はルビィの目の前まで迫っていた。

大狼が腕を振り上げ、その鋭い爪で斬り裂こうとする。

俺は後ろから大狼を睨み付け、全力で殺気を送った。

更に、その殺気を乗せて咆哮スキルを使った。

大狼は後ろから感じる濃密な殺気と鋭い叫びに圧迫され、手元がずれてしまった。

ルビィは即座に熱光線を放射した。

超至近距離で熱光線を食らった大狼は、思わず後退ってしまう。

後ろから迫る気配に気付いた時には、既に遅かった。



俺は高く飛び上がり、大狼の首へと剣を突き立てた。

首を振って俺を落とそうとするが、体術スキルにより体幹やバランス能力にかなりの補正が効いている俺は、大狼の背に立ち上がり、踵を振り上げ、突き立てられた剣の柄に振り下ろした。

奥まで剣を突き入れられ、暫く藻掻いていた大狼は、ついにその動きを止め、やがて消滅した。






先程の戦いにおいて、いくつか気になったことがあった。

まず、何故大狼が固有スキルを使わなかったのか、だ。

これについては想定ではあるが、もしかしたら既に固有スキルは使われていたのかもしれない。

戦闘開始の合図となったあの咆哮。あれはもしかすると、帝王の咆哮だったのではないだろうか。

普通ならばあれで行動が阻害されるはずだが、俺には称号スキル【恐怖の眼光】があるため、恐慌状態に陥らなかったのかもしれない。


次に気になったのは、大狼の動きに割りと簡単に対応できた事だ。

これはおそらく、山田の固有スキルだった【観察眼】が関係しているのだろう。

他の狼を見ていても、今までよりも明らかに遅く見えていた。



幾つか危ない場面はあったものの、結果的には余裕の勝利だったなと思った。

ともかく、これで第二階層は踏破した訳だ。

ーーー次はどんな所だろうか。

俺はまだ見ぬ三回層へと思いを馳せた。

ブクマが500件を超えておりました。

皆さんありがとう、超ありがとうございます。

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