表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/30

第五話  情報交換と役立たず

「さて、情報交換といきたいところだが、まずはこちらの事から話そう。何か聞きたい事はあるか?」


「...そうだな。まず、黒崎はソロで行動しているのか?」


「いや、二人...正確には一人と一匹で行動している。コイツが俺の相棒だ。」


俺の首の後ろに隠れているルビィを掴んで机の上に乗せた。

ルビィは初めて見る奴等を警戒しているようだ。


「こ、これは...何だ?リス?」


「いや、カーバンクルという魔物だ。」


「魔物!?魔物がどうしてここに!?」


田中は驚いて腰を浮かせる。

後ろの三人も同様だ。


「コイツは魔物だが、危険じゃない。俺の従魔だからな。」


「じゅうま?何だそれは?」


俺は従魔の説明をした。


「なるほど、従魔か...。そんなものがあったのか。」


「それで、他に聞きたい事は?」


「...黒崎はいつ頃この階層に着いたんだ?」


「お前達が来る二週間前ほどだ。」


「は!?本当なのか!?」


「嘘をついてどうするんだよ。」


「いや、まぁそうなんだが...早すぎるだろ。」


俺は肩を竦めるだけで、何も答えなかった。


「...まぁ良い。それじゃ次の質問だが...」


「ねぇねぇ黒崎!アンタいま何レベなの?」


田中の言葉を遮って、いきなり美浜が乗り出してきた。


「おい、美浜...。」


田中が不愉快そうな顔をしている。


「ねぇってば、教えてよ。黒さ「うるせぇよ」き...。」


軽く睨みをきかせると、美浜はビクッとして固まった。


「俺はいま田中と話しているんだ。今まで黙ってた奴がいきなりしゃしゃり出てくるんじゃねぇよ。」


美浜は真っ青な顔をして黙り込んだ。


「す、すまない黒崎。許してくれ。」


「いや、別に田中には言ってない。...んで、次は?」


「あ、あぁ...黒崎は、俺達以外の誰かには会ったか?」


「...あぁ。一階層で、校倉に会った。」


「校倉か...。一緒には行動しなかったのか?」


ーーーやはりきたか...。


「校倉は...。」


「どうした黒崎?まさか...魔物に?」


「...いや、違う。魔物には殺られていない。」


「魔物には?...どういう事だ?」


「校倉は...俺が殺した。」


部屋内に沈黙が訪れる。

俺の言った事が理解できなかったのか、四人はキョトンとした顔をしている。


「え?あ、えっと、すまん、もう一度言ってくれ。」


「校倉は、校倉君人は、俺が殺したと言った。」


四人は目を見開いて俺を見る。

その瞳に浮かぶのは...恐怖だ。



山田は椅子から立ち上がるが、後退ろうとして躓き、転けてしまう。

佐藤は立つことすらできず、涙を浮かべて震えている。

美浜は悲鳴を上げて、腰を抜かしている。



「どうして...何故校倉を殺したんだ?」


田中が口を震わせながら聞いてきた。


「校倉が俺を殺そうとしたからだ。」


「校倉が?黒崎を殺そうとしただって!?」


俺は校倉との間に起こった事を、四人に話した。






田中以外の三人はどうやら俺の話を信じなかったようだが、田中だけは信じてくれた。


「お前も、大変だったんだな。」


「まぁな...。もう、この話は終わりで良いか?」


「あぁ、そうだな。それじゃ次なんだがーーー」



以降田中が俺に質問した内容は、この階層でのことがほとんどだった。戦った魔物や、その対処法を聞かれたくらいだ。


「ーーーということだ。他に質問は?」


「ふむ...いや、俺からは特にないな。お前達は?」


田中が三人に問いかける。

三人も特にないようだった。


「こちらからは以上だな。」


「そうか。それじゃ、次は俺から質問しても良いか?」


「もちろんだ。」


「それじゃ早速なんだが、お前達は4人パーティーってことで良いのか?」


「あぁそうだ。他にはいない。」


「パーティーを組んだ経緯を、軽くで良いから教えてくれないか?」


「ふむ...まず俺が最初に出会ったのは佐藤だった。このダンジョンに転移してから、5日目くらいだったかな。」


「それから更に一週間ほどして、山田と美浜の二人に会ったんだ。二人がちょうどパーティーを組んでいたから、合併したような形だな。」


「どうしてパーティーを組もうと思ったんだ?」


「そりゃ危険だからさ。一人より二人、だ。」


ーーー俺達は、一人で戦えるほど強くないからな。

田中は苦笑気味にそう言った。

その顔が、俺を"特別"と称した時の校倉に重なり、何とも言えない感情が胸を渦巻いた。


「そうか...。次の質問だが、お前達は他の人間には会ったのか?」


「あぁ、俺達は三人と会ったな。長谷川と宮下、それから水無瀬だ。」



三人とも女の名前だった。

長谷川愛子、宮下友理奈、水無瀬雪乃。


長谷川は学級委員だ。三つ編み眼鏡で真面目。学級委員を体現したような女だ。


宮下は長谷川とよく一緒にいた。少し内気だが、素直な人間だったと思う。


水無瀬は...よくわからん。学校ではいつも一人だった。俺と同じぼっちだ。見た目は良い...というよりもかなりの美少女だ。しかし、基本的に態度が冷たく、人と関わらないような奴だった。



「長谷川と宮下はパーティーを組んでた。会った時は、こちらはまだ俺と佐藤の二人だったが。」


「四人で組まないかと一応誘ったんだが...宮下が嫌がってね。」


「そうか。...水無瀬は?」


「水無瀬とは四人で会ったな。アイツはソロだった。」


「パーティーに誘っても、いつもの態度で拒否されたよ。特に戦闘には困っていなかったみたいだし、アイツもそのうち一人でここに来るかもな。」


水無瀬は優秀だ。制服を軽く着崩して、髪も白の強い金髪に染めているため、ギャルっぽく見えるのだが、成績はかなり良い方だったはずだ。

運動もできるし、感覚が鋭く聡い人間だった。

アイツも校倉の言う"特別"に入るだろう。





それ以外には特に聞く事はなかった。

個室もいくつかあるため、四人ともここで寝ることにした。

田中以外は俺を極端に怖がっていたため、俺からできるだけ離れた部屋を取りたがった。






ーーー夜、不思議と目を覚ました俺は、ついでに夜風に当たることにした。

しかし、そこには先客がいた。

ソイツは足音に気付いて振り返る。


「よぉ、黒崎か。」


「あぁ、どうしたんだ田中?眠れないのか?」


「まぁな...何だか嫌な予感がしてな。」


「そうか...。」


二人して囲いに寄り掛かる。


「なぁ、黒崎...」


「どうした?」


「俺達と一緒に...来てくれないか?」


「...すまない、俺はまだ当分、ソロでやるつもりだ。」


「そうか...お前ほどの奴が入ってくれたらと期待したんだが、まぁ仕方ないよな。」


ーーーその言葉に嘘はなく。

やはりコイツは良い奴だなと思った。


「...少し不思議に思ったんだが、何故お前達のパーティーに美浜がいるんだ?」


「俺が会った時には、既に山田とパーティーを組んでいたからな。見捨てる訳にもいかないだろう。それは山田も嫌がったし。」


「山田は美浜に惚れていてな...。余計、見捨てられないんだろう。」


「それでもわかっているはずだ。」


「...お前って鋭いんだな、黒崎。」


田中は苦笑している。



ーーー美浜は佐藤のことを役立たずと言った。

しかし、本当の役立たずは美浜だ。

俺が真理眼で見た、四人のステータスは以下の通りだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:田中奏太   Lv17

性別:男


固有スキル

・直感(感覚が鋭くなる)

・剣の才(剣術の成長に補正)


特殊スキル

・索敵Lv3


武術スキル

・体術Lv3

・剣術Lv4


称号

・転移者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:山田宗一郎   Lv15

性別:男


固有スキル

・精神集中(集中力上昇)

・観察眼(動体視力などが上がる)


特殊スキル

・警鐘Lv3

・視覚強化Lv2


武術スキル

・体術Lv3

・斧術Lv2

・盾術Lv3


称号

・転移者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:佐藤裕也   Lv14

性別:男


固有スキル

・詐欺師(騙す行動に補正)

・魔術の才(魔術の成長に補正)


特殊スキル

・隠密Lv3


武術スキル

・体術Lv2


魔術スキル

・風魔術Lv3

・闇魔術Lv2


称号

・転移者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:美浜莉奈   Lv7

性別:女


固有スキル

・背水の陣(瀕死になるほど身体能力上昇)

・化粧(見た目がちょっと良くなる)


武術スキル

・体術Lv2

・槍術Lv1


称号

・転移者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーあまりにも酷すぎる。

おそらく美浜はまともに戦ったことなどないのだろう。

レベルもスキルも、明らかに劣っている。

固有スキルも、少なくとも当たりとは言えない。

このままでは、コイツ等のパーティーは崩壊する。

田中もそれはわかっているのだろう。

しかし、クラスメイトを見捨てられない。



ーーー田中のそんな姿が、まるで覚悟を決められなかった場合の俺を見せられているようで、少しやるせない気持ちになった。

ブクマが80件を超えました。

皆さん超ありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ