第四話 従魔強化と四人
ルビィという初めての相棒を手に入れてはや一週間。
翌日からは探索というよりも、ルビィのレベル上げを重点的に行った。
第二階層においてLv5というのは、些か心許ない。
俺の従魔となった以上、ルビィも魔物から襲われることになる。
早急に強くなる必要があった。
集中的なレベル上げのお陰で、ルビィもそれなりに強くなってきた。
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名前:ルビィ Lv12
種族:カーバンクル
性別:雌
固有スキル
・熱光線放射
特殊スキル
・警鐘Lv1
・索敵Lv1
・隠密Lv2
・状態異常耐性Lv2
魔術スキル
・回復魔術Lv4
・障壁魔術Lv4
称号
・超希少種
・古代生物
・直人の従魔
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このように、レベルだけではなく新たなスキルまで手に入れている。
どうやら主が持っているスキルは、従魔も覚えやすくなるらしい。
これが恩恵というやつか。
ちなみに俺の方も少し強くなった。
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名前:黒崎直人 Lv23
性別:男 pt2850
固有スキル
・真理眼
・簒奪者
・統治者
・道具効果二倍
・状態異常無効
特殊スキル
・威圧Lv8
・絶倫Lv6
・警鐘Lv2
・索敵Lv4
・隠密Lv5
・咆哮Lv4
・糸生成Lv5
・毒攻撃Lv5
・麻痺攻撃Lv4
・睡眠攻撃Lv4
・聴覚強化Lv5
・嗅覚強化Lv6
武術スキル
・体術Lv7
・剣術Lv5
・槍術Lv4
・棒術Lv4
・格闘術Lv6
・短剣術Lv5
魔術スキル
・時空魔術Lv2
称号
・恐怖の眼光
・転移者
・妖精の友
・同族殺し
・小鬼王殺し
・ルビィの主
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レベルが1上がり、スキルレベルもそれなりに上がっている。
ルビィとの息も合ってきた。
俺達はいま、安全地帯でのんびりと過ごしている。
第二階層の探索を初めてから約三週間。
そろそろ奥に進むか。
それともあと一週間ほどレベル上げに勤しむか。
悩ましいところだ...。
俺がこうして悩んでいる間も、ルビィは無関心な様子でピーナッツを齧っている。
軽く溜め息を吐き、外の空気を吸おうと思い立ち、ログハウスの外に出た。
少し散歩をしようかと思い、森の方に歩き出すと、背後からパタパタと走る音が聞こえてきた。
ルビィが甲高い鳴き声を上げて飛び込んでくる。
腕の中で俺を見上げる瞳は、まるで「私を置いていくんじゃない!!」とでも言いたそうだ。
その様子に苦笑して、軽く謝ったあと肩の上に乗せた。
最近ではそこがルビィの定位置となっていた。
のんびりと歩くこと約20分。
出てくる魔物はルビィが熱光線で倒していた。
この熱光線は思っていた以上に強力だった。
消費する魔力量によっては、格上の敵でさえも一撃で消滅させる。
強くしようとすればするほど溜めの時間は長くなるのだが...。
それでも反則的に強力な事には違いがない。
ほんの少しだけ欲しくなったのは秘密だ。
そんな感じで魔物を瞬殺しながら歩いていると、前方に何者かの反応を察知した。
索敵スキルでは黄色の光点が現れている。
初めて見る反応だった。
ーーー何となく覚悟はしてたけど...。やはりか。
隠密スキルを使いながら近付くと、そこにはクラスメイトがいた。
男が三人に女が一人だ。
もちろん話した事はないが、同じクラスの人間として、名前くらいは知っていた。
男1の名前は田中奏太。眼鏡をかけたヒョロッとした男だ。
所謂オタクというヤツだが、若干ナルシストっぽいところを抜きにしても、その堂々とした態度には好感が持てる。そんな奴だ。
田村太一の友達でもある。
男2の名前は山田宗一郎。田中と同様に眼鏡をかけているが、こちらは完璧な肥満体型だ。身長もそれなりに高いから全体的にデカく見える。
田中と田村のオタク友達だ。
男3の友達は佐藤裕也。校倉と同じような普通な奴だが、こちらは田村のオタクグループに属していた。常に周りの反応を伺っている風見鶏。自分の意見というものを持たない。
そして紅一点のこの女。コイツの名前は美浜莉奈。クラスのギャルグループの長で、肌は少しだけ日に焼けており、金色に染めた髪を背中の真ん中あたりまで伸ばしている。
ーーー何だか意外なパーティーだな。オタク三人とギャルか。
何か話しているようだ。
木の影からこっそりと覗き見る。
「ーーーだから、もう回復薬がないんだよ!!これ以上進むのは危険だって!!」
「はぁ?そんなもんアンタ等が弱いのがいけないんじゃん。良いから早く行きなさいよ。」
「えっと...美浜さん。田中君の言う通りじゃないかな?もう遅くなってきたし、今日のところは...」
「アンタは黙ってなさいよ!この役立たず!!」
「り、莉奈ちゃん、何もそんな...」
「なに勝手に人の名前呼んでるわけ!?キモいんだけど!」
「おい、いい加減にしろよ!我儘ばかり言いやがって!!」
「何よ!アンタ等が行けるって言うからここまで来たんでしょ!?」
ーーー何だよこの状況...。
どうやら田中と美浜が言い争っており、山田と佐藤が宥めようとしているようだ。
ちなみに、役立たずと言われたのが佐藤で、名前で呼んで怒られたのが山田だ。
ーーーふむ...止めるか?いや、でもな...。
聞く限りそれなりに困った状況にあるらしい。
さて、どうするか...。
悩んでいると、遠くに魔物の反応を察知した。
猛スピードでこちらに近付いてくる。
どうやらあいつらの怒声に誘き寄せられているようだ。
仕方なく俺は、四人の前に出ていった。
「おい、もうすぐここに魔物が来るぞ。言い争っている場合か?」
四人はこちらを見て固まった。
ーーーもうその反応は良いって...。
いつもの如く驚いたり固まったり泣いたり。
...おい佐藤。男のくせに泣いてんじゃねぇよ。
騒いでいる間にも反応は近付いてくる。
俺は舌打ちをして、四人の前面に躍り出た。
ーーー飛び出してきたのは、フォレストウルフだった。
即座に一体を斬り伏せる。
ルビィの熱光線が二体纏めて焼き払った。
奥から飛び掛かってきた奴を蹴り上げ、その横の狼を斬り払う。
蹴られて弱っている狼を踏み潰して、戦いは終わった。
後ろを見ると、四人は口を開けて唖然としている。
俺は近づいて話しかけた。
「よぉ、久し振りだな。」
やがて最初に正気に戻ったのは、田中奏太だった。
「あ、えっと...黒崎...さん...。」
何故さんを付ける。
「黒崎で良い。...怪我はないか?」
「あ、あぁ...大丈夫だ。助かった。」
「いや、気にするな。」
「お前達はいつからこの階層にいるんだ?」
「...一週間前くらいだな。」
という事は、俺が一階層を踏破した二週間後ってところか。
「ここでは落ち着けないだろう。近くに安全地帯があるんだが、付いてくるか?」
「ほ、本当か!?是非お願いしたい!」
「わかった。案内しよう。」
「ありがとう、助かるよ。」
という訳で戻ってきたんだが。
ーーー田中以外は話せないのかよ。
他の三人は一言も話さなかった。
まぁ別に良いんだがな。
ログハウスの中に入ると、適当に座って貰った。
ーーーさて、お話の時間だ。