第九話 奔走と発見
ーーー走る、奔る、疾走る。
ただただ前だけを見て。
ーーー走る、奔る、疾走る。
邪魔する敵は一撃で打ち倒す。
ーーー走る、奔る、疾走る。
まだ見ぬ果てを目指して。
強行軍を開始して三日。
ついに見付けた。
装飾のついた、大きくて重そうな扉だ。
弱者は近付くことすら能わずとでも言いたそうな威圧感を放っている。
一目見ただけですぐに理解した。
この中に強敵がいる。
間違いない、階層主だ。
ーーーやっとか。これでやっと先に進める。
とりあえず中を見てみるか。
相手を知る必要がある。
そう考えて扉を開ける。
鈍重そうな見た目とは裏腹に、その扉は軽やかに開いてみせた。
中を覗くと.......ゴブリンがいた。
真ん中に2m程の大きなゴブリン。
その両斜め前には二体のホブゴブリン。
そしてホブゴブリンの周りに三体のゴブリンだ。
全員俯いたまま突っ立っていて、僅かな動きも見られない。
計九体の敵がいた。
真ん中のゴブリンが何なのかを知りたいが、残念ながら外からでは真理眼は発動しないようだ。
戦う時に見るしかないか。
昨日見付けた最寄りの休憩部屋へと向かった。
今日は休息に徹し、明日勝負を仕掛けよう。
目を覚ました。
体を起こし、大きく欠伸をする。
軽い飯を食べ、柔軟をする。
武器や道具の確認をする。
準備はできた。
決戦だ。
そう意気込んで、俺は階層主の部屋へと向かった。
いま俺は、荘厳で威圧的な扉を前にしている。
ーーー大丈夫だ。必ず勝てる。
自らを鼓舞するように、心の中で繰り返す。
自信はある。
レベルもスキルレベルも、一階層にしてはかなり高いところまできているはずだ。
多くの経験も積んだ。
あとはいつも通りに戦うだけだ。
俺は目の前の扉を押し開け、どこか冷たい空気が漂う部屋内へと足を進めた。




