第七話 宝物と検証失敗
ーーーあの日から一週間が経過した。
校倉の屍は、魔物と同じように時間経過で消滅した。
校倉がボックスに入れていた物を、その場に残して。
あの日の翌日は探索はしなかった。
ただひたすら寝て過ごした。
次の日から探索を再開した。
それから六日間、休憩部屋周辺を探索し、マップ範囲の拡大と魔物の討伐に努めた。
現在のステータスは以下の通りだ。
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名前:黒崎直人 Lv15
性別:男 pt1700
固有スキル
・真理眼
・簒奪者
・道具効果二倍
・状態異常無効
特殊スキル
・威圧Lv8
・絶倫Lv6
・隠密Lv3
・嗅覚強化Lv4
武術スキル
・体術Lv6
・剣術Lv3
・槍術Lv4
・棒術Lv4
・格闘術Lv5
・短剣術Lv4
称号
・恐怖の眼光
・転移者
・妖精の友
・同族殺し
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もうレベルもスキルレベルも上がりにくくなってきた。
新しい魔物も現れない。
しかし、ホブゴブリンが出現する確率の高い方向は見付けた。
もしかしたらそちらに階層主がいるのかもしれない。
そろそろ次の休憩部屋を見付けたいところだ。
ーーーポイントにも余裕がある。行ってみるか。
という訳で移動を開始した。
...やはりホブゴブリンの出現率が高い。
それに通常のゴブリンやコボルトも、他の場所に比べてレベルが高い。
このまま進んでみよう。
ーーー2時間後
「...お?あれは...。」
角を曲がると、その道の奥に既視感のある物を発見した。
近付いて見てみる。
...やはり宝箱だった。
真理眼で罠の有無を確認、宝箱を開けてみた。
中に入っていたのは、ローポーションとーーー
ーーー「...何だこれ?」
見たことのない水晶玉のような物だ。
中で白い煙が渦巻いている。
真理眼で観るとーーー
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名称:スキルオーブ
種類:宝物
効果:使用者にスキル【索敵】を付与する。
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ーーーまじかよ
これがスキルオーブ...。
確か、ティアはかなり珍しい物だから、そう簡単には手に入らないと言っていたな。
まさかこんなところで手に入るとは...。
しかも未だ所持していないスキルだ。
とにかく使ってみよう。
どう使えば良いかわからなかったが、適当に触っていると、オーブが光の玉になって俺の胸に入ってきた。
ステータスを確認すると、特殊スキルに索敵Lv1が増えている。
試しに使ってみた。
ーーーこれは凄いな。まじで凄いな。とにかく凄い。
思わず興奮してしまう程、このスキルは便利なものだった。
索敵はレーダーのようなものだった。
マップに光点が現れている。
おそらくこの青い点が俺だろう。
とすると、この道の先にある三つの赤い点が魔物だろうか。
魔物だった。
ゴブリン二体とホブゴブリンだ。
片手剣で殲滅した。
索敵スキルは素晴らしいな。
あれからまた2時間が経過しているが、敵を見付けるのがはるかに楽になった。
効率も良い。
早い段階で手に入れられたのは行幸だった。
索敵スキルをフル活用して、某赤い旦那の如くサーチ&デストロって進むこと数刻。
そろそろ今日の探索も終わりにしようかと思うが、生憎休憩部屋は見付かっていない。
さて、こういった状況は初めてだ。
休憩部屋外での休息も経験しておくべきか。
しかしリスクが高過ぎる気もする。
もし二人以上いれば、見張りをしながら交代で休む手もあるのだが...。
結局、今はそれ以上進まないことにした。
もう何時間も進み続けている。
集中力が途切れて痛手を負うなんてのは洒落にならない。
ここで一度休憩することにした。
しかし、就寝はしない。就寝なしの長休憩だ。
暇だから索敵と隠密(校倉が所持していた)のスキルを使って熟練度を上げる。
この二つはこれから先もずっとお世話になるはずだ。
優先的にレベルを上げたい。
休憩中、俺はとあるスキルについて考えていた。
ーーー特殊スキル【威圧】
俺が所持しているスキルの中で最も高レベルであり、最初からあったスキルでもある。
このダンジョンに来てからそれなりの時間が経過しているが、俺はこのスキルを使ったことがなかった。
否、正確には、使い方がわからなかった。
索敵や隠密は使おうとしたら何となく使い方を理解することができた。
剣術は体が動きを知っていた。
だからこんな事態は初めてだった。
何をどうすれば良いのか、全くわからない。
だから今まで深く考える事を放棄していた。
今は時間に余裕がある。
色々と試してみよう。
ーーー駄目だった。
あれこれと考えうる限りの手を尽くしたが、スキルの発動を実感することは結局できなかった。
気付くと休憩を初めてからそれなりに時間が経過していた。
俺はスキルの検証を諦めて、探索を再開することにした。