表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

第五話  虚偽と願望

ーーー校倉君人は嘘をついている。

最初に気付いたのは、校倉がある発言をした時だった。



「...うん、まぁね。それ以来、戦ってはいない(・・・・・・・)けど。」



校倉がそう言った時、校倉の身体から黒い煙のような何かが滲み出た。

初めて見る現象ではあるが、俺はすぐに悟った。

ーーーそうか、これが真理眼の力か...。



それからも何度か校倉は嘘をついた。

校倉の言葉。そこから推測される真実は以下の通りだ。

・チュートリアルで妖精の力を借りた。←本当

・チュートリアル以降戦闘はしていない。←嘘

・このままではポイントが尽きる。←嘘

・魔物を見ると体が震える。←本当



どうやら魔物に怯えているというのは本当のようだ。

それでも勇気を出して戦っているのだろうか。

だとしたら何故それを隠すのか。

それがわからない。





「その...こんなこと言ったら、軽蔑されるかもしれないんだけどさ...。」


校倉は俯いたままゆっくりと言葉を紡ぐ。


「魔物と戦うのを...手伝って欲しいんだ。」


「校倉も戦うのか?」


「うん...このままではいられないし...。」


「僕はまだ、死にたくないんだ。」


その言葉は、気弱な校倉が抱く、確かな願望だった。


「...そうか。...わかった、手伝おう。」

嘘をついた事は間違いない。

しかし、それでも見捨てることはできなかった。






「俺が弱らせる。お前は止めを刺すんだ。」


「うん、わかったよ。」


いま俺達は、休憩部屋を出て探索をしている。

出てきた魔物は校倉に仕留めさせている。


「...慣れてきたか?」


「まぁ何とかね」


少し顔色が悪い。先程から体が小さく震えている。


「今日はこれくらいにしよう。部屋に戻るぞ。」


「うん...ありがとう、黒崎君。」


「いや、気にするな。」



部屋に戻った俺達は、軽く腹を膨らませた。



「...調子はどうだ?」


「...うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」


「一人でもいけそうか?」


「...どうだろ...まだわからないや。」


その言葉は嘘だった。

既に校倉は一人でも戦えるのだ。

ならば何故俺に助けを求めたのか。

それがわからない。



「...とにかく今日は寝よう。」


「うん、そうだね。...また明日も、手伝ってくれるのかな?」


「あぁ、構わない。」


「そっか、ありがとう。本当に感謝してるよ。」


「黒崎君って思ってたほど怖い人じゃないんだね。」


そう言って、校倉は少しだけ笑った。


「とにかくお休みなさい。また明日もよろしく(・・・・・・・・・)ね。」







ーーー何故だ、校倉。どうして。どうしてお前はーーー









ーーーそうやって嘘をつくんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ