第四話 再会と会話
「え...うわぁぁぁ!!!」
俺が部屋に入った途端、中にいた男がこちらを見たと思ったら急に叫び出した。
ーーーぶっ殺してやろうかコイツ
俺の不機嫌な様子を察したのか、小さく体を震わせた。
「え、あ、えっと...ご、ごめん。その...。」
「いや、別に良い。」
ーーー良くないがな。全然良くないが。
せめてこっちを見ろよと思ってしまう。
5分程経つと、少しは落ち着いたようだ。
「えっと...黒崎君...だよね?」
「あぁそうだ。お前は...校倉...だよな?」
「うん...そうだよ。」
「あー...なんつーか...無事だったんだな。」
「うん、まぁ...何とかね。」
正直な話、こいつが生きているとは思わなかった。
校倉君人...それがこの男の名前だ。
校倉は良くも悪くも普通な奴だ。
決して目立つような人間ではないが、根暗という訳でもない。
いつの間にか大衆に埋もれている。
そんな普通の人間。
ーーーだからこそ、未だ無事でいることに驚いていた。
この状況で特に衰弱した様子がないという事は、少なくとも一度や二度は食料を口にしているのだろう。
それはつまり、魔物を殺してポイントを手に入れたということだ。
校倉が戦いに身を置いた事に、俺は少なからず衝撃を受けていた。
「お前、チュートリアルはクリアしたのか?」
「...うん、まぁね。それ以来、戦ってはいないけど。」
「魔物を避けながら移動して、ここを見付けたんだ。」
「それからは、チュートリアルのクリア報酬のポイントで...。」
「そうか...。」
「えっと、黒崎君は...戦ってきたの...かな?」
「あぁ、魔物は見付け次第倒している。」
「見付けた休憩部屋は、ここで二つ目だ。」
俺はそう言って軽く溜め息を吐いた。
「凄いなぁ...。僕はそんなの無理だよ。」
「でもお前、これから先どうするんだ?」
「ポイントもいつかは底をつくだろ。」
「う、うん。そうなんだよね...。」
「でも、僕には戦いなんて。」
校倉は自嘲的に笑う。
「しかし、チュートリアルでは戦えたんだろ?」
「いや、最初は戦えなかったんだ。だけどずっと逃げてばかりいたら、妖精が手を貸してくれて...。」
「妖精が?手を貸したって、戦ったのか?」
「ううん。魔物が動かないように設定してくれたんだ。」
「その代わり、報酬を半分にするって言われたけど。」
ーーーなるほど、そういう仕組みだったのか。
「しかし殺す事はできたんだろ?だったら...」
「駄目なんだ!アイツ等が動いてるのを見ると、体が震えるんだ...。」
「僕はもう、おしまいだよ。ここで死ぬしかないんだ...。」
俺は校倉に対して何も言ってやる事ができなかった。
何と言ってやれば良いのかわからなかった。
しかし、ここで無責任に助けるなどと言う事はできないし、そんなことを言うつもりもない。
そもそも、校倉は助けなど求めてはいないだろう。
何故ならーーー
ーーーコイツは、嘘をついているから。




