友達は恋し2
俺達は今、朝話していたフルーツパフェを売っている店に三人で行っていた。
他愛もない話しをしていると、すぐにパフェ屋についてしまっている。 校舎から校門まで、約三百メートルのコンクリート道。
桜も随分前に飛び散り、今や緑が生い茂る道はいつもは充分長いのだが、今日だけはもう少し長くていいのにとほんの少しだけ思った。
思っただけで、口にはだしていない。
そんなことを口にでもした日には俺はいじられと恥ずかしさで悶絶するだろう。 うん絶対に。
まぁ、パフェ屋が学校のすぐ隣にあるのに、気付いたことがない俺もどうかと思うが。
そんなことを考えている間に比奈と陸帯は、店の透明なドアを開け注文所で俺を待っていた。
早く来いと目で脅迫されている。
まぁ全くこっちをみてないのでありえない話だが、比奈ならやりかねん。
近くまでいくと、もうメニュー表をみて決める最中のようだ。
「春羽はどのフルーツパフェにする?
私はマンゴーと林檎盛り沢山パフェかなっ!」
「んー……私はラブベリーパフェ……」
比奈は陸帯に注文を聞くと、俺にも聞いてきた。
しかし、そこには言論の自由など一切ない、切実にない、まるっきりない。
今まさに目で脅迫され、選ぶ余地がない。理不尽な世の中だ。
「じゃあ、ラブ葡萄づくしパフェを1つ。」
そう注文すると、定員の少し年のいったおじちゃんは、歯の抜けた口でニコリと笑んでいた。
店内は、薄い緑色の壁に真っ白の丸机と椅子が一定間隔に置かれている。
不思議と落ち着く空間だ。
その一番奥を俺達は陣取り、椅子に腰かけた。
「ねぇねぇ、香蓮ちゃんは葡萄が好きなの?」
座ってすぐに喋り出す。全くゆっくり一息つく間も与えてはくれないのか。
でもなんとなく、俺じじいみたいだなと感じてしまい、勝手に少し虚しくなる。
「んー、葡萄が好きというより、甘いものは全般的に好きかな。」
「なるほどね。
でも香蓮ちゃん、葡萄は甘さより酸っぱさもあるじゃん。
それはいいの?」
「おいおい、比奈何言ってるんだ、果物の酸っぱさは甘さを引き立てるんだよ!
あの酸っぱさがたまらない。」
「うわ、香蓮ちゃんってそういう人なんだ。
春羽はベリー系なんだ、美味しいもんね!」
少し小馬鹿にしたような態度は、いつものことだが、今日は鼻で笑われてしまった。
何が悪い……葡萄は甘い食べ物だ。
うん、俺の中で勝手に自己完結させよう。
「はいよ、お待ちどうさま。」
そんなことを言い合っている間にも、意外にパフェはすぐに来た。
比奈のパフェが、ガラスの器に色鮮やかに盛られて最初に来ると、次に倍はあろうかと言うぐらい、大きな器に入って一つのパフェが来た。
見た目は葡萄や苺、クランベリーなどが入っていて綺麗だが、なにぶん量が物凄い。
若干引いてしまう程だ。
「これで注文は以上だね?
ごゆっくり育みなさいよ、ホッホッ、若いっていいのう。
あっ、残したら罰金じゃからね。」
最後に悪魔みたいなことを付け足して、おじちゃんは奥に消えていった。
だが明らかに二つしか来ていない。ついにボケたかあのおじちゃん。
いや初めてあったからついにではないか、初めからボケていた、それでいこう。
「香蓮ちゃんと春羽はラブラブ恋人専用パフェだから、二人でそのパフェだからね。」