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伏恋に始め4

そんな冗談を思う一方、彼女の両手は俺の頬をとつまんでいた、餅でも伸ばすみたいにそれはそれはびよーんと。

力が入っているようで頬にジリジリと鈍い痛みが走っていく、だいぶ見慣れていたはずの彼女の顔は、少し拗ねているようで薄い唇を若干尖らせていた。


「おーいおい、香蓮ちゃん香蓮ちゃん、そんなに聞きたいのかい?

じゃあ私が優しく教えてあげよう!」


「いや、いいって。」


「むむっー! 私の意見を聞かぬとはなにごとだー!

お願いだから聞いてよ聞いてよ聞いてよぉ。」


無理やりにも聞かせたいのか、お願いとでもいうように上目遣いでこっちを見ながら、話を強制的に聞かせてきた。

ホント、俺相手によくやると自分でも感じる。


「今さ、そこの校門の前で、すっごい美味しそうなフルーツパフェ売ってたんだよ!

ねぇ! 昼休みに一緒に食べに行こうよ!」


右目の下にあるホクロが可愛さをキューット急上昇させた少女の顔は、学校内でも五本の指に入るほど美人であり、入学して一週間後にあった新入生美少女グランプリでは、見事に一位を獲得しているのだから認めるしかない。

それは別に俺の知ったことではないが、だが同時に一番の問題児でもある。



俺に向けられているその顔は、妖艶な女性というより無邪気な子供のようだった。


ふと気がつくと、目の前にはもう一人の女の子がいた。

目を凝らさなければ隠れていてよく見えない。


さっきから騒いでいる地獄の閻魔であり無邪気な子供であり美人な同級生、いや、学園一の問題児は俺と同じクラスの山谷やまがい比奈(ひな)

さらに設定を付け足すのならばかなり煩いペチャパイ王女でありペチャクチャ王女、積極性が強く、明るさが取り柄であり、一応はクラスのムードメーカーみたいな存在である。

山と谷が付く癖に、胸には山も谷もないとは、人生辛いものだな……考えようによっては比奈でひなだし名をていしてると取れなくもないが黙っておこう。

俺のことを一番の親友と言ってくれるのはありがたいが、なんとも恥ずかしい。表面上の俺は絶対に認めないがな。


そんな比奈とは対照的に、後ろでモジモジしている少女。

何故か赤面しながらも後ろでジッと俺を見ているのが、天使であるのはいうまでもない、陸帯りくおび春羽(はるは)最高だ。


「ど、どうかな。よ、よかったら……比奈ちゃんと香蓮君と……その、あの……わ、わ私の三人で……

あぅ、ごめんなさい。」


 いつも比奈と一緒にいる静かでおしとやかで、小さくて可愛い同級生。

身長通りの童顔に、紫がかったつやのある黒い髪、俺は衝動を抑えきれず、恥ずかし気もなくいつも頬をすりすりしている。


そういう意味では、比奈と同じように俺も問題児の一人であるのかもしれない。


「ちょっと! 香蓮ちゃんてば話聞いてる?

さっきから春羽の方ばかり見てるわよ!」


春羽は隠れていて存在感はあまりないが、可愛い顔立ちはしている。

俺は、途中から荒々しくなっていく比奈からの罵詈雑言を無視して、椅子からさっと立ち上がった。

茶髪少女をを何事もなかったようにスルーすると、すぐ後ろにいた春羽の手をがっちりと掴むことに成功した。


「フム、比奈のことは極力避けるに限るな。」



思わず出た言葉に、後ろから鉄拳制裁が、ゴツンという鈍い音と共に執行された。

それを見てか、飛んでいた燕も慌てるように姿を隠していく。

痛みで溢れ出そうになる涙を武器に、できるだけ柔らかな笑顔で比奈の方に向き直る。


やられたらやり返す、それが人の生きざまだ。


「いやいや、本当に避けてる訳じゃないんだよ比奈。

世の中冗談というものがあってだな、これは……その初めていうから緊張するんだが……

その、な、俺は比奈のことが……一番……」


そこで一時いっときの間をおくと、やがて比奈の顔はトマトのように真っ赤に染まっていった。

戸惑っているのか、さっきまでと違いアタフタしている様子は小動物のようで可愛らしい。

それをみてニヤッと口角をあげる、本当にからかいがいのある奴だと確信する。



「一番バカな奴だと思う。 というか確信したな。」


……

空間に二度目のゴツンという音が響き渡る。


「すみませんでした比奈様。」


「ムキーッ!

許すわけないでしょ、バ香蓮。」

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