仲間を守り6
同時に赤い液体が波紋を広げた。
それが恐怖からなのか、はたまた作戦なのかは分からないが、もう少し手応えが欲しい。
「お、お前のその力……いったいなんなんだよ、俺の模倣する写し鏡の力が一瞬にして消されるなんて。」
声が震えていた。
ということは恐怖で尻餅をついただけかと、多少落胆してしまう。
さながら小動物のようだが、僕にはハゲ男の小動物を飼う趣味はない。
まぁ小動物自体を飼う趣味もないんだけれど、だってすぐに死んでしまうじゃないか。
模倣する写し鏡?
なるほど、四つに刻まれていた死体が動く理由はそれか。
十字架の中はさながら死輝を貯めておく装置か、最初はただの死体を動かしていただけか。
その死体が死んだら、死輝によって身体が再構築され模倣した人格……いや感情も何もないただの動く人形の出来上がりって訳だ。
死体が死ぬという言い方も微妙な言い回しだが、気にすることはない。
おそらく、条件なのか副作用なのかしらないが、二度殺した者を操ることができるということだろう。
技名的には根源の力は反映、超えた鏡写し(コピーマネット)が百パーセント劣化したバージョンだな。
「シキ、つっこまないよ。」
ふむ、ナツのツッコミも期待できないのか、なら僕が解説を続ける意味もない。
もはや手を伸ばせば届く位置にまで近寄っているんだ、端から見たら僕が脅しているように見えるかもしれないな。
そう思うと頬がピクピクと緩みかけるが、男を見てニヤケているとでも思われるのも癪なので我慢してみよう。
うん、我慢してたら闘うのも面倒くさくなってきてしまった、更に眠い、そしてナツと一緒に遊びたい。
今とは関係無いことばかりが頭を錯綜していく。
僕自身もこんな時に考えることではないと分かっているが、どうもつまらない時はついつい考えてしまう。
もはや生かしている意味もない……殺そうか。
「トキイト、君は僕を憎んでくれて構わない、恨んでくれて構わない。
だから、その矛先を僕以外には向けないでくれ。」
目を細め、血まみれのトキイトを見据える。
「さようなら、今日あったトモダチよ。」
そんな時だった、夜の空気を割くような発砲音、同時に吹き飛ぶトキイトの身体。
反射的にバッと後ろを振りかえると、銃を構えているナツの姿があった。