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仲間はコイシ3


「皆さんご確認いただけたでしょうか?


それは灯火時計と言いまして、ナイトロジアに置ける残りの人数を指しています。


その残りの人数が三十万を切るか、三種の神器が私達の手元に揃った時、ナイトロジアは消滅し、貴方達はもとの世界へ戻れます。


さぁ始めてください。


醜く欲にまみれた最高のデスゲームを!」





それが始まりの合図だった。その時の行き交う人々の表示は今でも鮮明に覚えている。


俺は自分より背の低い女の子二人をつれて、ただずっと突っ立っていることしかできずにいた……その無力さが惨劇を引き起こしてしまうともしらずに。


それから五年が経ち、俺の名も不本意ではあるが少しは有名になってしまった、いや本当に迷惑極まりない話だ。


ここ五年で変わったことと言えば、ナイトロジア、通称NRの残りの人数はtotal485352人にまで減った。


ヒューマとは人間を指す言葉らしく、残り163002人。


次にイーリス。

恐らくヒューマとは違う世界に住んでいたであろう人々だ。

人間と神が交わった種族らしく、残り221230人で最大人数を誇っている。


最後にマクス。

動物や自然が聖霊と化したものをいうらしく、残り101120人。



たった五年……1800日近くで約150万人が死んでいった。


あぁ、人々の恐怖と錯乱の果てには殺戮しかうつらないのだろうか……


ギリリと奥歯が軋みをあげる。


「どんしたんすかシキっち?

一人黄昏モードっす?」


どこか間の抜けた声は、俺を呼び戻す。

いつの間にか主婦のように武器を買い求める奴等はいなくなり、ちらほらと談笑しているグループがあるだけとなっていた。



目の前には、不思議そうに檸檬色の髪の少年ユズトが、こっちを見ている。


時間を見れば九時半、まだナイトロジアも始まったばかりだというのに、一人疲れきったユズトはフラフラと今にも倒れそうだった。


そして少し距離をとるように、俺の右側には白いロングコートに身を包むナツが立っている。


「あ……ナツさんも着いてたんすか。

じゃあ、後はアイツがくれば全員集合でございますね。」


ふむ、ナツがいるからだろうがちょっと態度が紳士っぽくなったので、なんとなく一発殴っておく。


ユズトは両手で頭を押さえながら地面にうずくっているが、俺はそれをほくそ笑みながらスルーしよう。


「いつもと同じしゃべり方でよろしくユズト。」


「うう、殴らなくてもいいじゃないっすかぁ。」


うらめしそうな目を向け半泣きになっているユズトを尻目に、ナツは沈黙を貫いていた。


相変わらずユズトとは任務の時以外あまり喋らない。

いや、ユズトに限らず俺や一部の人間以外の人とはあまり喋っていないだろう。


謎多き人物、それが五年前から今に通ずるナツの評価。


勿論良いところを上げればキリがない程に、俺が頼っているのも確かだ。


ただ個人の問題に不用意に手を出すのはいい問題ではない気がして、ナツの詮索はしていない。


単に逃げているだけかもしれないが……


ふと隣で薄く微笑む黒髪の少女は、目を引くほど綺麗で、どこか儚げだった。


「でもアイツ遅いっすね、新入りの癖に生意気こきやがって!」


「いや、ユズトが勝手に集合場所変えるからだろ。」


「マジっすか!

俺のせいだったんすか!」


「うん、誰がなんと言おうとお前のせいだな。」


「せ、責任とって、迎えに行って来るっす!」


そんなことをいいながら、三十階建てのビルから自殺防止用のフェンスを越えて、一気に飛び降りた。

周りからはどよめきやら歓声やらが沸き起こる。


しかし諜報組である俺と酉魅にとってはいつもながらの光景に相違ない。


と言いますかあれぐらい出来て貰わないと困る。


落ちてる途中に奇声をあげるのは減点だと、ナツと二人でクスッと笑みを浮かべていた。


大体、集合場所がバーゲンビルの屋上なんて、人が多すぎて見つけにくいったりゃありゃしない。


バーゲンビルとは、日用品から暗殺用品まで幅広く扱っている組織が持つビルで、常に破格の値段で売っている。


勿論ナイトロジアでのみだが、普通の世界で言うところの大手企業という認識でいいだろう。


「元気なバカはいいね。

こっちまで元気になってくる。」


いつもその顔をしていればいいのにと内心思いながら、数歩分の距離をつめ隣に移動する。


どうやらさっき俺から奪った煙草をみて、あることに気がついたらしい。


「あれ? これって僕が前に作ってあげた薬用煙草だね?

どうしたの、風邪でも引いたのかい?」


「そういう訳じゃないんだが、それがあると気分が落ち着いてくるから、それでも吸って気分転換でもしようかと思って。

それに俺は、身体ごとNRに来てるから気遣わないと可愛そうだろ?

何も知らない昼間の俺が。」

「まぁ僕やシキは特別らしいからね。」

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