プロローグ
可知を学び価値を尊び勝ちを知る。
人の歴史とはよくも悪くもそんな多聞な積み重ねでできているものじゃ。
神がいて自然があって、数多くの生命があふれ、その一際小さな範囲に人とは存在しているのであるのじゃからそれを忘れてはならないのじゃよ、否、すでに朝の霞のごとく薄れ忘れ去られていることなのかもしれないのう。
人の夢と書いて儚いという、この言葉はすでに有名だ、いい言葉じゃ……
本当にそうなのじゃろうか? わっちはそうは思わない、思えない、思えるはずがない。
人の夢と書いて儚とよんだほうがいいのではないかとさえ思えてくる、もう十分に汚したのではないじゃろうか、人は神を作り自然を壊し、溢れ満ちていた生命を殺して行っているのじゃから。
その代償に溺れないことをわっちは切に願うとしよう。
はてさて少し昔話をしよう、今から遥か遥かむかし、この世界、いやほぼ全世界を統べていると言っても過言ではない絶対神、夢姫黄金虫ルーナが誕生した。
それからさらにさらに後に、大和朝廷なるものが作られここ日本が形作られていったらしいのじゃよ。
古墳時代や鎌倉時代、さらには室町時代が過ぎ去った。このころには神もどんどん少なくなっていった、いうところの自然と同化していったというほうが正しいのかもしれない。
そして俗にいう戦国時代が幕をあけるのじゃ、偉そうに色々言葉を並べてはみたのじゃが、わっちとてこのころに生まれたわけであり昔のことなど調べた限りでしか知りはしないのじゃ。
しかしなんじゃ、わっちとて生まれてからのことはそこそこ詳しい自信がある。
そうさなあれは確か1467年だったか、応仁の乱とかいうものがあったはずじゃ。
ああそうだった、それから50年後には死輝と呼ばれる力が多く発生したのだから間違いはない。
もっとも、そんな特別な力が現れたとてこの時代の住人はそんなものにたよりはしなかったのじゃが。
己が心に通るもの、たしか武士道精神とか言っておったか。
奇異な力よりも何よりもその心は強かった、誰にも手出しができなかったのだから異論はあるまいよ、他の国は死輝使いにより根こそぎ潰されたのじゃからな。
それからさらに100年程が経ち江戸へと時代が変わったのじゃ。
少しずつ武士道精神が欠けていった変革がここだったのは言うまでもないだろう。
100年ほどかけてどんどん人々は時代に慣れ親しんでいった、もちろん将軍などが変わるたびに多少のくろうはあったが小事であり大事ではない。
そして事件はおこる、1703年元禄赤穂事件、大石内蔵助以下46名が仇討に行った事件……言うてしまえばこの事件は死輝使いが仕組んだものと言ってもいい、故にわっちは赤穂藩士の一人に扮して色々と死輝使いの邪魔をしたのじゃがそれがミスだった。
そっちに気を取られすぎて将軍の座、いやはや時代を終わらそうとしていた勢力に気付かなかったのじゃから。
故に江戸時代は僅か五代将軍徳川綱吉にて終わりを迎えた、かわりに乗っ取ったのは九州の勢力、三家五流派、大友家を潰した龍火路家、島津家を乗っ取った獅子君家、様々な文化や知恵を取り入れた紫月家。
こやつ等は武器と死輝を巧みに織り交ぜておった、この時代を天地月時代と呼んだのじゃ。
このころから文明は一気に発達しおった、わっちにはよくわからん機能がある機会も山ほどでたのじゃよ。
まぁこの時代に関してはわっちはあまり動いていない、かわりに技神と呼ばれた一人の人間がこの時代を終わらせた。
すくすくすく、ついつい長くなってしまったのじゃが、はてわっちは名を名乗ったかの?
まぁよい、いずれわかることじゃ何事も焦るべきではないのじゃから。
さぁお行きなさい……可知で価値で勝ちな世界に。