今、そこにある未来(秋山ジュニア三世の恐怖)
これはフィクションです(笑
ネットカフェで秋山ジュニア三世は、インターネットを利用していた。これも彼の日課の情報収集だ。
車の自動運転やウェアラブル端末が実用化されようとしている現代において、またまた新しいITの波が押し寄せようとしているのではなかろうか。十年先のスマートグリッドによるハイテク都市の実現、いたるところに張り巡らされたクラウドと連携したIT機器、もはやSF映画さながらの世界が訪れようとしている?
待て。本当にそれでいいのか。
秋山は今日のニュース映像を見ていて、怖くなった。
現実は彼の想像をはるかに超えるスピードで進化している。
もしかして、俺が生きているうちに人工知能とかアンドロイドとか出来んじゃね?
秋山ジュニア三世はパソコンの画面を注視する。
「ふーむ……」
秋山ジュニア三世も老いた。若ければ飛び付いたかもしれないソーシャルメディアにも全く関心が無い。携帯と言っても持っているのはガラケーだ。
「今、そこにある未来……」
秋山ジュニア三世は呟き、恐怖を感じた。
「こんな世界で、人は生きていけるのか……」
激動の二十一世紀。小宇宙の中で、秋山ジュニア三世は、出来たてのたこ焼きを頬張っていた。
「たこ焼きマジうめえ。これ考えた奴は天才だ。しかし最近のトッピングはすげえな……。何でもありだよ。たこ焼きも世界と一緒に進化してるぜ」
完成した建築物はその瞬間から劣化が始まるとはよく言ったものだ。秋山は、すでに朽ち果てた残骸だった。老駆逐艦秋山号。今日もその航海が終わる。また明日、秋山号はあてどもない航海に出るのだ。辿りつくことのない世界を探して。
「さーてと、ひとっぷろ浴びて寝るか」
秋山は、よろよろと立ちあがった。秋山は歩き出す。ぼろ雑巾のような肉体に鞭を打って。こんなことに何の意味がある。それでも秋山は歩き続けた。意味などないのだ。答えなど無いのだ。
「今さら、どうにもならねえんだよ」
それでも、一日の汚れを落として、秋山は眠りの床に着くのだった。