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4.始まりの罪(r15的シーンあり)

 地獄のような忙殺の日々を切り抜けて久々の投稿!

リアルが多忙です。

現実世界をフェードアウトしたい。


・・・前回とはシーンが変わります。

「美しい・・・。」

風にかき消されたその言葉は実にその女を端的に表すものだっただろう。

男の月並みな言葉には万感の想いが籠っていた。

どんな形容をも許さない鮮やかな白い肢体。

彼女を目の前にしたら世の男はただこう言うことしか許されないだろう。

・・・美しい、と。

ある男の視線を射止めた女の姿。

彼女は磁気のように滑らかな肌を水に浸した布で拭っていた。

惜しげも無くその肌を晒して。

女の乱れた髪が肉感的な体のラインに張り付く。

その髪から流れ落ちる水滴まで見えるようだ。

女はその白い繊手を自らの髪に持っていき、その髪を絞る。

そして流れる髪を上にまとめ首筋を露わにした。

その際に張り出された胸は真珠のように白く艶やかで、水滴すら弾く。

男の乾いた喉が鳴った。

まるでその女を中心に磁場が広がっているようだ。

誰かを惹きつけずにはいられない夕日に漂うその香り。

それは背徳であり、罪の匂いだ。

彼はその甘い毒に犯されていく・・・。




「陛下に拝謁いたします。」

王宮中の一室、謁見の間。

男の前にいる女は先程男が劣情を抱いた女だった。

彼は玉座からその女を俯瞰する。

王宮の屋上で見た幻想的な姿に彼は想いを馳せた。


__あの女が・・・この女か。


間近に見た女は浮世離れした幻が像を結んだように思われた。

より質感が感じられるその姿。

男のその体に触れたいという欲望が膨らむ。

強烈な刺激は再び彼の脳内を犯していく・・・。

「・・・ウリヤの・・・妻、バト・シェバだな・・・。」

「左様でございます。」

男を見る女の目は真っ直ぐで男の欲望に気づいた様子はない。

深い色をした藍色の目はユラユラ揺れる燭台の光で青く見える。

美しく結えられた髪は後れ毛が艶かしい。

男の目は白い首筋に向けられ、その視線はなぞるように胸の辺りに移る。

女・・・バト・シェバはその視線に顔を少し引きつらせた。

「・・・我が夫のことで話がおありだと・・・使者殿が。」

「あ、ああ・・・。」と気のない応えをする男に女は怪訝な顔をした。

「・・・お前の夫ウリヤがもうすぐ戻って参るかもしれないな・・・。

ヨアブとアビシャイの兄弟がアンモン・アラムの連合軍に

勝ったという知らせが届いたから・・・。」

数拍後に男は焦ったように言った。

男には彼女にする話など無かったのだ。

彼女を間近に見てみたい・・・それだけの理由で、

適当なことを言って彼女を呼び出したのだった。

ところでヨアブ、アビシャイとはダビデ傘下の有能な将軍である。

彼女の夫は彼らに従軍する武将の一人であり、

柔剛兼ね備えた人格者として知られる偉丈夫だった。

「まぁ・・・。」

彼女は愛しい夫を思い浮かべ花が綻ぶような笑みを浮かべたが、

怪訝な顔をしてダビデに問う。

「・・・それだけ・・・ですの?」

確かに人妻を呼び出すのには不十分な理由だった。

男と女は厳しく隔てられていた。人妻ともなれば尚更だ。

彼女の勘の良さにダビデは額に汗を流す。

「・・・それだけだ。」

「・・・では私は退出しても宜しいでしょうか?」

バト・シェバは毅然と言い放つ。もしかしたら男の意図に気づいたのかもしれない。

一礼して去ろうとする彼女の腕を男は玉座から躍るように飛び出し、咄嗟に掴んだ。

「・・・何をなさいます・・・。」

呆然とした風の彼女の声音に焦りが滲む。

「・・・バト・シェバ・・・美しい貴婦人よ。

・・・私の脳裏に、あのお前の姿が焼きついて、離れないのだ・・・。

ウリヤがお前のことを敢えて話さないのは・・・お前を奪われないためか。

・・・お前は秘された宝玉。・・・まことに美しい。」

「・・・・・・私、陛下にお会いしたことなんて・・・。」

掴まれた腕を抑えながら彼女は言う。

男の腕に重ねられた汗ばんだ手は哀れに震えている。

「・・・王宮の屋上で・・・血の汚れ(月経の汚れ:入浴)を落としている

お前を見た・・・。」

「・・・・・・。」

彼女は色を無くした。男の熱っぽい手をどかそうとするが抑えられ、

男のもう片方の手でその手を包まれる。

彼女は身を捩るも、男の力の前では無力同然だった。

男に抱きしめられた彼女は悲鳴のような呻きを漏らすと弱々しい声で訴える。

「・・・離して下さい・・・。私を哀れに思ってくださいませ。

・・・私には夫がいます・・・。陛下の情けを頂いてはイスラエル中の笑いものです。」

彼女には信じられなかった。

たった今、彼女の腰に手を回し、髪に顔を埋めているのは

イスラエルの民の敬愛を集める存在・・・王なのだ。

確かにイスラエルの賢明なる王が好色であることを伝え聞いたことはある。

彼が人妻に手を出したという噂もあったが、それは・・・あくまで形式上は

未亡人を娶ったというものだった。


__こんな強引なことをなさるなんて・・・。


彼女は情けない思いに駆られた。


・・・こんな腐敗が許されるの?これがイスラエルの王ですって?


「・・・情けを乞うのは私の方だ。お前を忘れることは・・・出来ない。」

彼女の耳に囁かれたその言葉はバト・シェバの体を腐らせていくかのようだ。

凍りついた彼女の胸元に手を伸ばし、男は・・・


__ビリリッ


彼女の上着をいとも容易く破いてしまったのだった。

その音は彼女の危機意識を最大限に高めたようで、

なりふり構わず彼女は滅茶苦茶に暴れだしたのだった。


__ドンッ!


最も至高である筈のその身体を突き飛ばし、

バト・シェバは走った。

謁見の間を抜け、無我夢中で足を動かす。


__家に帰って下男に護衛させようか・・・いえ、あの人が帰ってくるまで

  私は身を隠さなくては!


衣が乱れるのも構わず彼女は走る。

城に仕える女達が驚いたような顔をして彼女を目で追う。

妖艶な美女のあられもない姿に衛兵達も目を丸くする。

「その、その・・・女を捕らえるのだ!」

「通して、衛兵!私はウリヤの妻、バト・シェバよ!」

この女の姿を見れば誰の目にも

これから王が女にしようとしていることは明らかだった。

しかし・・・、

「その女を捕らえよというのが聞こえないのか!」

「・・・ひ、ひぃ。」

権力に臆する下級役人を誰が責められようか。

むしろそれは当然のことだった。

よほどの剛の者でなければ、王を諫められないだろう。

そしてそのような者は全て戦争で駆り出されているときている。

バト・シェバの運はここに尽きたり。

睨みつける彼女に、「どうもすみません。」と小声で言うと

その腕を捉え縛してしまう衛兵達。

「・・・っ、旦那様に言いつけてやるわ!貴方たち、善悪が分からないの?」

尚も暴れる彼女を見て、追いついた男がクスクスと笑う。

・・・彼女からは憎しみの籠った目を向けられているというのに。

「・・・お前は夫にこのことを言えまい。それはお前が夫を愛しているからだ。

・・・勿論私もお前を愛しているぞ。さあ、こっちへ。」

そう言うと衛兵から彼女を受け取り、担ぎ上げて男は、

勝手知ったるようにスタスタと歩き始める。

その間も諦めずに暴れる彼女に男は苦笑した。

「・・・っ降ろして!私は貴方の部下の妻よ!家に返して!

人でなし!私に触らないでよ!」

「・・・威勢のいいことだな。もっと物静かな女かと思っていたぞ。

男に生まれればお前は夫君より勇猛な武将だったかもしれないな。」

呆れたように笑う男の顔を少しも崩せない自分の非力さに

バト・シェバは涙を零した。

悔しかったのだ。他の存在に自己を易易奪われることが。

彼女という存在を羽毛のように軽いものであるかのように、

この男は彼女の意志をぞんざいに扱った。

別にそれはこの男に限ったことではない。

彼女の父親、兄弟が皆そうであるように彼もまたそうであるだけだ。

女という存在は所詮男の所有物に過ぎない。

その点、彼女の夫ウリヤも彼女に対する

支配欲を見せる点では彼らと変わりがない。

男の愛とは異性への支配欲によって

成り立つところもあるから仕方がない部分もある。

ただし彼は彼女が接してきたあらゆる男よりは彼女の意志を汲んだ。

そんな彼が途端に慕わしく、懐かしく思え

彼女は更に涙を零した。

それをどう勘違いしたか男は心細いから彼女が涙を零しているのかと思ったのだ。

「・・・大丈夫だ。私はお前に手荒なことなぞせぬ。

愛しい女よ、私がお前を愛していることをどうして分からない?」

その優しく宥めるような声が逆に彼女を頑なにすると

王にはとうとう分からなかった。

数々の苦難を乗り越え、地位も美しい女達も手にしてきた王は

初老に至っても気勢衰えず、爛熟の極みである。

その栄達を成した自信が彼の傲慢に拍車をかけ、

人を蔑ろにするのかもしれない。





そうして彼女が連れてこられたのはやはりというべきか

・・・男の寝室だった。

これから起こることをバト・シェバは悟り戦慄した。

それは愛する夫に背き、尚且つイスラエルの律法に背く行為


・・・姦淫である。


「・・・後生ですから、おやめになって下さい。

このような真似をさせて・・・戦から戻った夫をどのような顔で迎えろと?

陛下もきっとこの件が漏れたら批難の的に・・・。」

「男の前で他の男の話など無粋ではないか・・・。

先程申したように私はお前を愛している。

ウリヤにも負けないであろう。」

男は彼女の頬に流れた涙の跡に口づけ、寝台に彼女を横たえた。

「陛下は・・・私を愛してなどいないわ。

肉の欲に目が眩んでいるだけよ・・・。

私を真に愛していない・・・愚かな、

我が夫は陛下の腹心だというのに・・・。」

のしかかる男の息を避けながら彼女は必死に言い募る。

どうせこの男は自分を屈服させると分かっていても、

彼女は言わずにはいられなかった。最後の抵抗だ。

「・・・ウリヤの話など、これ以上するな。興が削がれる。」

男は彼女の胸元に手をやると、破れた衣服を更に破く。

「・・・ああ・・・。」

虚空が女の絶望を飲み込む。

男の口が女の胸に口付ける。

その手が下腹部をなぞる・・・。

バト・シェバは夫ではない男の手が自分の体を這っていることに

恐怖と現実味の無さを感じていた。

女のすすり泣く声と男の荒い息が響きあう。

彼女の生きていた世界が瓦解する。

その世界は律法という縛りで構築された、規則的なものだった。

彼女は律法に従い、親に従い・・・親の決めた夫に従ってきた。

それが彼女のプライドであり、生きる指標だった。

そんな正しかった自分がこの男によって乱されている。

・・・自分を堕とすこの男が憎い。


__まさか・・・こんなことが自分の身に起こるとは思わなかった。


欲望のままに行為をする男に対して彼女の芯は醒めていた。


__どうせ・・・この身なぞ風が吹けば落ちる木っ端に過ぎない。

  

それでも・・・。


「・・・いやぁっ!やめて!やめてください!」


__抵抗せずにはいられない・・・。


彼女は既に暗闇に白い上半身を浮かび上がらせていた。

男の性急な動作は彼女のスカートをはだけさせ、太腿を顕にしていた。

必死にその手を掴み訴える。

「・・・や、やめて・・・。」

動作を途中で止められた男は顔を顰め、

その恐ろし気な目を彼女に向ける。

「・・・お前は夫がどうなっても良いようだ・・・。

どうとでもなるのだ。私は王だ!無礼者が・・・。」

分かったら大人しくしていろと言わんばかりの目に

彼女は抵抗する術を失った。

「・・・わ、分かりました・・・。どうぞご随意に・・・

どうか、夫は・・・。」

「分かっておる。お前の夫だ。愛するお前の。」

男の手が動くにつれ、外気の冷たさが増す。

バト・シェバは唇を痛いほど噛んだ。


__私は夫を裏切るのね・・・。

  気持ち悪い、気持ち悪い。どうして私なの?


涙を流そうにも最早枯れ果てた井戸のように涙すら出てこない。

男が服を脱ぐ音がする。

そうして漂う夫とは違う匂いに吐き気を催す。

「覚悟はいいな。」


__どうせ私を犯すくせに。


嘲り、怒り、悲しみ・・・諸々の感情が

彼女の胸中を吹きすさぶ。

そうしているうちに伺うように彼女の股に熱いものが擦りつけられた。

息を詰める男の息。

そして・・・、


「・・・あ、あああッ!」

彼女の腹に熱いものが侵入した。

全身が強ばって、息が詰まる。

衝撃は彼女に自覚を与える。


・・・とうとう自分は戒律を破ってしまった・・・。

夫の顔が心に浮かび彼女の心は血の涙を流していた。


__どうしてこんなに自分は無力なのだろう・・・?

  望まないことを拒めない・・・それが女だというのか。


男に揺さぶられ、ぶれる視界に夫の顔を探す。

だが、その男は彼ではなかった。

憎い男に与えられる快楽も煩わしい。

「・・・ダビデ王・・・私、貴方を一生恨むわ・・・。」

「・・・憎むとあらばそれも良い・・・お前の体は最高だ・・・。」

熱に浮かされた男の呟きは女の自尊心を粉々にするには充分だった。




 この物語のテーマの一つが『罪の連鎖』

バト・シェバとダビデの姦通事件

アブサロム事件は因果応報的に繋がっているんです。

知識浅いのでうまく書ききれるか自信なしwww


・・・初めて書いたr15に冷や汗。



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