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2.獅子丘の訪問者_または懊悩の貴公子

アブサロム王子は旧約の中でもシスコンであることは

間違いない・・・(  ̄▽ ̄)

彼の娘の名前タマルなんですよね・・・( ̄ー ̄)

どんだけシスコン?とツッコミたい・・・。

そして聖書の中の『愛してる』ってワード

なんだか男女間とかそういう愛を指してるんじゃと

思う時がある・・・。

ダビデのことをサウル(初代の王様でダビデ、ペリシテ人の為に

死に追いやられる。)の息子ヨナタンは『愛していた』そうな・・・。

しかしその実態は同性愛らしいのです・・・www。

つまり『愛している』ってエロース的な愛なのかもしれないですよね・・・汗。

「そうだ!!お前・・・なぜ去ったんだ!タマル・・・。」

アブサロム王子は彼女の腕を強く掴み、

敷物の上に乱暴に組み敷いた。

タマルの視界は反転し、ブワッと漆黒の闇色に埋め尽くされる。

踊り子がヴェールを翻した瞬間のようにその光景は幻想的だった。

上質な縦糸のような・・・まるで絹糸のように滑らかな髪が

檻のように彼女を覆い閉じ込める。

重厚でありながら何処か素朴で落ち着く香りが

彼女の鼻腔をつく。

その香りは乳香と呼ばれる極めて貴重な香から来るものだった。

乳香は古くからある香である。

ユダヤにおいては神に捧げるべき香とされ、また神それ自体を象徴し、

金と同等に取引されるほどだった。

記憶の釣り針は彼女を引上げ遥かなるエルサレムの聖なる天幕、

そして王宮へ連れて行く。

乳香の香りは彼女の過去の記憶に染み付きすぎているものだった。

タマルは目を閉じる。

その目尻からは懐かしさのあまり涙が溢れた。

久々に嗅いだ慕わしい家の匂いだったのだ。

再び嗅ぐこと能わずと思っていただけにその感慨は一入なもので、

兄に睨まれ緊張していた彼女の体は思わず弛緩する。

「俺を見るんだ・・・タマル・・・。」

気づけばアブサロム王子の手はタマルの首筋にあった。

その手に力が籠る。

「ああ・・・殺してやりたい!いっそ・・・お前さえ殺してしまえば!」

ギリギリと籠められる力にタマルは目を見開いた。

「お・・・お兄様・・・?」

「そんな目で見るな!」

その黒い瞳を更に暗くしてアブサロム王子は呻く。

その狂気を孕んだ表情にタマルは戦慄した。


__もうこれ以上お兄様の心に触れていたくない・・・。


そう思ったタマルは思わず視線を逸らした。

その態度が火に油を注いだのかアブサロム王子は怒鳴った。

「・・・いつ目を逸らせと?俺はそんなこと・・・。」

アブサロム王子の感情は千千に乱れていた。

「・・・お前さえいなければ俺はこんなに苦しまない!

お前さえいなければ・・・こんなに父を憎むことも無かった・・・。

お前さえいなければ神に背こうとも思わない・・・。

何故俺はお前をこんなにも・・・。」

「お兄様・・・。」

「・・・脱げ。」

冷酷に響いたその声にタマルの心臓は凍りつく。

「・・・何を・・・。」

「・・・お前が脱げないならば俺が手を貸してやろうか?」

そう言って乱暴に彼女が動けないよう膝を彼女の股にすべり込ませる。

ザァと冷水をかけられたかのような冷たい感覚がタマルの体中に広がった。


__お兄様は私を裏切るの・・・?


アブサロム王子は動けない彼女の首から手を離すと、乱暴に彼女の両手を拘束した。

そしてその長い指を裾に手をかける。

彼女は兄らしからぬ官能的なその動作に全身が汗ばむのを感じた。

よもや兄がそのようなことを本気でしてくるとは思わなかったのだ。

動揺のあまり乾いた息がヒュウッと喉の奥が鳴る。

その間にも服は捲り上げられていき、彼女の白い足の全容

が顕になろうとしていた。

我に返ったタマルは俄かに暴れだす。

「・・・止めて!止めてください!」

「・・・タマル・・・。」

アブサロム王子の秀麗な眉が歪む。

それに対し罪悪感のようなものを感じたタマルだった。


__何故私がお兄様に罪悪感を抱く必要があるのかしら・・・。

私は正しいじゃない!神の掟をちゃんと守っているのに・・・。

でも兄を受け入れてあげたいという感情が心に渦巻いている・・・。

・・・これは何故なの?


藻掻いても藻掻いても絡みつくその不可解な感情。

彼女はそのことに危機感を覚えた。

兄は乾いた旅人が水を求めるが如く自分に執着している。

その熱さは自分が兄を求めるものとは明らかに違うものの筈だった。

彼女はそんな自分の感情から逃げるようにして、

自らの口をこじ開けた。

「・・・アムノンお異母兄様のことをお忘れで?

私はあの人に犯されて、女としての未来が無くなったのに・・・。

その私を拾い上げてくれたお兄様には感謝してもしたりません。

なのに・・・私を同じように抱くのね・・・。」

「・・・違う!俺はあんな男とは・・・。」

「違わないわ。」

「・・・お前は知っているくせに。俺はお前を愛し続けている・・・誰よりも!

アムノンはお前を気まぐれで抱いただけじゃないか・・・。

なんであいつは良くて俺は駄目なんだ・・・。」

その言葉を聞いて彼女は針で心臓を刺されたように感じた。

その次の瞬間、抱いた思いは怒りだった。

「アムノンお異母兄様を私が本気で受け入れたと思っているの!?

違うわ!あの人に飛びかかられた時、私は恐怖しか感じなかった。

抱かれた時の痛みや屈辱感、拒まれた時の憎しみ・・・今でも忘れられないわ。

お兄様はあの時から私を襲いたかった?アムノンお兄様のように・・・。」

「違う・・・。いや、違わないのか

・・・俺はお前を抱きたかったのかもしれない・・・。

お前が俺に泣いて縋り付いた時俺は・・・お前がアムノンに抱かれている様を

想像して狂ってしまいそうだった・・・。あれ以来、お前を見るたび何故だか

アムノンに抱かれているお前の姿が脳裏にちらついて、

俺がもしお前を・・・という想像をしてしまう自分がいた・・・。」

苦渋に満ちた表情でアブサロム王子は告げる。

その目を妹から逸らして。

「・・・信じていたのに。」


__そう。私は兄妹という形を頑なに信じようと努力していたのに。


タマルは力を無くしたアブサロム王子の腕から抜け出し、

上半身を起こす。

アブサロム王子は妹の手に縋り付く。

「・・・信じてくれ。俺はあの男とは違う。

俺はお前を決して捨てたりはしない・・・俺はお前に・・・恋をしているだけだ・・・。」

フフ、と力なくタマルは笑った。

「あの人もそう言ったものよ・・・私を愛しているって。

でも実際はどうなの?あの人は私を捨てたわ。

お兄様は私を愛していると言ったけれど、

私がもし体をお兄様に委ねたら?お兄様は私を捨てないのかしら?

その保証はないわよね・・・。

・・・お兄様と私は実の兄妹で父母よりもその絆は深かった。

私がこの世で一番頼れるのはお兄様だった。

どうしてそれで満足出来ないの・・・?

どうか・・・その関係を壊さないで。貴方は私の兄・・・よ。

そんなことをしたら神の怒りを買うわ。」

タマルの目からポロリと涙が伝った。

それは後から後から筋を伝って彼女の兄の手に落ちる。

塩辛く、苦い涙だった。

「・・・お前は非情だ・・・戒律を盾にするのか・・・。

俺はお前の兄という事実は変えられないのに・・・。」

傷ついたように呟くアブサロム王子は妹の涙をその手で拭った。

「すまない・・・俺はどうかしているな・・・。

泣かないでくれ・・・。

信じてくれ、俺はアムノンとは違う・・・。

お前に無理強いするなんて俺はなんということを・・・。」

アブサロム王子は我に返ったように言うと天を仰いだ。

「・・・お前がいなければこんなに心はざわめかない。

だけどお前がいなければいないでお前の姿を追い求めてしまう。

お前など最初からいなければ良かったのに・・・。俺は情けない男だ。

妹と関係するなど思えば罪深いことだ・・・なのに今強要しようとしてしまった・・・。

俺もまたアムノンと一緒なのかもしれないな・・・。

または憎むべき俺たちの父のように・・・卑怯だ。」

自慢の髪をグシャグシャにし懊悩する兄を見て、タマルもまた悲痛な思いになる。

彼女の兄は父ダビデ王の息子の中でも特に誇り高く美しい王子だった。

人々の信望を集め輝いていたアブサロム王子は彼女の幼い日の憧れだった。

それがこんなにも心弱くなり、打ちひしがれているとは・・・。

そして彼女自身も色褪せてしまっている・・・。

「・・・お兄様・・・。」

「・・・分かっている。でも・・・どうしても断ち切れないのだ。

お前は俺が求めるほどに俺を求めてはいない・・・それが辛いのだ。」

「私はお兄様を一番に考えています・・・今もこれからも。

私はお兄様が求められるほど美しくも、良くもありません。

・・・私こそ恥ずかしい限りです。

昔人々は口々に私のことを紅玉のようだと讃えました。

でも・・・あれは幻だったのでしょうか?」

タマルは過去の自分を思う度、

あれは夢だったのだろうかと思うことがある。

そうして現在の自分の冴えなさを見て納得するのだ。

ああ、あれは幼い頃の束の間の夢であったのだと。

あの頃の自分は希望に包まれて

その光は絶えることはないと信じていた。

父は自分を溺愛し、母もそして美しい自慢の兄も自分を愛してくれている・・・。

彼女は思っていた。

その関係は崩れることがなく、

自分は何時までも美しく輝いていられると・・・。

だがそれは間違いであり、彼女は傲慢だったのだ。

幸せとはいとも容易く人の手から逃れてしまうものだ。

「・・・お前は今でも美しいよ。

アムノンに否定されたからと言ってお前が気に留めることは何もない。

お前はどうして自分を貶める・・・。女の価値は辱めを受けたからといって

何か変わるというものではないだろう。

お前の美しさは今も昔も変わらない。・・・少なくとも俺にとっては。」

自分を肯定してくれる男の言葉に

タマルはじんわりと心の端が暖まるように感じた。


__ああ・・・美しいと男に言われたのはいつの日か。

__何故この人は私が欲している言葉がわかるのだろう・・・?


それが例え気休めであったとしても嬉しいと思う自分がいることに彼女は気づく。

今は女性として傷つき窶れて、とてもかつてのように誇れない自分。

華やかな着物もなく・・・また着る気にもなれない。

そんな自分をこの人は美しいと言う。

この兄ならば自分を抱いても変わらないかもしれないとも思う。

だが・・・それは許されないことだ。

・・・いや、怖くて踏み込めないのだ。

「・・・ありがとう。お兄様。

・・・でも私宮殿にもお兄様の家にも

どうしても二度と戻れない・・・。

ここで一庶民として暮らすわ。」

「何故だっ!どうして傍にいてくれない?

俺はお前が望まぬ限り二度と襲ったりはしない。

妹としてだけでもいい・・・傍にいてくれ・・・。」

まるで物乞いのように鎮痛な面持ちでアブサロム王子は乞う。

タマルの心の奥がグラグラと揺れる。

彼女の兄には元々ガラスのように繊細な一面があった。

それを傷つけたくないと彼女は願ってきた。


__本当は妹としてお兄様の傍にいて差し上げたい・・・。


その心情を裏切って彼女の口から出たのは否定の言葉だった。

「・・・いいえ、行かないわ。お兄様が私を傍に置けば狂っていくから・・・。

最初はアムノンお異母兄様を殺して・・・次はお父様まで殺そうとなさっている。

もし、私を愛していなければアムノンお異母兄様は死ななかったし、

そしてお父様もこれほどお兄様の憎しみを得ることがあったでしょうか?

そして私も思うの・・・お兄様さえいなければ私の心はどれほど長閑であったか!

お兄様が心を傷つけてまで私を想うのも得ようとするのも間違っているわ。

それに・・・お兄様が私を仮に女として遇したら、お兄様の王位にもヒビが入るわ。」

タマルはそうは言いながらも兄を失う悲しみをひしひしと感じた。


__私・・・こんなことを言いながら、お兄様の顔を見てしまった今

完全にお兄様を断ち切れるのかしら・・・。


そんな彼女の言葉に激しい色を浮かべたアブサロム王子の瞳が彼女を責める。

憎しみにも似たその色・・・。

彼女は兄妹としての絆がとっくに彼の中で

破綻しているのを改めて知った。


__ああ・・・もうお兄様の中に幼い妹の姿はいないのね・・・。


「・・・どうしても駄目なら力ずくでも部下に言いつけて

拘束させてもらうからな!戦から戻ったらお前を宮殿に連れ戻す!」

「・・・戦・・・お父様を討ちに行くのね・・・。」

どうしようもないこととはいえ、父の顔が脳裏に浮かぶ。


__幼い頃よく自分達兄妹のところにやって来て、

特に私を可愛がって下さったお父様が死ぬ・・・。


「そう・・・俺たちの父を殺しに行く・・・もう後には引けぬからな。

ここを発ったらすぐにマナハイムへ向かう。

父にアムノン殺害を許されて後、お前を四年も探し続けた・・・。

エルサレムを離れて進軍した駐屯先でお前を見つけるとは思いもしなかった。もう会えぬかといつも不安だった・・・。

俺は必ず父を討ってお前を宮殿へ連れもどす。」


__或いはこの兄が死んでしまうのだろうか?


「こ・・・殺さないで。お父様は・・・。」


__貴方も死なないで・・・。


「憎くはないのか?あの父を?お前を可愛がっていた癖に

アムノンを庇った上、傷ついたお前を庇いもせずに

あの女狐とその息子に骨抜きになっている父親でも生きていて欲しいのか?

あの父親は俺とお前を捨て、母上は心痛を患って死んだ・・・。

俺たちの血筋をあの父親はいとも容易く穢してくれたものだ・・・。

フンッ!あんな奴、あの女諸共土くれに返してやるわ!

愛するバト・シェバとその息子とを葬ってやれば

父上もさぞかし満足だろうよ。」

憎しみに顔を引き攣らせるアブサロム王子の顔は悪魔のように醜かった。

それはかつての兄の温厚な姿からは想像も出来ない姿で

彼女は一言も発することが出来なかった。

「どうしてそんなに変わってしまったの・・・お兄様。」


バト・シェバは個人的に女狐だろうって思う・・・。

(バトって娘って意味があるそうで・・・。ウィキによると『誓いの娘』

らしい・・・です。)

彼女の息子はかの有名なソロモンです。

12歳程で即位したらしい・・・。

バト・シェバの女狐っぷりがよく現れとる・・・。

ダビデには他にヘブロンにいた時に得た年取ってる息子が4人(アムノン、アブサロム抜いて)いるのにあえてソロモンを担ぎ上げる意味はやっぱり女が絡んでいますな・・・。


ソロモンといえばソロモン神殿で有名。この神殿は三回程建てられますが、その初代をソロモンが作ったそう・・・。くっそ金かけて。

そしてこれが民の怒りを買います・・・神様だけがホクホク顔です。


また彼は絶倫であることでも有名です・・・。外交の為と言いつつ女を囲いまくってそれがエスカレートしてとうとう奴のコレクションは

1000人に膨れ上がった!・・・という。

いやぁ・・・絶倫の極みですなwww。とても真似できまへん。

そうしてその女達が引き込んだ偶像崇拝信仰をソロモンまで

ノリノリで信じてしまった為、ユダヤの神様が超お怒りになるのだ・・・!

この旧約の神の恐ろしさは知る人ぞ知る・・・もうヨブ記のヨブなんて目も当てられません!興味あったらググって見てくださいね。

ソロモンといえば知恵者!ってイメージしか湧かないけれど・・・

なんてことは無い・・・彼もまた調べてみると意外と馬鹿な奴ですよ。

(ソロモン様に向かって土下座m(__)m)


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