ハナミズキ
第一話 最悪の入学式
俺の名前は小倉伊月だ。只今物凄い勢いで鼻水が垂れている。
まぁこの時期にはありがちな花粉症と言う名の悪魔である。俺的に言わせて貰えば、せめて入学式の最中だけでも止まって欲しいもんである。そのせいで俺のハートは、ダメージを1000程くらう事となったのだから。
と言う訳で、少しその時の話しをさせてもらうとしよう。
あれは、丁度今日の午前の事だ。
俺は、クラス分けの表を見た後自分のクラスへと入って行った。先生のウザくて変てこな自己紹介が終わった辺りで入学式の呼び出しが来て体育館に行く俺達一年。
正直まだ春だと言うのに、体育館の内にぎゅうぎゅう詰めに全校生徒が入ったもんだから真夏のように暑かったのは忘れる訳が無い。
校長の長ったらしい話も合いまって、皆ご機嫌斜めになってきた頃、俺は鼻水が垂れてしまわぬように奮闘していた。
だが、努力は虚しく裏切られてそれはもう大きな大きなクシャミをしてしまった。……
それだけ?とか思うかもしれないけど以外と皆から白い目で見られた。何故なら前に座っていた女子に、今まで溜まっていた鼻水たちが散弾銃でも放ったかのように飛び散ったからだ。もちろんそいつを食らった女子の反応はもちろんブチ切れである。数秒状況が判断出来なくなり固まった後、
「ふざけんなこの糞男!!髪に絡みついてんじゃん!死ね!」そして、バチィンと何とも良い音を出してビンタをされる。
とまぁこんな感じである。当然の反応だ。
その女子は即座に退場権を得られたが感謝などされる分は無く、帰り道で教科書でいつぱいのバックで後頭部を思いっきり殴られたのだが、それは別の話。
とりあえずその後入学式は続行されて、教室に戻って自己紹介をする時なんて高校辞めようかと思ったね。だってあだ名が伊月の月と鼻水を合わせて鼻みずきに決定したら誰でもそうなるだろ?
そんな感じで最悪の高校ライフのスタートをきったのが約1ヶ月前の事。ほんの少しだけ俺が鼻水事件でからかわれる事が少なくなりつつある日の事。
今日も、いつものように学校に登校していた
。自分の席についてから少しした頃。
"ガラガラガラ"と豪快な音を立てて入ってきたのは入学式の時に俺の鼻水を食らった女子だった。ちなみにあの後自己紹介で分かったのだが、こいつの名前は西津彩と言う。
あの時は、よく顔を見ていなかったから分からなかったのだが、この女凄い可愛い。
髪は茶髪で肩の辺りまでで、目はでかいのだがどこか鋭どさがある。スタイルもそこそこ良い。
だが、性格が以外としつこい所がある。
なんと西津と俺は隣の席なのだ。
あれから何度か謝ったけど、
「はいはい、もう分かったから。もういいから。鼻みずき君」
と言った感じである。あの時程怒ってはいないものの、まだ少し怒っていらっしゃる。
キンコンカンコンチャイムが鳴った後、昼休みへと突入した。
いつもの、同じバスケ部メンバーと飯を食っていた。3人いて、まぁこちらは後から分かってくると思う。
「小倉ってさ、西津さんと仲良いよな。」
なんていきなり言い出したのは、池田翔で声も体もデカく初めて見た時は先輩かと思っていた。
だが俺は西津と俺が仲良い分が無いと思っていたので、言ってやった。
「何で!?まだあいつ俺に怒ってるじゃん」
池田は少し、しかめっ面をして
「だって西津さんまだ男子とは小倉以外と喋って無いぜ?」
不思議そうに言ってきやがった。
「そうだったのか?顔は良いからいろんな男子と喋ってんのかと思ってたけど。」
池田はチツチツチツと指を振り、
「だからだろ?しかも西津さん男子が話かけても相槌打つくらいですぐに逃げちゃうんだよな」
へぇ、全然知らなかった。
池田はそのまま調子に乗って
「お前の前だと態度が違うのかもな。好きだから」
"ゴキャ"
背骨に一発蹴りをいれてやったぜ。
急所に入ったらしく、かなり良い音がなり、池田は痛そうに呻いていた。
「でも西津のさんの態度が少し小倉に対して違うのは確かだよね。」
そう言ったこいつの名前は、前田昌平。眼鏡君で成績も結構良いらしい。
俺はそんな前田の意見に対して素直に、
「全然そんな感じは無いけどな。」
そう言ったのだが2人とも口を揃えて「気付いて無いだけだって」などと言いらがるから
俺がその言葉を返そうとした瞬間に、始業のチャイムが鳴った。話に夢中になって予鈴に気づかなかったらしい。何てこった。
俺らは急いで、名教室へとダッシュした。
まだ先生が来ていなかったから助かったけど危ない所だつたね。
そんな事もあったが今日も何とか無事自宅へと帰還する事ができた。
俺がいつものように筋トレをしていた頃、我が家の口うるさい母が呼び出している。
「珍しく伊月にお客さんだよ〜」
珍しくは要らないって感じだが筋トレん中断して俺は階段を降りて玄関から顔を出したらなんとそこには、思ってもみなかった人物が立っていてこう言った。
「話があるからちょっとついて来て」
第二話 あたしの話を聞いてよ
玄関に立っていたのは、なんと西津だった。「話があるからちょっとついて来て」
そう言われて俺は、「もう夜遅くだし明日にしないか?」と言おうとした所で西津は、
「あんた、あたしに貸しが確かあったよね」
こいつは何時も俺の心でも読んでいるんじゃないかと思う。
と言う訳でついて来たのは良いんだが、
一体どこまでいくんだ?とは、聞きたくても聞けない自分のチキンハートが恥ずかしい。
ようやく西津が止まった所は、俺の知らない土地の知らないマンションの前だった。
「ここ、あたしの家だから…」
「はい?」
いきなり言われたもんだから変な返事をしてしまう俺。
「だ〜か〜ら〜ここにあたしが住んでんの」
いや、そこは分かってるんですよ西津さん。
俺が知りたいのは何で連れて来られたかという事なんですけど…
「とにかくついて来て」
そう言われて俺は引きずられるように301号室、西津の家に連れ込まれた。
「なぁ、これって親に見られたら変な誤解を招くんじゃねぇの?」
俺は凄くもっともな事を普通に言ったのだが「親は居ない。二人共離婚して、生活費は貰ってるけど今は皆、別居してる。だからあたしも一人暮らし。」
凄く重たい話となって返ってきちゃったよ。
俺は、話があると言われたのを思い出し、
「そういや西津の話ってなんだよ?」
西津はというと、黙りこんでしまった…
あれ?何で俺は呼び出されたの?と思っていたら西津が口を開いた。
「あたしさ、男子と話したのってあんたが初めてなんだよね」
(O_O) 今こいつは何て言った?
高校生にもなって異性と話した事がないといつたのか?
「話ってのはそれの事なんだけど、こういう事は男子の方が良いかと思って。」
西津は少し俯いていた。
「よし、なんでも任せろ」
しまった!!西津があんまりにも可愛いから勢いで言っちまった。絶対面倒くさい事になるよこれ。そんな俺の気持ちに気付かず、
「ありがと」 と一言。
前言撤回、楽しい事になりそうだ。
あれ?でも一つ符に落ちない点があるな。
「何で俺は話せるんだ?」
至極もっともな疑問である。
「何か初めて会った時があれだったから、親しみやすくなったと言うか、正直よくわかんないんだけどさ」
次の質問。
「何で男子と話せ無いんだ?」
そんなに可愛いのに、とは言えなかった。
「小学校の頃色んな男子から嫌がらせされててそれが今でもトラウマになってんだよね」
あぁ、好きな子にイタズラしたくなると言うやつだな。
その頃から、もててたんだ。
その後も、俺は勢いに乗って次々と質問していたのだが、西津が切れた。
「あんた質問ばっかしないでよ!!!今日は、あたしが話があるから呼んだんだよ!?あたしの話を聞いてよ!!」
「はい。すみませんでした。」
謝罪の言葉が咄嗟に飛び出した。
恐えぇ〜 迫力満点だけど、怒られるサイドからしたら非常に恐い。
「あんたさ、どうしたら普通に男子と話せると思う?」
「女子と喋る時と同じで良いかと思います」
我ながら役に立たない答えだったと思う。
けど西津は、以外にも
「本当に?それだけで良いの?」
むしろ男子と女子の態度が違ったら、そいつはただのぶりっ子か何かだぞ?
「そうか〜そんなもんか。ありがとね小倉、何か話してスッキリしたわ。」
西津が礼を言う何て珍しい。しかも今まであんたとか呼ばれてたのに、初めて西津が俺を名前で呼んだよ。傘借りて帰ろうかな。
家に帰ったら、我が家の口うるさい母は女子と夜に外に出て行った事をネタに超からかってきた。
第三話 頑張れよ
次の日、西津はいつもギリギリなのに、その日だけは一番に登校していた。
一日俺は西津を観察していたが、確かに女子とは喋っているが、男子とはあまり話していない。
だが昼休み同じ委員の男子に話しかけていた。いつものメンバーを撒いてから、こっそり観察する俺は、決してストーカーなどでは無い。
西津はというと、さっきから「あっと」とか
「えっと」とか連発してる上、ここからでも分かるくらいに表情が固まっている。
昨日は、そんだけ?とか言っていたがやはりトラウマになって無意識に情報処理能力が低下しているみたいだな。
だけど、ここで行っても西津は、恥ずかしがるだろうし心にしまう事に決定。
放課後バスケ部に行く途中、西津がいきなり人目の無い所へ連れ込み俺はそれが誰かも分かっていなかったので、
「俺今金持ってないです!殴らないで」
などと、醜態を晒す俺は最高にカッコ悪い。
だが西津は気にも止めず、今から家来て。昨日の話の続き、するから 」
「え?いやいや俺は今からバスケをしたいんだが」
言ってみたけど案の条気にも止めない。
悪い、今日の3on3は誰か他の人を誘って頑張ってくれ。何とか顧問の先生は上手く誤魔化したが、なんか凄い罪悪感…
一方西津は、少し怒っている?
また、例の西津の家に来たわけだが、女子の家に入り浸るのは、ちょっと気が進まない。
西津「………」
俺 「………………」
西津「…………………………」
俺 「………………………………………」
家に入りお互い向かい合ったまま、沈黙がものすごい長く感じたのは、西津も同じだと俺は思いたい。
「ダメだった。やっぱ無理かも」
西津は落ち込んでいた。
「お前諦めんの早えぇよ!と言うかお前今までもそうやって諦めてきたのか?まだそんなに長い付き合いじゃ無いけどさ、お前は絶対諦め無いで裏では頑張ってきてる奴だと思ってたんだぞ!!」
俺はまた勢いで色々言っちまった。
だけど、取り消そうとは思わなかった。
「まだ始めたばかりじゃん。もう少し頑張ろうぜ?」
「………そうだよね。どうすれば良いのかは分からないけどさ、少し諦めんの早いよね」
おぉ、なんかいやに素直だな。なら俺も頑張ろうとか思えるぜ。
「いきなり怒鳴ってゴメンな?」
俺も素直に謝った。
さて、でもこいつの男子嫌いはどうすれば治るかね。誰か知ってる奴がいたら、教えて欲しいもんだ。まてよ?確か小学校の時の男子からのイタズラが源因とか言ってたよな。
もしかして、トラウマとかじゃなくて自分が男子からの嫌われ者だと思ってんのかな?
細かい事は自分でもよく分かんないって言ってたから、無意識で。
試してみるとしよう。
「でもさ西津、小学生の頃の男子が女子に嫌がらせするとしたらそいつら西津が好きだったんだよ。」
さて、どういう反応が来るか。
「何でそうなんの?普通嫌いだから嫌がらせするもんじゃない?」
やはりな…
「小学生の男子は好きな子に嫌がらせしたくなんだよ。俺もそうだったから分かる。絶対そいつらは、お前を嫌ってた訳じゃない」
俺の感が正しければこの後の反応は、
「そうだったんだ…じゃあもう外暗いし帰った方が良いよ?じゃあまた明日」
あれ?全然違った反応だ。
何か変な事言ったかな?もしかして 俺もそうだったから の所がダメだったのかなどと夜遅くまで考えこんでいた。
次の日、休み時間に見かけた西津は普通に男子達とも話していた。
俺のアドバイスが効いたのだろう。
西津はこれで女子からも男子からも人気者でもう俺と関わる事も無くなるんだろうなと思っていたら何故か涙が出そうになっていた。
友達に勧められて、初めてこういう事やってみました。ここをこうしたら良いのに、とか言って貰えると嬉しいです。