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赤の空  作者: 岩
旅の始点
44/53

3.

 そしてやっぱり、正気を取り戻したかのような顔で、けれど同じことを繰り返した。


「志穂。遅いじゃない」


 その声が泣いているようで、それなのに詰られていることだけははっきりと分かって、マナファナは自分こそ泣きたかった。


「‥‥志穂なら絶対、どうにかしてくれると思っていたわ。それなのに、こんなに遅くなるなんて、なんで‥‥」


 記憶を持つ自分は祖母になれるのだろうか、と、マナファナはそんなことを考えた。結局自分は何なのだろう?この女性にとって、自分は自分でなく志穂になれるだろうか。


「‥‥私が悪いと思うならそう思えばいい」


 これはマナファナの言葉だろうか。志穂の言葉だろうか。


「言い訳はしないさ。確かに気付けば私はずっと遠くにいた。それだって100年もかかる道のりじゃなかった、だろうな」


「‥‥志穂?」


 ゆるく首を振る。肯定したいのか、否定したいのだろうか。


「‥‥つぶさ。遅くなってすまなかった。この100年、私、たちは、お前のことを忘れてしまっていた」


「‥‥志穂?‥‥

 そ、れが、こんなに時間がかかったことへの言い訳?わたしを、忘れていた?それが?」


 罪悪感。これは誰のもの。


「‥‥誤解しないで」


 ふと、ソノリアが口を開いた。


 その目はマナファナを見ている。じっと、マナファナだけを。


「‥‥マナファナは、シホさんじゃない。つぶささん、マナファナ、誤解しないで。貴女は過去の人なんだ」


 じっと見つめる。あぁ、なんだか忘れてしまっていたみたいだ。


「‥‥そうだ。私は祖母さんじゃない‥‥本当に祖母さんが何を考えていたのかは知らない。でも私は、責任を果たしに来たんだ」


 そう。過去の遺物がこの中にも残っているだけだった。そしてこの人も過去の遺物だ。


「‥‥志穂?あなたは‥‥誰?」


 これは過去との対面であって過去どうしの思い出ではないはずだ。


 マナファナは首を横に振った。


「‥‥私は私です。祖母さんからも母さんからも、いろいろなものを受け継いだけれど。私は私。私は、私の責任を果たすだけ」


 そして今度こそ、マナファナ自身の目で彼女を見つめた。彼女はあまりにももろく、儚かった。


「‥‥もぅいい。もぅいいから、‥‥」

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