3.
そしてやっぱり、正気を取り戻したかのような顔で、けれど同じことを繰り返した。
「志穂。遅いじゃない」
その声が泣いているようで、それなのに詰られていることだけははっきりと分かって、マナファナは自分こそ泣きたかった。
「‥‥志穂なら絶対、どうにかしてくれると思っていたわ。それなのに、こんなに遅くなるなんて、なんで‥‥」
記憶を持つ自分は祖母になれるのだろうか、と、マナファナはそんなことを考えた。結局自分は何なのだろう?この女性にとって、自分は自分でなく志穂になれるだろうか。
「‥‥私が悪いと思うならそう思えばいい」
これはマナファナの言葉だろうか。志穂の言葉だろうか。
「言い訳はしないさ。確かに気付けば私はずっと遠くにいた。それだって100年もかかる道のりじゃなかった、だろうな」
「‥‥志穂?」
ゆるく首を振る。肯定したいのか、否定したいのだろうか。
「‥‥つぶさ。遅くなってすまなかった。この100年、私、たちは、お前のことを忘れてしまっていた」
「‥‥志穂?‥‥
そ、れが、こんなに時間がかかったことへの言い訳?わたしを、忘れていた?それが?」
罪悪感。これは誰のもの。
「‥‥誤解しないで」
ふと、ソノリアが口を開いた。
その目はマナファナを見ている。じっと、マナファナだけを。
「‥‥マナファナは、シホさんじゃない。つぶささん、マナファナ、誤解しないで。貴女は過去の人なんだ」
じっと見つめる。あぁ、なんだか忘れてしまっていたみたいだ。
「‥‥そうだ。私は祖母さんじゃない‥‥本当に祖母さんが何を考えていたのかは知らない。でも私は、責任を果たしに来たんだ」
そう。過去の遺物がこの中にも残っているだけだった。そしてこの人も過去の遺物だ。
「‥‥志穂?あなたは‥‥誰?」
これは過去との対面であって過去どうしの思い出ではないはずだ。
マナファナは首を横に振った。
「‥‥私は私です。祖母さんからも母さんからも、いろいろなものを受け継いだけれど。私は私。私は、私の責任を果たすだけ」
そして今度こそ、マナファナ自身の目で彼女を見つめた。彼女はあまりにももろく、儚かった。
「‥‥もぅいい。もぅいいから、‥‥」




