1.
そして、今、マナファナは棺の前に立っていた。
小さなものだ。黒い棺。ひとが横になるための形ではなく、膝を抱えて転がり込んだら丁度いいだろうか、という大きさ。それが、人間が世界の為に用意した棺だった。
そして、それは、埋まっていた。
「‥‥え」
覚悟を決めた、はずだった。
なのに、全てを覚悟して覗き込んだその中には、すでに少女が一人、丸まっていた。
「‥‥迷子?」
「いやいやいや。そんなわけないでしょ」
そんなわけがないことくらいマナファナにだって分かっている。
だがしかし、理解ができなかった。
ここは、どこだ。御柱の地。かつて血のように赤い光の柱が空へと駆け登った地。そしてそれから100年、誰ひとりとして棺には辿り着けなかったはずだ、剣を持たないものの前に棺は姿を見せない。
「‥‥まさか」
棺は地面に半ばめり込んでいて、覗き込むその内部は、荒野の強い光に慣れた目には暗く、よく見えない。
それでも飛び込む勇気はなくしてしまって、マナファナは縁に手をかけて覗き込んだ。少女を注視する。その姿は。
「‥‥つぶ、さ‥‥?」
受け継いだ祖母の記憶。その中で、現在では考えられないほどの人数の子供たちが集っていた光景を思い出す。皆同じ格好をしていた、その風景。全体に彩りに欠けた光景なのに、何故かどこか彼ら彼女らは華やいで見えた。そんな記憶。
それと同じものを、丸まった少女は身に着けていた。
「‥‥つぶさ、どうして‥‥?」
「‥‥ン」
棺が地上に再び現れたときからすでに目覚めは始まっていたのだろう。けれどもマナファナの声に反応するように、彼女は身じろぎした。
「‥‥つぶさ!」
「‥‥志‥‥穂‥‥?」
ぼんやりと彼女は覚醒し、薄暗い中緩慢に振り返り、
そして目が合った。




