12.
奪いに押し入ることを、今更マナファナはためらわなかった。邪魔する者を排除することを、それ以上にソノリアはためらわなかった。
血路だな、とマナファナは思った。
「マナファナ、寝てていいよ」
あれから3軒の家に押し入って、それと同じだけ住民を黙らせて、2人はその町を後にした。止める者は多かったが止められるものはいなかった。だが、ついてこないとは言い切れない、油断すれば連れて行かれるかもしれない。
それなのに焚火の向こうでソノリアは柔らかく微笑んだ。
魔のものがある以上、焚火を絶やすわけにはいかない。それ以上に自分たちの所業から、油断して眠りこけるわけにはいかないことは分かっているのに、ソノリアは当たり前のように眠ってしまえと言った。それは身体だけを無理やり休める浅い眠りのことではなくて、こんなに目立つ目印の傍で、きちんと休んでしまえと言うのだ。
「‥‥そんなわけにいくか」
「大丈夫よ。僕がマナファナを損なわせるわけ、ないでしょう」
確かに、身も心も疲れていた。それに、彼が自分を奪うものを切り捨てることに、ためらいなどかけらも持ち合わせていないことはすでに分かっていた。それでも、
「‥‥寝られるわけがないだろう」
マナファナは呟いたが、結局、眠りはきちんと訪れた。
「‥‥」
まどろみの中、苦笑する。
(そんなに思い出したかったのか‥‥)
苦笑はいとも簡単に自嘲に変わる。ふと見ると、炎が大分小さい。毛布ごと抜け出して、とりあえず木を一本突っ込む。
「‥‥」
少し考えてしばらくは眠るのをやめる。
まるで思い出のような夢を見たあとは、すぐには寝ない方がいい。思い出のような夢は思い出だけれど、そのすぐ後に見る夢は、醜悪な悪夢が多い。
「‥‥」
少し大きくなった炎を見ながら大きく息をつく。毛布を引っ張りなおしてしっかり包まる。このあとに見る夢の想像はついた。
「‥‥テヘト‥‥」
あの男。兄のようだと思っていた。
しかしその割には、自分の声に憎しみがこもっていないことに驚いた。これはソノリアに心配されても仕方ないかもしれない。思った以上に、自分のことはどうでもいいらしい。そういえばそのソノリアはどこだろう、と見回して、手は届かないがすぐさま駆け付けられる位置で毛布に包まっているのを見つけた。マナファナの動きに気付いているのか、気付いているのだろうけれど、反応しないでくれることに安堵した。
目を閉じる。息を吸い、目を開ける。
思い出そう。夢に見せられるよりは、はるかにマシだと思った。




