第9話 ~最低だこいつ~
うわ、書いてたらヘタレどころか屑になったよこいつ。サブタイトルも変わるほどに。
もしかして、聞こえたのは彼女の“真名”だろうか。エルフは本当の名前を知られてはいけないはずだ。……知られたら、その相手に全て束縛されることになる。
「忘れま――」
「何をしてもいいよ」
間髪を入れずにまっすぐな声が届けられる。風に揺られてカサカサと草たちが音を奏でた。
「忘れます」
有無を言わせず、アルマさんの手を振りほどいた。何歩か前に歩き、目の前の景色を眺める。抜けるような青空だ。
「なんで。どうして」
「本気で好きになってしまうから」
そのまま俺は去った。その後に彼女の発した言葉を知るのはもっと後になる。
「……絶対に諦めないから」
茶肌黒髪鳥目のソンは、死臭が漂い始めた戦場ですぐに見つかった。
「貴族連合軍は壊滅しました」
「……そうか」
ソンが細い目をさらに細くして笑う。
「何か有りましたね。いつもの痴話げんかですか」
相変わらず、心の機微に敏いなソン。
「ああ。放っといてくれ」
「駄目ですよ。あの人がいないときの学長は本当に怖いですから」
「いいから、さっさと撤退の支度をしてくれ」
「はいはい」
この後、アルマさんとは一言も口をきかなかった。
凱旋して城に入ると、祝宴が用意されていた。城の庭での立食だ。晴れていて良かったな。召集した農兵たちも嬉しそうだ。略奪を禁じたから、欲求不満がたまっていたんだろう。
「遅かったな、シュウ」
宮殿に入ると、皇帝自ら出迎えてきた。謁見の間に入る前に、紫と金のギラギラした服を纏って出迎えだ。こいつアホか。
「皇帝が出迎えてどうする」
「少しは敬意を払っておこうかと思ってな。ついてきてくれ」
エドについて空の見える質素な室内へ行くと、酒とともに食事が用意されていた。
「まぁ、飲んでくれ」
「いいだろう」
「お疲れさん」
「そっちもな」
「これまでの半分未満の騎兵でやつらを抑えるのも大変だったぞ」
「補助部隊は全部そっちに回しただろうが」
キンとグラスをぶつけて乾杯する。酒を一気に飲み干すと、
「ゲホゲホ」
むせた。にやりと笑うエド。
「どうした?」
「待てこれ、80度はあるだろ」
もはやただのアルコールだろこれ。
「次は、国の南部をアドリア王国から取り戻してもらう仕事にかかるからな。」
そうでしたね。次は南の国との全面戦争ですね。
「アドリアの部隊は傭兵が多い。金バラまけば後は兵力が半減する」
「戦力は別だろう。あっちは装備のいい諸兵科連合で来るぞ。以前のこっちと違って」
エドに酒を注ぐ。
「なら、傭兵を味方につければいい」
エドが酒を注ぐ。
「うん。宰相に任せる」
エドに酒を注ぐ。
「お前、そればっかだな」
エドが酒を注ぐ。
「楽だからな」
酔いが回ってきた。
「やつらの本国とは海で隔てられている。補給を潰せばその“いい装備”をタダ取りだ」
「海上ではやつらに対抗できないぞ」
「簡単だ。何とかできる。それより、つまみは無いのか」
「まだ食う気か!」
酒瓶がすでに1本開いた。
「腹が減ったんだ」
目が舞わ~ル。
「貴様、アルマと何かあったのか」
未だ空になっていないエドのグラスを一杯にする。
「それがどうした」
俺も一気に酒を飲み干す。
「やれやれだ」
「ため息なんてつくんじゃなぇ! このおんなったらしゅいが!」
「貴様でも酔っぱらうことはあるんだな」
「知らない天井だ」
頭痛がする。飲み過ぎたらしい。
「まさか裸で寝るなんて」
どれだけ飲んだんンだ。それにしても、このいい香りには覚えがある。隣を見ると、隣を見……。隣があるだと。しばらく無言になる。掛け布団が人の形に膨らんでいるのは理解できる。そして何か柔らかいものを触っているのも理解できる。
「まだ酔ってるのか、俺は」
いやいやいやいや、覚えがないよ。隣に居るのは誰?手を慌てて離す。
「うぅん」
女だ。男じゃないことにほっとした。最後に覚えているのはエドと一緒だったものですから。……いやむしろダメじゃないか。覚えてないとか有り得ないでしょう。
「ふー」
深呼吸だ。深呼吸してから。よいしょっと掛け布団をめくった……。すべすべの白い肌が見えるし、感じる。裸のアルマさんが居る。夢か。そうか。寝よう。俺はベッドにもぐりこ――
「んん、ぉはようございます」
アルマさんが起きた。この状況に驚いて離れ……ない。
「おはようございます。」
くっついたまんまだ。
「ぇっ……しますか?」
桃色の顔をして小声で聞かれた。確かに可愛いが、それよりも頭が痛い。声も裏返る。
「ま、また今度にしませんか?」
無言のまま二人で着替えて、別々に部屋を出た。
「で、エド、どうしたらいい」
濃いコーヒーと紅茶を前にして、エドと温室で話し合う。
「人のこと言えないな。心の奥では、もう覚悟を決めてたんだろう。素直になれよ」
何でもないと言う表情と雰囲気の中であっさりと言い切るエド。
「それが……全部記憶にないんだ」
エドのニヤケ顔が引きつる。
「最低だな」
「……」
何も言い返せません。花咲き誇り光満ちる温室が真っ暗だ。
「まさか本人にそれを――」
「言って無いぞ」
「なら取り敢えずはいい。本題に入ろう」
「良くない」
「大丈夫だ。そんなに深刻に考えすぎるな。貴様の悪い癖だぞ」
アドリア王国に奪われた南の海岸地帯を奪い返す。現在、状況としては悪くない。武芸場から引き抜いて来た各兵科混成部隊100人と、農兵8000、重装騎兵の鎧を外して動きやすくした胸甲騎兵1000、魔法兵100人だ。傭兵は、今後の帝国軍の設立を考えると、雇う気にならない。問題はアドリアの兵力だが、まだ調べがついていない。主に傭兵部隊のせいだ。
「で、宰相殿が行かれると言うわけか」
「だめか」
「ダメじゃないが、他に適任が居るだろう」
「指揮を執るのは間違いなく俺だ。この目で見たい」
「ま、いいだろう。アルマを悲しませるなよ」
肩をポンポンと叩かれた。ところで、
「この間から気になっているんだが、アルマさんを何時から呼び捨てにしている」
のかが、とても気になる。
「聞きたいか」
これ以上ないって程の“ドヤ顔”をされると、怖くてかえって聞けない。
「い、いや、やっぱりいいや……」
「ハァ。このヘタレが」
1週間後、アドリア王国の拠点兵力と、即座に動員可能な兵力を把握した。時を同じくして、ひそかに動員していた兵力を率いて戦いに赴く。貴族達には、農民兵を率いて戦う“軍”の概念は無い様だったため、前回の戦闘でほとんど士官たちに消耗はない。そのため、農民や部隊を率いる指揮官に不足はない。むしろ多いぐらいだ。この戦いに勝ち、招集できる兵が増えれば、彼らが存分に手腕を振るえるだろう。この戦いが、その天王山だ。そのための軍議を天幕の中で始める。
「目標とするのは敵軍の撃滅だ。各指揮官は可能な限りアドリア兵を殺してくれ。略奪をしている暇はないぞ」
魔法部隊を指揮する、俺以外で最も若いフィアが睨みながら異議をぶつけてくる。
「捕虜は」
「不要だ」
フィアが掴みかかろうとしたが、ボルゴノフさんに止められて空中に浮かぶ。
「まで、仲間同士の暴力はダメだぁ」
「うるさい! シュウ! アンタ! そんなに人間を殺したいの!」
「……」
「そこまで殺さなくてもいいじゃない! 私の友達だってお父さんが……」
そこまで言ったところで嗚咽が漏れる。
「フィア、命令に従えないなら指揮官を解任する」
「いいわよ! やってやるわよ! だって――」
泣き叫び、“そこまで言ったところで静かになる。
「だって……何だ?」
天使の代わりに悪魔が場を静かにした。そして、答えが投げ返された。
「必要なんでしょう」
俺は顔の表情を崩さずに答える。
「必要だ」
涙を流したまま「わかった」と言われても、俺にはどうすることもできないよ。ごめんなさい。
「続けるぞ。基本的には農兵達を中心に置いた戦列を――」
10分後、軍議が終了した。貴族達の重装騎兵の戦闘法には“作戦”と言う単語が欠落していたから、向こうも驚くだろう。だからこそ、一回で壊滅的な損害を与える必要がある。
「“兵は鈍足を尊ぶ”だな」
天幕の中が苦笑に包まれた。
目的地とする港に近い平原に出た時、すでに、焦らしに焦らされたアドリア侵攻軍一万人が展開しているのが確認できた。本当に侵攻軍全軍を持ってきたようだ。こちらが農兵を限界まで徴集して見た目の軍勢を膨らませたことへの警戒もあるはずだ。それにしても報告は受けていたが、各種兵科が見事に兵法にかなった状態で配置されているのは壮観なものだ。前方中央に弓兵が置かれ、その後ろに騎兵が間隔を空けて横一列に並んでいる。その後ろに重歩兵が密集隊形で並び、案の定こちらに投石機が無いのを見越していたことを語っている。こちらに戦略予備が無い事を掴んで全軍をこの戦場に投入していることからも、相手の情報力はこの時代の水準以上であることがうかがえる。さすがは海上交易国家アドリアといったところか。情報の意義を知っているようだ。右翼には傭兵隊が配置され、左翼には上陸した海軍が位置している。
「戦列展開!」
俺の傍に侍っていた伝令が各部隊に走らせる。
「1手」
展開の隙を狙って敵の弓兵が矢を飛ばしてきたが、前列に居る魔法部隊が逆風を起こして矢が届かないようにする。魔法が途切れた機を逃さず、騎兵隊500を先頭にして風のように突っ込んできた。アドリアの騎兵隊は他国よりも装甲部分が少なく、その分高速である。さらに特徴的なのは、彼らが小型ながら弓を用いていることだ。強い力の要る弓で、精鋭部隊でしか有効に用いることができない。そして、騎兵に不足している防御力と衝撃力は、重装歩兵が担っている。
「投擲部隊用意!」
中をくり抜いた南瓜に紐を付け、火薬と油に浸した布を詰めた物が準備される。カボチャの周りには小さい石片が刺さっている。
「騎兵隊突撃準備!」
敵の騎兵隊が距離を詰め、その後ろから地面を揺らしつつ重歩兵隊が歩いて接近してくる。
「まだだ――まだ――まだ――――」
目標位置まで後100メートル、50メートル、20……
「着火して投擲!」
アホな挑発の言葉が書かれた南瓜が宙を舞って――敵騎兵隊のあちこちに落下して爆発した。たいした損害は与えられないが、それでも馬は音と爆風に驚いて跳ねまわる。本来は戦象対策だが、この際効果があれば何でもいい。
「俺に続けー!」
作戦通りの動きだ。混乱した中央正面の騎兵隊に向かって、右翼前方に位置していたヴェイド・ウルフ率いる騎兵隊200騎が流れるように突撃していく。バターをナイフで切り裂くように、アドリア騎兵の群れを切り裂いていく。見事だ。戦場で血飛沫が踊り始める。
「中央軍進撃せよ」
中央軍は農民兵からなる軽歩兵隊4000人を中核とし、後ろにアルマさん率いる1000人程の弓兵が控えている。騎兵を除いて、我が軍の中央軍のみが突出していく。隣で馬に乗るボルゴノフさんが戦場を見渡せる位置からもたらされる報告を持ってきた。
「アドリアの騎兵が壊走しただ。今はヴェイドが追撃していってら」
「2手」
敵の中央重歩兵部隊と味方の中央軽歩兵隊が接触し、戦闘が開始された。不安そうにボルゴノフさんが提案する。
「押されてらぁ。わしが出ますけぇ?」
「まだ不要です。今押し返されても困ります」
「そぅだったなぁ」
中央が押され始めたのに合わせて、右翼の農兵部隊1500、左翼の精鋭部隊100と農兵部隊500を前進させる。中央が押されて戦線が直線状になり、さらに押されて凹型になる。左翼農兵部隊はソンが率いているせいで歴戦の傭兵部隊をやや圧し、右翼の混成部隊600は問題なく上陸した海軍を圧倒している。だが、敵中央軍も後方の魔法部隊を中央に投入してきたため、中央軍を突破しそうな勢いだ。分断されればこちらの負けだ。
「どこまで行ったんだヴェイドは」
顔には出さないが、騎兵が戻ってこないことに焦る。もう長くは持たない。
「弓兵隊に側面を進ませて敵後背に移動させろ。魔法部隊はまだか」
じりじりと焦燥感に苛まれる。別働隊として動かした魔法部隊も、予定より遅い。ボルゴノフさんが中央の戦場に飛び出していく。
「ちょっと行ってくるだ」
「お願いします」
それと時を同じくして港の方から火の手が上がった。
「間に合ったか」
安堵のため息が漏れた。戦場の後方に位置する拠点での異変が、アドリア兵へ動揺を与える。そこには妻子や物資、さらには退路となる軍船が存在する。アドリアの傭兵部隊は明らかな撤退を始めた。そっちは無視だ。
「ヴェイドもやっと来たか」
ヴェイド率いる胸甲騎兵隊も戦場にたどり着いた。騎兵はそのまま未だに粘る敵左翼の海軍部隊に突撃して敗走させた。騎兵隊はそのまま後方をなめるように移動して弓兵隊とともに敵中央軍の後ろに回った。これで、アドリアの主力である重歩兵隊5000は、前方を中央軍、左方を右翼精鋭部隊、右方をソン率いる左翼部隊、後方を騎兵と弓兵に囲まれた。
「ふぅ」
包囲が何とか完成した。後……半分だ。
「皆殺しにせよ」
ぎゅうぎゅうに詰められた隊列によって、部隊の方向転換も指揮も困難となったアドリア軍に対して、一方的な虐殺が始まった。一方、逃げた海軍部隊は武装商船を燃やされて逃げ場がない。港でフィア率いる魔法部隊を中核とした部隊によって、一方的に殺されていった……はずだ。死体の確認はしていないので、彼女が殺したかどうかは解らない。凱旋時に捕虜は取っていなかった。
戦場にアドリアの兵5000人の血で池ができた。さらに困ったことに、ボルゴノフさんが敵の中央軍司令官を生きたまま捕らえてきた。本当に困る。命乞いをする司令官に対し、
「王に今度はこちらの番だと伝えろ。“さっさと降伏しろ”ともな」
アドリアの王タリが降伏するかしないか、確率は半々だ。向こうは食糧生産量が少ない。これだけの損失を受ければ降伏してくれるかもしれない。
「ボルゴノフさん、申し訳ありませんが一人で酒を飲みたいので――」
アドリア王国のオシウス半島を手に入れれば、東西交易に欠かせない内海マクレジヤ―外海セデエルクの出入り口、メレディス海峡を支配できる。
「たかがそのために5200人の死者か」
海軍の増強が急務となるが、交易のみならず近年勢力を伸ばしている唯一神教皇庁のある聖ヨーク島、聖サウロ島の制海権も手に入る。
「作戦は上手く行った。死神に乾杯!」
日干しにまでする必要はないだろうが、必要とあれば……。
「たったの5200人位、あれ? 正確には何人だ? しらねぇや」
これで王権神授に対して圧力をかけられ、教権に対して優位に立てる。
「現在の涙と命で、未来の繁栄と生命を買う。この比率なら結構お買い得かな」
何が善で何が悪なんだか解らない。そして、そのためにこれからも多くの犠牲を――
「シュウ?」
振りかえるとフィアさんの顔が見れた。
「一緒に飲りませんか」
「え! いえ、あの、それはまた今度にして下さい」
「では何をしに来たんデースか?」
ダジャレのなり損ねだよ。ダメだこいつ。早く何とかしないと。飲んでも飲んでも頭の一部がどこか冷静で、それに苛立つ。酔いたい。
「ごめんなさい。その、アドリアの人たちを殺さずに捕らえてあるんだけど」
「いいですよー。命令の出所は陛下ってことにしておいてくれればー」
ヒック。それならまぁ許容範囲でしょう。
「ちょっと! ぐでんぐでんじゃないの!」
「あぁ? フィアさん、丁度いい所に。この間教えてもらった曲ですが俺は弦楽器は――」
呂律が回ってないのが何とか自覚できる。
「アルマの言うとおり、そうっとうに無理してたわね。シュウ、あまり深刻に考えない方がいいわよ。それと、お酒はそこまで!」
腕組みしたまま呆れたように言わなくてもいいじゃないか。それと、酒瓶返して! 返してくれないなら、日頃扇情してくる仕返しに、体で返してもらっちゃうぞ。
「すみません。今はうにゃにゃ必要にゃので」
「何を言って――きゃっ」
このままフィアさんを抱き占めて寝ようか。良い香りがするし柔らかいし暖かい。最後のそれは、今までで数回しか感じたことがない。それに、奇妙な感じがする。
「胸の谷間すべすべだ」
「ぁ」
セクハラだ。エドに殺されるなこれは。
「肌に弾力もある」
「んん!」
だめだ。アルマさんのことを――あれ、別に良いのかな。俺は所詮虐殺者だ。別に何をしたって気にされないさ。どうせ叶わないなら、もうどうだっていいや。
「あれー? ここでそんな声出すとまずいですよー」
調子乗ってもはやセクハラ超越してるよ。早く俺、燃やされろ。そして死ね。
「フィアさんの顔真っ赤だ。いつもはカッコいいとか綺麗とかだけど、今はとっても可愛い」
もう一口、瓶奪い返して直接飲む。喉が焼けるようだ。燃えろ燃えろ。全部灰になれ。滅びの画家の絵みたいになれ。
「あぅ。その、次は声我慢するから。続きをしても(ごにょごにょ)」
アルマさんの事を考えながらフィアさんに慰めを求める自分も嫌いだ。
「汗も良い香りですね」
鬱になってきた。あ、すでに鬱か。
「一日中嗅いでてもいいですか」
それに、怖い。死に対して感じなくなる、誰かの死を決めても何も感じなくなる自分が怖い。
「…………どうぞ」
死をただの数字としてとらえる自分が怖い。それを楽しむ自分が怖い。
「助けて。嫌だ。誰か俺を――」
フィアさんを掻き抱く。
「あっ、ちょっと! いきなりどうひゃん! ちょっと――」
アルマさんの顔を思い出しながら、フィアさんの体と、心の闇の中へ堕ちていく。いやだ。まだ堕ちたくない。
「あれ? どうしたの? ちょっと! こんな中途半端な状態でやめ――」
フィアさんに怒られながらも、体を離し、剣を取って自分の心臓の辺りに突きたてる。
「え?」
俺も血を流し、その血がきちんと赤かったことに満足した。女の悲鳴がうるさい。今は寝かせてくれよ。休みたいんだ。
05152012だめだこいつ。早く何とかしないと。