表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/21

第8話 ~軍師というかもう指揮しています~

5/10 とにかく書きました。見直しはおいおいやっていきます。

5/13 見直しをしています。

 商売で得た資金を元に貧民への救済を行い、評判を上げた。治水事業にも手を出した。おかげで河川の利権も手に入った。この国を含む周辺国では水車が普及し、農業も3圃方が行われているために、水利権は生産活動全体に重要な役割を果たしている。さらに、当初の目的である学問所、武芸場を建てた。人材、集まるだろうか。


 200人ほど集った。集まった中で最も武に優れた人間は、ドワーフのボルゴノフさんです。ドワーフは背が低いのが普通ですが、この人はおよそ192センチメートル、体重150ポンドの巨体。ただのバーサーカーに近い暴れっぷりで、皇子エド普通まともに思えるほどだ。他にも馬も騎兵も自在に操る、遠い南東の国で遊牧民をしていたというヴェイド・ウルフがずば抜けた物を持っている。本当は匪賊でもやってたんじゃないかと思う言動だが、前歴は気にしない方針なので詳しくは聞いていない。むしろ、この国に仕官しないのは、この国では重装騎兵とんでもなくかたいだけで戦闘が行われる傾向にあるため、あまり用いられないからだと憶測することにしている。魔法と、錬金魔法なら、超がつく美形のウリウス兄弟ブラザーズだ。儚げな雰囲気と整い過ぎた優しいマスクと若干の“アッー”な言動で、10人中10人が振りかえる。……男女問わず。何度襲われかけていたことか。そしてどっちがどっちか俺には解らん。どっちがデイル・ウリウスで、どっちがテイル・ウリウスなのか。名前にも両親さくしゃ悪意じごうじとくがうかがえる。とにかく、ほぼ全ての魔法を用いることのできる変態だ。ボルゴノフさんを含めて全員返り討ちにあったが。学問所では俺を除くと、額にもう一つの目を持つ三眼族で年増の女性である、フィリッポス女史が最も外交と経済に強い。それに酒と喧嘩にも強い。ただ時々、私の第3の目が疼く等と額当てをしながら言っているため、明らかな不審者となっている。もう一人、達人の領域には達していないが、農業と兵法に詳しいソン・アヴァリスが居る。この連中が、俺が目を付け、特に優遇している連中だ。それにしても、集まったやつらには女も含めて癖があるのが多い。そういうあぶれ者を集めたのは俺だが、さすがに対応に苦労した。唯一の救いはアルマさんだ。彼女がほとんど常に一緒にいてくれるので、心労は一瞬で解消される。本当にいつもありがとう。

「アルマさんに好きな人ができたら……頑張って応援しますね」

俺は笑った。笑ったんだ。別に笑顔が引きつってなんかいない。アルマさんも笑顔になったからきっと大丈夫。大丈夫なんだ!

「今日はシュウ様の調子が悪そうなので、添い寝いたします」

怖いくらいの笑顔でそんなことを言われたら、俺の理性の方が大丈夫じゃないです。

「あ――」

「します」

「はい」

……結局添い寝をされた。「ぅんっ」とか言いながら、俺に抱きついてもぞもぞするのはやめてくれ。離れようとしたのに胸を揉んでしまって、危うくR18指定をかけなければいけない所だったじゃないか。なんなんだ、あのハリと弾力は。どうせヘタレな俺は何もしなかったけどな! 

「……というわけで、仕官していただけないだろうか」

その翌日に仕官の誘いがきた。

「その流れからどうしてそうなる」

「は?」

「……いえ、なんでもありません。失礼しました」

俺も何を言ったのか解らなかったが、それは置いておこう。仕官は未だだ。未だ動かん。それに、その期でもない。

「代わりに、他の人間を推します。そちらも戦争で人材が不足しているでしょう」

俺よりも先に他の人材を推して、仕官してもらう。これにより、いきなり俺が影響力を振るう地位についても、反発をある程度抑え込める。貴族たちの御家芸である、派閥と言うやつだ。ただ、みぶんではなく、義理と実力でつながっているため、貴族連中はかなり介入しにくいだろう。一番の問題は俺以上のやつがいる場合、そいつがどうするか解らないことだ。

「解りました。今日はこれであきらめましょう」

たびたび来る勧誘を蹴り続けた。その間に、

「こ、国王が死んだ!」

息を切らして飛び込んできたのは自称遊牧民ヴェイド・ウルフだった。情報を持ってくるのも、精悍な見た目と同じ速さだ。

「予想より早いが、そう騒ぐな」

ともかく皇帝は死んだ皇帝となった。殺されたのだろうが、病死だろうが、とにかく後の話を無視した。

「ボルゴノフさん、」

前皇帝は元老院議員を主とした貴族を、暗殺や謀略により支配コントロールしていた。そしてエドワードの性格上、貴族たちの反動を粉砕し、皇帝の支配力を強める必要から、皇帝エドワード1世は自派閥を形成する必要に迫られる。そして、人材が多くそろい、信頼でき、貴族にも関係していない連中である、“俺達”が呼ばれる可能性はとても高い。特に、それをまとめる俺は、絶対に引き込まなくてはならない。必要とせざるを得ないのだ。さて、議会図書館に本でも読みに行くか。

「よう、またここで本を読んでいるのか」

俺が本を読み終わるまで待ってから、侍女も貴族も引きつれた状態のまま、即位して皇帝となったエドワードは話しかけてきた。

――こいつ、最大限に尊重してこき使う気だな――

「ああ、またお前の隣に立てて嬉しいよ」

――こいつ、最高値で自分を売りつけてきたよ――

二人とも相手の考えが手に取るように読める。どっちもここまで相手の手を読んで、それでも相手の策にはまりつつ、互いに完全に独立して行動した。そして、皇帝陛下エドワードが人払いをかけてから、

「「ぶっ!」」

真面目シリアスな場面にこらえきれずに二人して噴き出した。こうして、俺は帝国宰相の位に就き、皇帝エドの元で手腕を振るうことになった。「宰相は他の人間にしたらどうだ」と何人か候補を挙げたが、「全体を見るのに貴様以上の人間は居ない」と言われた。現状をよく解っているじゃねぇか。これだから隣に立つのをやめられないんだ。当面は人事を発表しなくてはいけない。エドは、俺に丸投げする気満々でほったらかしていた。


宰相:シュウ・トレヴィル(兼務)

人事指名権を持つ。さらに、皇帝の命令が優先だが、各相に対して指示を与えられる。また皇帝の認証の元、皇帝の全権代理として行動ができる。俺の場合事実上のフリーハンドを与えられている。

副宰相:ボルゴノフさん(これでも敬称略だと初めて知った。“さん”は名字だそうです。)

俺のいない時の代理だが、皇帝の代理にはなれず、あくまでも宰相代理止まり。ただ間違いなく仕事はないので、俺の護衛をしてもらうことにした。

内務相:ローガン・レンクス(地味すぎる貴族様。24時間営業で作法に従っているらしい。)

皇室の財産や儀式の管理をする。さらに、貴族身分の認定も行う。

教育相:シュウ・トレヴィル(兼務)

まだ各地の宗教施設でお情け程度に宗教以外の知識を覚えられる現状を打破する。そのために、各地に6年制の学問所を建てる。義務教育制度の完成を目指す。12歳ぐらいまでは労働力としてもたいしたことは無いから、反発は低いだろう。食事も給食制度によって1食タダになるし。栄養価の最低水準を上げられる効果も期待できる。基本的な文字と文章、知識を覚えさせることで、国の生産、軍事力は倍加する。他にも理由はあるが、何より将来得られる人材の水準が上昇する。俺が爺さんになる頃までにはモノになるだろう。

農業相:ソン・アヴァリス

食糧生産は国の基本。それを管理する。金額ベースにして食糧生産を計算していたのを改めさせるという、商人にとっては有り難くない仕事を行う。

生産相:フィリッポス(名字はなぜか教えてくれない)

国内の農業生産以外の生産を統括する、接待や賄賂の取りやすい旨味のある仕事を担当する。人材が腐りやすい為、優秀な人を配置すること必須。他に、魔法相、科学相、軍事相と共同で国内の武器生産と開発を管理する仕事がある。

資産相:シュウ・トレヴィル(兼務)

税の出納を管理する。俺が兼任する。この人が無理かねがないと言えばその仕事は止まる。

外交相:アルマ(本人以外エルフの真名は知らない)

面従腹背、八方美人の人材を捜索中。外国との交渉を担当する。

治安相:ヴェイド・ウルフ

名前の通り、治安維持を担当する。

軍事相: シュウ・トレヴィル(兼務)

軍隊の維持と運用を行う暴力機関で、現状では貴族たちが影響力を及ぼす原因となっている。理由については後で記載する。他に、魔法相、生産相、科学相と共同で国内の武器生産と開発を管理する仕事がある。

魔法相:デイル・ウリウス……ですよね

その名の通り、魔法学を体系化させる仕事を担当する。これまでがあまりにも神秘主義すぎ、発展が遅れる原因となっていた。他に、科学相、生産相、軍事相と共同で国内の武器生産と開発を管理する仕事がある。

練金相:テイル・ウリウス……のはずだ

魔法と神学の神秘主義のせいで発展の遅れた技魔法や、国内のあちこちで独占されている技魔法を分析、明確化していくという気の長い仕事をする。他に、魔法相、生産相、軍事相と共同で国内の武器生産と開発を管理する仕事がある。

法律相:シュウ・トレヴィル(兼務)

制定、廃止した法律を明確化させ、文字も知らない国民達に普及させるという、難儀な仕事をする。新設した。

宗教相:皇帝直属おれはおてあげ

国内の宗教を認め、監視する機関で、新たに新設した。宗教は世俗権力より下なのかと反発が予想される大変厄介な役職だ。その後も宗教が国を左右できないようにする、トンデモ役職。暗殺されないか心配だ。

芸法相 廃止

国内の芸法……?を認定する?とかいうよく解らない仕事をしていたので、廃止した。あからさまに言うと、ひいきの魔法家に税金から金を与えないように廃止した。魔法に金がかかり過ぎると生産に影響が出るので、政治的には別に無くても困らない。

諫言相:フィアー・レッドフィールド

事実上組織を持たない無任所の役職で、皇帝、各相、民衆、果ては元老院にまで、公式に苦言を呈することのできる新設の役職。ただ問題は諫言するだけで強制力がないため、世論を味方につけられる、真っ正直な、清廉潔白の人物が就く必要がある。

ざっとこんなところか。


以上とは別に、立法を司り、各相に助言を行える機関として、貴族たちや金持ちが牛耳る元老院が存在する。無いと国内情勢が一気に変わる一種の安定剤だが、放っておくと腐るので、時々は人物を一掃したいところ。人材を確保している現状では、ただの改革の邪魔で、敵対は確実だ。この人事を元老院で公表した後、ほとんどの貴族たちが反乱を起こすだろう。

「さて、俺の腕の見せ所だ」

貴族討伐に張りきる俺に、

「……俺も行けるんだよな」

皇帝エドは解りきっていることを聞く。悪あがきだ。本人の体力に20%のダメージだったか。

「……ダメに決まっているだろう」

皇帝が内戦の現場に出て来ては、戦争中のアドリア王国に浸けこめる隙があると印象を抱かせてしまう。それに、覇権を握りたければ、当の本人こうていは王道を進まなければならない。覇道は俺が担当する。覇道と王道の区別もつかない子供ガキじゃない歳だろうに。ただ、その後唐突に発せられた言葉は、本来俺が言うべきものだった。

「元老院を解散する」

「……そうだな」

当面は権力の一極集中を目指す。現在この国でよく知られている国家は、この国を含んで8つある。各国では言葉も文化も文字も通貨も住む民族も違う。それぞれが時に連合し、時に敵対しあって、戦争が繰り返されている。これを何とかしたい。そのためには、各民族の反発を法律の元に統治するための、無理を押しとおす圧倒的な強制力けんりょくが必要になる。

「他には」

「宰相に任せる」

「ああ、そうかよ」

そのために、官吏登用制度を整える必要がある。各制度の無理のない改革と、人材育成と各地の道路網の整備と重さや長さに用いる単位の統一……皇帝エドよ、俺に死ねと言うのか。いくら大体考えていることが解ると言っても、「宰相に任せる」って、丸投げは無いだろう。まぁ、過労死する前に、叛乱貴族をたたきつぶすのが先決だ。


この時代、貴族が力を持つ理由は、知識水準よりも、彼らによって構成される重騎兵に有る。彼ら曰く「唯一神に仕える騎士は文盲がよい」のだそうだ。重装騎兵は頑丈で強固な鉄の鎧を身に付け、同じく鎧をまとった馬にまたがって小走り程度の速度で突進して行く兵科だ。特徴は頑強な防御力だ。魔法は弾かれ、ほとんどの武器が有効な打撃を与えられない。効かないわけではないが、ほとんど効かない。さらに、投石機をよける機動力はある。当然金がかかるので、金をかけられる貴族たちしか構成できない。他の兵科がほとんど無効化されるために重装騎兵のみで、つまり軍事力はほとんど貴族のみで構成されている。この付近の国では、戦争と言えばほとんど貴族の重装騎兵同士のぶつかり合いだ。装甲が分厚いためになかなか死なない。そのおかげか、貴族は殺さずに身代金を取る、戦争とは思えない騎士道精神が生まれた。

「なぁ、皇帝」

「なんだ宰相」

「お前はどこまで行きたい?」

「地の果てまで行きたい」

こいつ、どこの英雄だよ。

「……本当か」

「狭い帝国で父上のようにこそこそ立ち回るのは嫌だ……行ける所まで、どこまでも行きたい!」

「そうか……………………解った」

ならば騎士道精神を潰す。自分は殺されないと高をくくっている貴族やつらに、本当の戦争ころしあいというものを見せてやろう。たとえそれが世界征服への道になるとしても。

「ちょっと用事を思い出した」

「俺も行こうか」

「いや、いい。お前は、そこに居てふんぞり返ってろ」

お茶を飲み干して味方として残った貴族達に説明に行く。特にフィアさんに。知り合いも友も大勢いるだろう。

翌日、元老院で、俺が「皇帝陛下のめいにより、元老院を解散する」と宣言した。元老院は大荒れだ。罵詈雑言の嵐だった。確認だが、こいつらは一応支配階級だよな。それにしては言葉が汚いしえげつない。「陛下の権威を嵩にきて」だとか、「そのようなこと伝統に反する」までは良かった。

この「ど○○○が!」や、「貴様の○○を××してくれる」だとか、「一緒に居るあの○○○の××××」は許せない。暗殺しても良かったが、既得権益層の粉砕が目的だから放っておこう。こうして、目の前に貴族連合200騎の重装騎兵が広がることになった。

「あの装備、いくらかかったんだろう」

それに対し、こちらは農民から集めた召集兵中心の800人だ。農民に剣を持たせて沼地を背後にして400人を平原に布陣させる。指揮官?平原に居る方には必要ありません。さらに沼地の奥にある丘に、俺が巨大な弓を持つ大弓兵400人を率いて布陣した。隣に居る灰色頭のヴェイドが敵の陣地を見て、素直な感想を述べる。

「流石に、壮観ですね」

平原に、太陽の光を浴びて銀色に輝く鎧を着た重装騎兵が整列している。

「確かに、壮観だな」

それぞれが各家の紋章をかたどった布を身に付け、旗を持ち、銀色に色彩を加えている。ヴェイドの反対側で弓を持っているアルマは、目の前に広がる極彩色の風景を褒め称えるその言葉に不満なようだ。

「ですがこの戦、勝ちますね」

その通りなんだけどね。賭けごとでもそうだが、人間は賭けに勝っている時は欲を出すものだ。貴族たちが動き出すと、前方に布陣していた農民兵が戦うまでも無く逃げだした。

「前衛が崩壊しましたね」

ヴェイドは冷静に戦場を見ている。

「このまま上手く行くといいけど」

行った。勝利をつかもうと逃げる農兵を追いかけて沼地に入り込み、こちらに向かってきた。弓兵隊に指示を出す。

「構えー!」

エルフのアルマさんが指示し、一斉に400の弓兵が矢をつがえる。全て射程の長い大弓だ。鏃を工夫して貫通力を上げた矢が弓につがえられる。アルマさんに合わせて各部隊は矢を向ける角度を調節する。そして、

「放てー!」

アルマさんの命令で、矢が沼地で動きの鈍い騎兵に向かって放たれた。400本の弓が放物線を描いて前衛の重装騎兵に突き刺さる。ただ、まだ誰も倒れない。さすがの防御力だ。

「第2射よーい!」

ただし、それが足の取られない地形で有れば十分な戦力を発揮したであろう。まさしく彼らは泥沼にはまった。重すぎて動けない騎兵はただの的だ。

「放てー!」


30分後には、一方的に矢で射られ赤ていハリネズミになった彼らは、懸命にこちらが布陣している丘をめがけ突撃しながら、誰一人たどり着けずに一人、また一人と力尽きて行った。重装兵の欠点である、頭の防具のせいで耳が聞こえないから命令が伝わらないことを利用した作戦はうまく運んだ。後退命令が届かない。

「殺戮ですね」

ヴェイドがそんな感想を漏らした。ふと見ると俺以外は暗い顔をしている。なぜか戦場について来たフィリッポス女史に至っては吐いている。見た所、半数が死に、残りの全てが負傷している。目の前に赤で彩られた重装騎兵たちがのたうち、突破してきた騎兵によって首がもがれた農民の死体が放置されている。

「後はこちらの騎兵隊に任せる」

そんな戦場を参謀のソンに任せ、俺は指揮場所を離れた。

「少し、いいですか」

アルマさんを人気の無い所へと誘う。

「アルマさんは、素敵な人です。誰にでも優しくて、誰もが笑顔になれる」

「そんなことありません」

アルマさんに背を向けたまま話を続ける。

「今だって彼らのために泣いてるじゃないですか」

「それは……誰でも、人が死んだら悲しいでしょう」

「いいえ……この惨状を見ても、指示したのは俺なのに、死んだのは俺のせいなのに、涙ひとつ流せない。冷酷な命令も今後下していきます。俺はそうしなくてはいけないし、そうしたいと思うでしょう」

泣きたくても、泣けないのだ。泣くのは、俺以外の誰かの役目だから。上に立つものは泣いてはいけない。感情を表に出すわけにはいかない。

「……」

無言で後ろから抱きしめられた。いつも感じる香と温かさが、いつものように俺を責めさいなむ。

「アルマさんがいてくれたら、俺の半分は人間でいられるかもしれません。でも、その資格はもう無いんです」

アルマさんの手にこもる力が変わるのを感じる。

「……」

「アルマさん、俺はアルマさんが欲しかった。いつも貴女を見ていました。自分の気持ちに嘘をついてきました。ですが、ようやく勇気が出ました。……ひとつ、言わせてください。俺は、貴女あなたが好きです」

「私も、好きです」

もうその言葉だけで十分です。

「でも、間にある壁が、俺にとって厚すぎます」

違う寿命、子供のこと、食べ物の違い、種族間の反感、全てを数え上げることなどできない障害達。

「壁なんて、私には関係ありません」

その上、俺は今後恨まれる行いをすることになる。全体の幸せのために最小の犠牲を選ぶ仕事に携わらなくてはいけない。それが……戦争を終わらせるだろう、世界の果てを見に行く、始皇帝エドワードへの道に関わるということだ。性格も歪んでいくことだろう。様々な誘惑や危険にさらされるだろう。エルフの保守的な暮らしをしてきた彼女には、それは辛すぎるだろう?

「もう……ここまでにしませんか。これ以上、つらくなる前に。俺は貴女あなたそばに居たくない」

いつものように、密着しても二人の間に距離を感じる。飢えを満たそうと強く抱きしめても、その先に進めない……それが俺とアルマさんの関係。沈黙が二人の間に幕を下ろしていく。

「「………………………………………………」」

二人で、しばらくそのままでいた。どのくらい時間が経ったのか、経っていないのか、日が傾き始めていた。傾いた太陽と午後の風に乗って、歌うような言葉が聞こえてきた。

「グゥラ・ウキディウ・ム・パァル・マト・ゥム」

音が心地いい。でも、

「え……今――」

俺の今までの優柔不断は、とんでもない事態を招いてしまったのかもしれない。

「私が、シュウの泣ける場所になります」

囁いた後で俺の耳に口を寄せたまま、アルマさんは返事を待っている。俺は……なんてことを……!!!

戦闘描写を膨らませナイト……orz。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ