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第13話 ~多民族国家へ~

シュウの政策と私生活が混同されました。

世界中の王室の方々はこんな大変さを持っているのでしょうか。そうであれば、それ自体に敬意を払わざるをえません。

「アマゾンの平定、御苦労であった」

アマゾン国の併合までは時間がかかりそうだが、とりあえず属国にすることは成功した。

「それにしても、軍務中に酒を飲むとはいい度胸しているな。宰相」

「これも兵法の妙。彼らが間諜をもう少しうまく扱えていれば結果は変わっていました」

「そうか。ところで宰相殿」

“殿”だと。何をたくらんでいる。

「褒美を出したいのだが、何が良かろう」

は。何を今更。褒美も何もないだろうに。

「今回も死者を出ましたので、褒美は兵たちに出していただきたく――」

「いや。それでは“功に報いる”という原則にもとる」

皇帝エド陛下はしばし考え込んだ顔をしただけで、

「そうだ、明日の日暮れにまたここへまいれ。最高の褒美を用意しよう」

とのたもうた。今は何を貰っても喜べないと思うが、くれるものはもらうか。さて、溜まっている仕事を片付けよう。

「エド、何か変わった事は――」

「ない。今日は明日に備えて早く帰れ」

……。

「ボルゴノフさん、書類の決裁を――」

「陛下が済ませておられました」

……何?

「フィリッポスさん、生産について何か――」

じろり。

「しばらく何もないよ」

そ、そっけないが、この部門で仕事が無いわけがないだろう。

「明日の事を気にした方がいいぞ、青年」

何か血走った眼で気圧けおされたので撤退する。あの危ない兄弟コンビの所ならどっちか何かあるだろ。

「ウリウ――」

「「最近男たちがみんな張り切ってねぇ。暇だよ」」

先読みされた……だと。そして今、どっちがどっちだった?

「そ、そうか」

次だ次。ヴェイドの所へ行くか。

「閣下、今回は遅かったですね。一緒に乗馬でもいかがですか」

「なんで厩舎に居るんだ。まさか――」

「仕事ならありませんよ」

馬鹿な……。ならば副官たちは――

「仕事ならありませんよ」「決裁書類は陛下が片付けられました」「皆頑張ったのですよ」

ちょっと待て、俺の決裁要らないのか。特にアルマさんの抜けた外務関係は混乱していると思っていたが。

「俺は要らない子なの?」

この状況では全く諫言などできないだろうが、一応フィアの所に行ってみる。

「フィーアーさーまーしーごーとーをー」

「うるさい! 帰れ!」

「ご、ごめんなさい」

え、え、え?

「アンタより絶対良い男捕まえるんだから! 捕ま……うぇぇぇぇ」

なんで抱きつくの。何、俺、何かした。心当たりはないぞ。

「だめー。諦められないー。私と逃げてー」

「お、お、落ち着いて下さい」

いったいなんだっていうんだ。おれはこんらんしているぞ。だれかたすけて。

「こうなったら側室の座でも(ぶつぶつ)」

何やら危なげな事をつぶやき始めた魔女フィアから逃亡した。

「なんだってんだ。いったい」

全く仕事が無いだと。有り得ない。この日は1日全く仕事が無く、翌日の謁見に備えて服を借りて終わった。なんて豪華な服なんだ。孤児の食事何日分に当たるんだか。かくして翌日の謁見で、俺はエドからとんでもないものを受け取ることになる。謁見の間に入るなり、

「遅い! 褒美のアルマだ。死んでも大切にしろ」

と言われ、陛下の隣に着飾ったアルマさんが居るような気がするがきっと妄想だろう。他に誰も居ないのはその証拠に違いない。ではさっさとパニックに陥ろう。

「幻覚か。昨日は仕事が休みの夢も見たのか。そろそろ俺も歳かな。それとも今が夢で俺はベッドの上か。どちらにし――」

「そろそろ止まれ」

「ても俺はダメだろう。今あっても顔向けなんてできやしないし――」

「止まれっつってんだろうがああああ!」

玉座をぶっ飛ばして立ち上がるエドの剣幕にさすがに俺も止まる。

「ほら、さっさと誓いの言葉を俺の前で述べて指輪の交換をしてどっちでもいいからお持ち帰りしてしまえチキショー。なんで独身の俺がやらなきゃいかんのだアホらしい抜け駆けくそ大馬鹿変態野郎め」

「後半は俺に対する悪口だな」

「いいからさっさとこっちに来いやぼけぇ!」

「お、おうよ」

アルマさんは透けるように白いドレスで身を包み、頭に綺麗で良い香りのする冠をつけている。身につけているものは白で固められている。香りについてはアルマさんから香るものなのか、定かではない。久しぶりに見てその神々しい美しさに見ほれてしまい、いつもの話し方も忘れた。

「あ、あの――」

何を言えばいいのか。

「ただ今戻りました」

そう言ってほほ笑むアルマさん。

「はっ、はいい」

目が泳ぐ俺。

「落ち着けシュウ」

あきれるエド。

「今回の件はな、俺と北国ティルグラフトのエルフたちが企んだ芝居で、両国とエルフ=ヒトの友好の為に『結婚しない』とか言いだした2人を――」

「アルマさん、結婚してください」

俺は目の前の大切な人に必死で聞いちゃいなかった。

「はい。喜んで」

アルマさんも聞いちゃいなかった。

「お、お前ら俺を無視して手に手を取り合うとか……俺っていったい……」

エドは泣いていた。

「まぁ……このヘタレが結婚を申し込んだだけでも……良しとしようか。全く納得がいかないが……。あれ、俺って要らない子?」

この後、アルマさんのおじい様によって完璧に準備されていた披露宴で、各国の使者に民族間の友好をアピールした。間違いなく民族に優劣があるというのが国是である神聖アヴァリス帝国が反応してくるだろう。ともかく、地域最強国の宰相が国公認の結婚を行ったことで、バルト国は多民族連合国家への道を歩み始める。さぁ、憲法憲法。法律法律。さっさと整えないとまずい。せめて道徳法でも良いから――

「あのぅ、シュウ……さん」

「え、はい、何でしょうかアルマさん」

とたんに小声になるアルマさん。

「向こうで、ですね、あの、ヒトも食べられる物とか、いろいろと勉強してきました」

こんな状況だけれど、アルマさんが居るのに安心したのか、国事に半分以上頭が行ってしまう悪い癖だ。ともかくこの一件はエドのお手柄だ。俺の受けたダメージは深刻なものであるが。

「あぁ、ええと、ありがとうございます?」

向こうを向いたまま、もっと小声になるアルマさん。

「私のせいでお腹を下さなくても良くなります」

それよりも、向こうを向いていてくれて良かった。話半分でござった。ござった?

「コニウムやベラトラムが食べられないのを知った時は驚きました」

そうなんですか。全部信頼して食べていましたが。

「それで何度食中毒を……」

「生きているから大丈夫ですよ」

申し訳なさそうな顔も可愛い。俺、頭のネジ飛んだよ。

「他にも、お肉とお酒がダメでシュウさんに迷惑かけたり」

そう言えば一緒に生活した最初の頃は近づくたびに吐かれて落ち込んだっけ。匂いで駄目なのは驚いた。聞いた話だと、ヒトが腐った肉から出る汁を飲んでいるようなものらしい。

「健康的な食生活になって、かえって良かったですよ」

「他にも――」

「俺も基礎体温が低いのに気がつかなくて、体を洗うお湯熱めにして火傷させたりしましたし」

「あれは! まだ火傷しませんでした。後も残っていませんし」

「でもあんな悲鳴は――」

太ももを抓られた。

「シュウさん、自分でもう確認したじゃないですか」

「それはそうですがその……」

「そう言えば、もう“した”って言ったら、シュウさんを喜ばせる方法も……」

いったい何をどこまで学んできたんですか!

そろそろ今までの文章にチェック入れようと思います。

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