第四話 大切だからこそ
きっと秋葉も亮が好きだ。私なんかが入り込む隙なんて無いぐらい。だからさっきも私の質問に答えることが出来なかった。
考えれば考えるほど消極的な考えしか浮ばない。
「・・・あの花瓶持ってくるね!」
私は精一杯の虚勢を張って教室を出た。
気が付くと廊下を走っていた。そして中庭にでると私は無意識に涙を流していた。ここは使われなくなった古い温室に続く道。人はほとんど通らないため隠れるにはちょうどいい。
「うっく・・・っひ・・ッく・・うぅ・・・。」
私は声を抑えることも忘れていた。それでも心に突き刺さった想いは癒えなくて声にならない嗚咽が中庭に響いた。
「あの・・・大丈夫ですか?」
気が付くと目の前に十六歳ぐらいの女の子が立っていた。その身に纏っている服は白くまるで天使のようだった。
「私は友梨亜といいます。無理にとは言いませんが、なにがあったか・・・話していただけませんか?人に話すと楽になるといいますし・・・。」
私はなぜか初対面であるその人の言葉に安心感を抱いた。
「あなただったら・・・あなただったらどうしますか?・・・自分の好きな人をとても大切な親友も好きだったとしたら・・・。そしてその彼も彼女がすきだったら・・・。」
「私には経験が無いのでなんともいえません。だからコレは私の憶測にすぎませんが、その親友も貴方のコトを大切に思っているのなら、きっと悩んでいると思うんです。彼が好きなのに、親友の事も大切で・・・。なにも出来ずにもがき苦しんでしまう。そして苦しくて苦しくて・・・自らの犠牲を選んでしまう。人は上手くは生きられない・・・不器用な生き物ですから・・・。・・・コレはあくまで私の思っている事です。この話を聞いてどう思うか、どうこうどうするかは貴方しだい。貴方が考えた最良の方法で行動してください。」
そう言って友梨亜は微笑んだ。
「ありがとうございます。」
私はゆっくりと立ち上がって、教室に戻った。
教室の前に立つと中から秋葉の声が聞こえた。
「亮は私の気持ちなんて考えてくれない。文香を傷つけたくないの!だから・・・亮とは付きあえない・・・。」
「それが・・・お前の答えなんだ。」
それが文香のためかよ。もういいよ。・・・文香。」
亮の声は震えていて、扉越しでも怖かった。なのに秋葉は黙ったままなにも言わない。
「それが文香のためかよ!・・・もういい。・・・っ文香。」
私は無意識のうちに扉を開けて立ち尽くしていた。
亮は申し訳なさそうに俯いた。