第一話 数少ない友
小説家になろう〜秘密基地〜の小説のヒントより奏摩鈴華様から書かせていただいたお話デス。
きっと今の私は幸せというべきだとおもう。
親友の秋葉がいて、
大好きな人が傍にいてくれて・・・。
でも、本当はずっと・・・知っていたのかもしれない。
彼をとりまくあの甘い誘惑の香りを・・・。
朝七時。家から出てすぐのところでよく見知った背中が見えた。
「亮!おっはよう。」
私は少し前を歩く友人である南乃亮に声を掛けた。
亮はゆっくりと振り向くと、まだ眠そうに「おう。」といった。
亮は私の数少ない友人の一人だった。
そして・・・私の小さいころからの片思いの相手だった。
私は無意識に他人と距離を置いてしまうタイプで本当に信頼した人にしか笑顔を向けないのだった。それでも優しく微笑んでくれたのが亮だった。
私は無意識に微笑んで亮の横に並んで歩いた。
「お前・・・さ。」
今まで無言で歩いていた亮は不意に口を開いた。
「ん?なに?」
きょとんとしている私に向かっていとどため息をつくと亮は飽きれたように私を見た。
「今日・・・日直じゃねぇの?」
私は少し考えてからある事に気が付いた。
「え?・・・あっ。」
私は一瞬考えてから腕時計を確認して声を上げた。
そうだった。
言い訳にしか聞こえないかも知れないが、昨日からリビングの時計が十分遅れていることをすっかり忘れていた。
さっき家を出たのは六時五十分。でもそれから五分とたってはいないはずなのに、腕時計の針はもう七時をさしている。
きっと今頃、私の親友である秋葉が黙々と一人で仕事をこなしてしまっているに違いない。
「亮!アリガト。」
私が走りながら叫ぶと亮は軽く手を挙げた。