5話 後編
同日 某時刻。柚木と060号の部屋。
「まだ熱は下がっていないかのか?」
「先ほどよりは下がりましたが、まだ熱はありますね」
「そうか…」
「私はこれで失礼します」
「……わかった」
後は部屋から出て行った。
「…かなと、かえってきてたの?」
「ああ、帰ってきた。今日はもうどこにも行かない。だから…安心して眠れ」
「……ん」
柚木は安心したのか、深い眠りにつく。そして060号は、愛おしそうに柚木の頭をなでる。
「……ずっと…そばにいるよ…」
同日 深夜。??。
「……本当に、こんな所にあれがあるのかな?」
コツ。
「誰!?…………なんで…君がここに?」
ボン!!
10月6日 早朝。職員寮 苺島の部屋。
プルルルルル。
「…………もしもし?」
部屋の電話がなり、 苺島は寝ぼけながら電話を取る。
「……えっ…?」
同日、某時刻。監視室。
バンッと勢いよく扉を開け、苺島が入ってきた。
「ホオズキ、さっきの電話はどういう事だ?…本当なのか?梨東が…」
「ええ、本当よ。昨日の深夜、梨東くんは…爆発事故に巻き込まれて死んだわ」
「…遺体を見せろ」
「無理よ」
「何故だ!」
「……彼の遺体は爆発による損傷が激しく、炭みたいになっているの。医者の私なら分かったけど、医者じゃないあなたじゃ分からないわ」
「……クソ!」
苺島は、近くにあったゴミ箱を強く蹴る。
「何故…梨東が死んだんだ!何故…」
「…後ちゃん、部屋に連れて行って、苺島が落ち着いたらまた来てちょうだい」
「分かりました。苺島さん、行きましょうか」
「…どうして…あいつが……」
2人は監視室から出て行く。
「私、用事があるから、少し部屋を出ていくわね」
険しい顔をしながら、今度はホオズキが部屋を出て行った。
「……2人きりになったね。茄子宮君♡」
「そうですね」
「ねぇ、この前コーヒーくれたよね」
「そして、疲れていた桃谷さんは眠ったんです」
「……本当に、ボクは疲れていたから眠ったのかな?」
モニターをジッと見て、キーボードを打っている茄子宮の視界に、桃谷が無理矢理入ってくる。
「……モニターが見えません。邪魔です」
「梨東君が死んだ時、君はどこにいたの?」
「自分の部屋です」
「ボクはさっき、監視カメラの映像を見てたんだ。すると……君は梨東君が死んだ時、自室にもこの刑務所内にもいなかった」
「何が言いたいんですか?」
「君が梨東君を事故に見せかけて殺したんじゃないの?」
「違います」
「じゃあ、君の表情が『軽蔑』と『動揺』になっている理由を答えてよ」
「……」
バン!
茄子宮は勢いよく立ち上がる。
「…………桃谷さん」
「何?」
「深く知らない方がいいですよ」
「君は060号と同じスイッチ付き。だから君を殺すのは」
「スイッチを持っているのはあなたじゃない」
「持っているかもしれないよ」
「……」
2人が険悪な雰囲気の中、柚木と060号の部屋では…。
「……後、今の話本当なのか?」
「はい、昨日の深夜、梨東さんが死亡しました。私、苺島さんの様子を見に行くので、これで失礼します」
「ああ…」
後は部屋から出て行った。
「ねぇ」
「ん?」
「なとうって、なっとうのひと?」
「そうだ」
「しんだの?」
「…そうだ」
「じゃあ、もうあえないの?」
「…そうだ」
「かなともしぬの?」
「……」
「かなとはいなくなるの?」
「…………いなくならないよ。今度こそ…」
「?」
同日 数時間後。監視室。
「全員いるようね」
「先ほどは取り乱してすまなかった…」
「もういいわ。それより、メンバーについてだけど…」
「たしか6人いなければダメなんですよね」
後が発言する。
「そう、最低でも6人必要。私はちょっと来るのが遅れたけど…」
「もしかして、新メンバーかい?」
今度は桃谷だ。
「そうよ。梨東君の代わりの子、紹介するわ。古藤君、入ってきて」
「……古藤?」
部屋に入ってきたのは、左目に眼帯をした若い男性だった。
「みなさん、初めまして。梨東さんの代わりにここで働くことになりました、古藤 鈴です」
「鈴…君」
桃谷は、過去を思い出す。
『初めまして、桃谷さん。古藤 鈴です』
『桃谷さんは微表情学だけじゃなく、犯罪心理学なども勉強しているのですか。凄いですね』
『えっ?教授になったんですか?凄いです!』
『こんな物で悪いですが、お祝いの腕時計、受け取ってくれますか?』
『本当に…こんな事があなたの研究に役立つんですか?』
『教授……何を…やっているんですか?』
『もう……こんな事、僕はしたくありません』
『教授…?ちょっ、何をするんですか!?やめてください!教授!』
「……もう、退院しても大丈夫なの?」
「はい、大丈夫です。今日からお願いしますね。桃谷さん」
古藤は怪しげに微笑んだ…。
6話へ続く。
梨東が好きな皆様、すみません!
古藤 鈴の名前をひらがなにして、とうを抜き、残った文字を並び替えると…?
6話はラブコメ多めです。