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第二話 意外と……きついです



「今回キミの護衛対象、春川望ちゃんだよ」


「何でお前はいちいち偉そうにする。それに今回も何も、護衛なんてすること事態初めてなんだがな?」


 統夜はこの日何度目かの溜息をついてその護衛対象を見る。

 見られていることに気付いた望は、少し怯えた様子で悠の袖を掴む力を強めた。


(なんという庇護欲を掻きたてる存在か!?)


 色々と難を言っていた統夜だったが、現在悠に頭を撫でられている望を見て既に陥落しかけていた。


「キミも知っての通り、魔法の歴史は浅い」


「……つまり、望ちゃんは特殊能力やら体質やら何やらがあると?」


「That’s right! 正解だよ。そして、だからこそ、この明星学園に来たのさ」


 なるほど、と統夜は頷く。

 魔法、それは現在から数十年前“一般”に確認された人が起こした不思議な現象のことをいう。最初は極々僅かな人しか発現しなかった魔法だが、最近では徐々に使える者が増えつつある。

そして魔法を使える者の事を魔法使いと呼び、発見されてから年月も浅い魔法は、日々新たな魔法が開発、発見されていく。

そんな歴史の浅い魔法にとって望のような特殊能力などを持った人は、貴重な“サンプル”となる。

 それこそ生きた標本になったり、脳を弄られたりなど人としての尊厳を無視した扱いを受けることになる。


「胸糞悪い話だな。このことを本人は知ってるのか?」


「少しだけ、ね? 望ちゃん」


「えと……」


 話を振られた望は、戸惑い視線を泳がせる。


「この明星学園に来た理由だよ」


 悠が普段なら見せないような甘さを感じさせるやさしい声で補足する。


「は、はい。私がちょっと変わった能力(ちから)があって、それを狙う人たちがいて危険だから明星学園(ここ)に来たんですよ、ね?」


「オーケー。大体わかった」


 本当に少しだなと心の中で思うが、その方が望の負担が少なくなるのも確かだ。

 それに、明星学園の性質上、他の場所よりかは安全であるのも確かだ。

 理由は、明星学園とは日本に最初に出来た魔法を扱える者が通う初等部から大学部まであるマンモス校で、目的としてはいまだ謎が深い魔法の幼少からの習得、理解を深めるためのもので、魔法の素質があるものを幼少からのスカウトしてたりする。小等部では基礎を、中・高等部では応用を目安とし(もちろん実力があれば目安以上のことも修得可)、大学部では主に魔法についての研究が行われている。そんな明星学園近辺に全国から集まる生徒のため寮やアパートも近場にあるためセキュリティは万全である。当然、学園内には魔法を使える者が戦力になりそうな生徒を含め、結構な数がいるので相当な戦力となる。

 おまけに日本初の魔法の学校と言うことで周りに魔法に関する研究所まで立っており、例え襲撃者が下手な行動を起こせばすぐさまリアクションを起こされることになり、場合によったら襲撃者が可哀想な事になってしまう。

 そういう事情により事を起こすのを躊躇う為、明星学園はある意味安全なのである。


「うん。ということで念には念を入れてキミに護衛として付いておいてもらいたいんだよね」


 何があるかわからないのがこの世の中だし、と一輝は付け加える。


「まあ、念を入れるのはいいけど。どうやって護衛するんだ? 学年が違うんだが?」


それに中等部と高等部の校舎は歩いて数分とはいえ離れているのである。


「それならキミに年齢を下げる薬を飲んでもらって同じ学年に――」


「却下だ!」


 さも名案とばかりに自慢げに言った一輝の案は即潰された。


「いやね。この前研究所の方で出来たものらしくて、是非キミにって」


「俺はモルモットかなんかですか!?」


「またまたぁ。そこらへんのモルモットなんかと比べ物にならないよ」


「それは実験体って意味だよなぁ! そらモルモットより人間様の俺のほうが効果とか副作用とか分かるだろうさ!!」


「だめ?」


「お前がやれ」


 ゴミクズでも見るかのような冷たい目で言い放った統夜の言葉だったが、そんな言葉もまたまたご冗談を、と笑ってやり過ごす一輝。


「はあ、もういい。んで、結局どうすんだ?」


 何で俺の周りにはこんな変人ばかり……と嘆きつつ話を戻す。


「学園内については、先生とかもいるし問題ないよ。キミには日常での護衛を頼みたいんだよ」


 そこでなんで俺なのかなぁ? と疑問に思う統夜。


「しょうがないんだ。先生方は先生方で仕事もあるし、その他も同じ。それになにより、悠君がキミをご指名でね」


「お・ま・え・か・よ!」


「はっは、こんな事信頼の出来る奴にしか頼みたくないんでね」


 笑って言い切る悠に、呆れつつも信頼されていることは嬉しいので、信頼ねぇ~と呟きつつ若干頬を紅くした統夜は視線を逸らした。


「まあ、色々と便宜してもらってるわけだし、やってやるよ」


「おお、統夜がツンデレた」


「まてや、誰がツンデレだ!?」


 悠の発言に意味が分からんよ!? と統夜が突っ込む。


「望も問題ないよな?」


「はい。ちょっとあれですけど、いい人そうですし」


「あれってなに!?」


 望からの何気ない言葉の中に微妙に棘があるように感じた統夜は、頭を振って嫌な予感を振り払う。


「それじゃ、ツンデレな神崎統夜君」

「ツンデレじゃねぇ」

「望君の部屋はキミのアパートの隣の部屋になったからね」


「無視ですか、こんちくしょー。てか何気に重大なこと言ってない?」


「私と統夜の間の部屋だ。ストーカーが居ても瞬殺出来るぞ。安全性は問題ない」


 たしかに統夜は学園内でも戦闘力だけなら屈指の実力がある。それに悠も高等部のAクラスに在籍する攻防できる後衛よりのオールラウンダーである。前衛一直線な統夜とはなにかと相性がいいのだ。悠本人が統夜を気に入っているというのもあるのだが。


「まあ、いいじゃない。神崎君も、女の子と触れ合う機会も増えるわけだし、役得と言うことで」


 これまで空気だった刹那の予想外な言葉に統夜は驚きの視線を向ける。


「なによ? そのありえないものでも見たような目は?」


「いや、時野がそんな事言うなんてなって。イメージとしては女の子と触れ合える~とか言わずにもう少し硬いような気がしていたから」


 流石に私もそこまで硬くないわよ、と刹那は苦笑した。


「それに、こいつ相手には諦めとか割りきりとかを身につけとかないと持たないのよ」


 そういった刹那からは哀愁と、自分に近しいなにかが感じられた。


「……ごめん」


「いえ、神崎君は悪くないわよ」


 悪いのは――と二人の目が一輝を捕える。


「……校内で暴力とかってダメなんだよ?」


「ばれなきゃ問題ないと思うんだ」


「刹那く――」


「私はちょっと雑務が忙しくて何も聞こえなかったり、視野が狭くなったりするんですよ」


「随分いい副会長がお前には付いてくれてるみたいだな?」


 片や日々奇人変人なクラスメイトに囲まれ耐え忍んでいるところを厄介ごとを押し付けられ、もう片方は仕事をしない上司の分を捌くのに神経をすり減らす。そんなフラストレーションが溜まっている二人の殺気を感じ取った一輝は笑顔のまま一筋の汗を流した。

いつも飄々としている一輝だが、流石に不味いと感じたらしい。


「ソウイエバ、ヨウジガアッタンダ~」


「逃がすか!!」


 バイチャッ、と言って一輝の姿が掻き消え、統夜の伸ばした手が空しく空を掻く。

 ちっ、と統夜は舌打ちするが、まあいいかと悠達の方に向く。


「まあ、色々あったけど、望ちゃん。これからよろしく」


「はい。よろしくお願いします」


 今までの統夜を見て警戒心が解けたのか、出会った当初よりか警戒心が解けたようではにかむ様な笑みを見せた。


「私からもよろしく頼むよ」


「ま、何でもと言うわけではないが任せなさい、と」


「ところで望、統夜の第一印象はどうだ?」


 なにか気になったのかそんな事を悠は聞いた。


「え~と……」


 これには気になった統夜も耳を傾ける。


「往生際が悪い――?」


「…………」


「それはなんでだ?」


「ツンデレなのに認めないとか?」


 予想外の評価に崩れ落ちそうな統夜だった。






どうも、財布がボーダーブレイクでヒャッハァーなからすけです。

ブレイク中なのにゲーセンに逝っちゃうんですよね(誤字にあらず)


とまあ、どうでもいいことは置いといて、一週間から少しずれちゃいましたけど許容範囲内と思い込みます。


これからも見捨てないでいただけるとありがたいです。

その内活動報告とかも書いてみたいと思っていますので暇があって見てやんよ~てな方は見てみてください。いつになるか分かりませんが……


では、誤字脱字、この表現とかおかしいんじゃないかってのがありましたらご報告お願いします。

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