第五話 インタビュー
『白常盤学園高校の学校祭でしんじゅうひめの舞台は恒例行事だったのですか?』
インタビュアーは女性にピンマイクを向けた。その女性は顔から下は映っていない。制服を着ている。
ピンマイクをつまむように持ち話す。持つ手の爪は少し伸び切ったキラキラのネイル。
『はい、そうです。もう……20何年前からとか聞いてます。
衣装が、当時の生徒の親がどこかの舞台メーカーの人だったらしくて、すごいの作ったんですって。
それが勿体ないってことで、着回してたらしくて。今も20年経ってもクリーニング出してそこそこ綺麗なんですよ。
これ、普通に買ったらめっちゃ高いらしいんです。
だから、どのクラスがやるかは抽選で選ばれるんですよ~あ、クラスじゃ無いか。やりたい人がやるみたいなー演劇部とか団体に限らずー? よくわかんないです』
『そもそも“しんじゅうひめ”の劇、それってオリジナルですか?』
『はい、そうらしいです。その当時の教師か生徒か誰かわからないらしいけど何がベースかわからないし、まぁそこそこいい舞台なので伝統として毎年受け継がれて』
『……毎年……それはそれは』
『話としては親に反対されて結婚できなかった姫と王子の2人は来世は幸せになろうねと飛び降りるのがクライマックスなんですけど……出だしは明るくダンスや歌や手品やらもうヒッチャカメッチャカないろんな要素を詰め込みすぎて……』
『僕も実は過去の映像を先に見させてもらいましたが年によってはダンスメインだったり、新喜劇風だったり……』
『そうですね、そこはアレンジしたり忠実にしたり……で、必ず最後の方はドロドロの泥沼修羅場になるんです。昨年は原本通りに再現したらしいので母曰くQueenというバンドの曲のボヘミアンなんとか……』
『ボヘミアンラプソディですかね』
『あ、たぶん……その曲みたいな劇ねって去年見たとき言ってました。私にはよくわかりませんが……』
『そのバージョンは見ませんでしたが……確かに修羅場までの前半とは雰囲気が全く違うものでしたね……高校の演劇としてはすごく濃密で……よくやるよなぁと』
『姫と王子の葛藤と熱い恋模様が繰り広げられているという暗喩じゃないかとか……それは考えすぎだ、ただいろんな生徒がこれもやりたいあれもやりたいを喧嘩してどうにもならず全部詰め込んだだけだとか。検証結果を学園祭で発表したクラスもあった年もあったらしいです』
インタビュアーはつい笑ってしまった。釣られて女性も笑った。
『んでー、10年くらい前かな。2年連続でその劇で姫と王子を演じた2人が偶然にも付き合うことになって。全くただの同級生同士。まぁ仲は良かったかもですけど……せっかく豪華なあの衣装ですからたくさん練習するのでしょう……王子と姫はいつも一緒のシーンですからそれで意気投合して。多分2組目の人は結婚してます。それから姫と王子を演じたもの同士結ばれる、という言い伝えになったんです!』
『それは偶然でしょうに……』
『ですよねー、で。検証してみようって独身のそこそこ年齢いってる結婚に興味ない30代の男女の教員にやらせたら……その年の卒業式でデキ婚しちゃったんですよ。ますますそれでジンクスは確証されました……』
『へー! しかもデキ婚……』
『練習は5月からだから……練習の時はそこまでだったのかな、終わってから付き合って……かな? ふふ、そんなの当人同士じゃないと分かりませんよね』
『で、私の姉の代になって……どうなるの? と思ったら親に反対されてる生徒同士で演じて。1人は妊娠中。そして両家の親を呼んで演じきったのです』
『……‼︎ 親に認めてほしいがために言い伝えを利用したと?』
『そうなんです、私の姉の友人なので……そして無事に……というよりも押し切られた感じで結婚して今では結婚して仲良く過ごしてているそうです』
と、その場の雰囲気は和やかになる。
『そっからはもう……結婚すると決まっている先生同士や先生の恋人を呼んで……5年前は確か同性婚の先生かな。1人は女装してまで。でもこれは生徒たちからの祝福を込めてやらせたらしいですけどねー』
『あらあら。その先生たちは今でも幸せそうですか?』
『って聞きますねー、ふふふっー。私も相手がいたらやりたかったなぁー。どうやって選ばれたんだろうー』
と彼女は笑っていた。




