第一話 幕開け
十月初旬の朝。風の強い日だった。
落ち葉がざわざわと舞い上がり、芝生の上を滑っていく。
住み込みの用務員、田所節子は、いつも通り早朝の作業に取りかかっていた。
今日は学園祭本番。何組か朝早くから学校に来るとは前日から聞いており、早起きの夫の信作に正門の横の扉の鍵は開けてもらっていた。
彼女は掃除用具を手に玄関からぐるっと周り学園祭のために整備されたイベント用のバスケのハーフコートの方も掃除をする。
「青春ねぇ」
とつい口の端が緩んでしまう。
――そのときだった。
後者の建物の下のアスファルトに、布の塊がが落ちている。
「マネキン……かしら? 出し物とかの……いや、なんであんなところに?」
小走りで駆けて確認しに行くのだが、数歩近づいた節子は違和感に足を止める。
それは、ただの塊でもマネキンではなかった。
「……え?」
彼女の声は上擦った。
そこには、二人の人物が並んでうつ伏せに倒れていた。
動かない。アスファルトと芝生ににじむ、その赤い絵の具のような水たまりは――
血だった。
「ああああああっ‼︎ あああああーーー!」
節子は今までに無い悲鳴を上げた。掃除用具を落とし、途中躓きながらもどこかに走る。わけもわからずに。
そしてその日、学園祭は始まることなく中止となった。




