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幼馴染が汚い字で「大好き」と書いてくるけど、読めてる俺が一番照れてる

掲載日:2025/12/28


「あ、ヤバい。

 体操服がない」


 あれれ。 

おかしいな。もしかして、昨日に自室の机の上に置きっぱなしにしてたか?


 時計を見ると、次の4限目の体育の授業が始まるまであと6分ほど。

着替える時間も加味すれば、今から職員室に行って借りてきては確実に遅刻してしまう。

……仕方ない。


「なあ、希奈。悪いんだけど体操服貸してくれない?」


 俺は少し申し訳ない気持ちで、遠慮がちに隣に座る幼馴染に話し掛けた。

我が校では、3限目には女子が体育をし、4限目には男子が体育をするという規則がある。

逆を言えば、その体育をしていない時間は保健の授業をすることになっている。


 少しすれば、寄せた両眉に呆れを含ませながら、隣の少女が振り返った。


「……なに? 

 また忘れたの?」


 少し険しい表情でそう言う彼女は、三朝希奈(みささきな)

俺の幼馴染で、中学卒業する手前までは、隣同士のお互いの家を行き来するほどの仲だった。

高校に入っても距離感は変わらず、ましてや同クラスの隣の席とかいう奇跡。

クラスメイトからも親しまれているが、こんなことを頼むのは俺しかいない。

もっとも、異性なのにだ。


 彼女は、見惚れてしまうようなつぶらな瞳に、優雅にたなびかせる黒髪の長髪が特徴の、まぁ俗に言う美少女というやつだ。

ここらでは有名な書道家の父と、容姿端麗な母を持っている。

母譲りの美貌もそうだが、何せ幼い頃から父親に習っていた字というものは、それはそれは達筆なそう。

ただこぞって言われるのが、全く何書いてあるか分からないということだ。


 ……こほん。

この際、そんなことはどうだっていい。


「ああ、昨日は確かにあったはずなんだけど…。

家に置いてきちゃったみたいでさ、悪いんだけど貸してくれない?」

「……まあ、いいけど」

「ありがとっ」


 素早くお礼を言い、そそくさと体操服を受け取る。

ここでは気づかなかったが、これは美少女の使用済みのブツらしい。


 俺は早速、足早に一階の更衣室へと向かった。

この3階から降りていくのは少しばかりキツい。

そして今から着替えるとなると……

……間に合いはするか。


 と、着替えることについて考えながら階段を降りきり、廊下に出ると、

手に持つ体操服入れの中に一枚の紙切れが入っていることに気がついた。


「あ、なにこれ」


 それに少し困惑しつつ。

減速してその紙切れに書かれていた字を読んでみる。


 流石は書道家の娘というだけある。

というか達筆というよりかは汚いし何書いてあるか読み取れない。

この少し斜めった後に屈折する線はなんだ?

そしてその横に書いてある字は……

……丸っぽくて地図記号の果樹園のような形をしている。

…あ、これ頑張って読んでも無駄なやつかもしれない。



 ――と、ここで内心で一芝居打ったところで。



 気づいていますとも幼馴染さん。

お前が、俺が教室を出てからすぐバレないようについてきたことなんて、気配だけで感じられるわ。

そんなにこれの反応が見たいか?


 と、少し横目でこっそり希奈の様子を窺う。


(うわ、めっちゃニヤついてる。

 口元めっちゃ緩んでて嬉しそう)


 不思議と、今の彼女の内心は、俺は手に取るように分かった。

あれだ、

「うふふ、こんなこと言っちゃた…」

って思ってるだろ。


 なんでそんな風に思うかというと……さっきの紙切れ。

普通に見れば、ただのへんてこな字のような、読めない記号のようなものが書いてあるだけのものだと思うが、実際には違うから。

実際には、

「大好きだよ」

と書いてあったのだ。

この可愛い幼馴染様は。


 ……はい、実は俺――木村優翔きむらゆうとですが、

彼女の字、なんて書いてあるか全部分かります。


 なんでかと言うと、彼女との付き合いが長すぎてもう見慣れすぎたから。

自然と読めるようになったんだ。


 幼馴染として一緒に課題とかをこなす中で、それがかれこれ10年ちょっと続いたわけで、

もうそこまで経てば流石に自然と読めるようになるよ、普通。

「なんて書いてあるの?」

だなんて、最初の3年くらいしか聞いてない。

そこからは、もう普通に解読できるようになってしまった。


 ただ、それについて話す機会もないし、なんなら話すようなことでもないし、本人も自覚ゼロだ。

なんでこんなことするようになったかは知らないけども。


 ただ、つくづく思う。

読んでる側も割と照れる。



(あぁ、そんなにニマニマしちゃって……

 ……おっと)


 彼女はこちらに気づかれそうと感じ取ったのか、素早く掃除用具入れのの裏に身を潜めた。

ここで詮索するのも変なので、何食わぬ顔で更衣室へ向かい始めた。


 更衣室手前までも、背に彼女の視線をバリバリ感じる。

「読んでくれたかな?

 私、好きって言ったのに。

 全然気付いてなぁいねぇ」

って、今にも思ってるのがガンガンに伝わってくる。

いや、気付いてるけどね? 

今にも笑いそうなのを、とにかく必死に堪えてるんだよ? 

……お前と一緒で。



 ――やがて更衣室に入ると、彼女の姿も自然と見えなくなった。



 この俺達の奇妙なやりとりが始まったのは、今から2カ月ほど前。


 それまでに、何か特別なことがあったのかと言われると……

……特筆するようなことは、実は何もない。


 ただ、高校に入って同じクラスになったと分かった直後、たまたま隣の席になって、

よく俺が教科書とかの忘れ物をしてしまったときに貸してもらってただけなんだけど、

いつからかそれに変な文字が書かれた紙切れが挟まっているようになってて。

最初は間違えて入ってたただの紙切れ、いわばゴミだと思っていて読みもしなかったんだが、

ある時に暇すぎて読んでみたら、なんかものすごいことが書いてあることに気づいたんだ。

思えば、その時に隣の彼女がニマニマしていたのを覚えている。

そこから、心なしかこういうやりとりが頻発化していた気がする。


 そんなこんなで、俺が彼女に何かを借りるという一連の流れは定着し続けて、今に至るのだが。

体操服まで借りるというのは実は始めてではない。

小学校の頃も、中学校の頃も、クラスは違ってもこぞって忘れたら借りていた。

だからこれ自体は特別な行為でもない。

ましてや、教科書とかを借りるという行為をなおさらだ。


 正直、どこでこのフラグが立ったのか、今の俺にはさっぱり分からない。


 ただ、今から2カ月前。

彼女はいきなりこの手法で俺にデレるようになったのだ。


 そう、忘れもしない2カ月前。

休憩時間に何気なく、いつものように教科書を貸してもらうと、何らの紙切れが挟まっていて。

そこにデレ言葉を書き連ねて俺にいつも渡してきやがるのだ。

この可愛い幼馴染の美少女様は。


 あまりにもさりげなく、なおかついつも通りだったため、最初は誤入だと思った。


 だが、それからも事ある毎に紙切れを入れられるため、読んでみたら汚い字でデレられ、

「あぁ…そういうことね」

と、否応なく悟った。


 そして、それが何回も繰り返されたとなると、流石に俺が彼女の字を読めるとも言えず……。

それとまぁ、俺に伝わっていないと思い込んで嬉しがる彼女がどこか可愛かったのもあり、すっかり打ち明ける機会を逸してしまった。


 今では、この紙切れにデレ言葉を綴って読まれた直後、隠し切れないニマニマとした顔をさらけ出す彼女。

何知らぬ顔で気付かないフリをする俺。

この構図、この光景が完全に日常化してしまっていた。


 4限目が終わり、昼休みが終わると、5限目の日本史の授業が始まった。

ここでも、俺は毎度の如く教科書を忘れたため、彼女に頼んだ。


「教科書、貸してくんね?」

「…別に良いけど」


 教科書を借りると言っても、配布されたプリントの空欄を埋めるときに使うだけだ。

そして彼女が空欄を埋めたことを確認してから、貸してほしいと頼んだ。


 呆れながらもそそくさと横に教科書を回してくれた。

今やってる範囲の57ページを開くと、例の如く紙切れが入っていた。


 …いや、だから……

普通に授業中なのになんでサラッとそんなこと言えんの?


 「今日は一段とカッコいいね」

ってなんだよ!? 

そんでニマニマすんな!

横見てニヤけるな!

嬉しそうに微笑むのやめろ!

一応、全部伝わってるからな!?


 内心で思いっ切りツッコミながらも、俺はポーカーフェイスを貫き、必死に空欄を埋める。

やがて埋め終わると、紙切れも一緒に挟んで彼女に返した。


 それからは特にお互い何もなく、平然と授業を受けていた。


 ただし、何もなかったかと言えば……

……そうでもなかった。


(ねぇ、なにやってんの? 

 ガチでなにやってんの?)


 また教科書を借りようと、希奈の方を向いた時だった。


 なんかプリントの端っこに変なもの書いてる……

……と思ったら、なんと俺への告白文だった。

妙に早く書き殴るんで、何かと思って見たら、これかよ。


 ……うむ。

思いっ切り筆圧強めで書き殴ってるから一見誰かへの悪口書いてるみたいだけど、実際に書かれてる字を見たら滅茶苦茶デレてるね。

ヤバいね。

「大好き」とか「可愛い」とか書かれてるね。


 と、その書き殴られている文字達をマジマジと眺めていたところで、パッと顔を上げた希奈と目が合った。

一瞬、心臓が跳ねた。


 途端、希奈は微笑すると、挑発的な笑みを浮かべ、また汚い字で何か書き殴り始めた。


 …また書いてる。

今度は……

……「早くユウくんのお嫁さんになりたい」、「そんなにカッコいいユウくんが悪いんだからね」

とか書いてる…。


 

 ――と、ここで、始めて自分が読んでいた言葉の意味を理解した。

すると続々と、脳内から羞恥心というのが滝のようにながれてきた。



 ……いや、はっず! 

カッコイイって誰がだよ! 

お嫁さんってなんだよ?

可愛いってなんだよ!

そんなこと今まで女子に言われたことねぇわ目玉腐ってんのか!?


「おい木村、聞いてるか?」

「…え?

あ、はい」

「授業中は真剣に前を向いておくんだぞ」


 先生の声に弾かれるように前を向くと、慌てて先生の方へ視線を向け、真剣な眼差しを向ける俺。


 どうやら、考えすぎたあまり四方八方に頭を揺らしていたらしい。


 この隣で、完全に他人事みたいな表情で不敵な笑みをニマニマと漏らす希奈。


 こいつ……

……誰のせいか分かってるのか?


 そのままチャイ厶が鳴ると、起立と例を済ませ、10分間の休憩時間になった。


 すると、隣の彼女が、開口一番にこう言ってきた。


「何かあったのかは知らないけど……

……授業はちゃんと聞こうね?」


 そう言い、笑いながら去っていく希奈に怒りのような感情が湧いた。

思わず袖を掴んで引き留めようとしたが、あまりに笑った姿が可愛かったので、その気も冷めた。


 ……こんな日常が、これからもまだまだ続いていく。

夏休みに入ると、隣の希奈の家で一緒に課題をやっている時もデレられ、一緒にゲームしている時も何かとデレられ。

気づけばこのデレは、俺の心の拠り所になっていた。


 しかし、お盆に近づき、希奈が隣県の祖父母の家にへと6泊ほどするとなると、途端にこんな時間が恋しくなった。






――――――――――――






「あら? 

 希奈ちゃんじゃない。

 こっちに帰ってきてたの?」

「あ、松岡さん。

 はい、お盆ということで帰ってきたんです

 6日ほどの滞在になりますが…」

「へぇ、そうなの。

 時間があれば、家にも遊びに来てね? 

 子供たちも寂しがってるから」

「はい、ぜひとも」


 久しぶりに会った友人のお母さんと軽く言葉を交わすと、そそくさと家路を辿る。


 私の生まれはこの雪国だ。

ユウくんの隣の家に住むようになったのは12年前ほど。


 雪国と言っても、今は夏休み。

当然、雪など降るわけない。

しかし、どこか涼しくて、どこか温かいようなこの場所が、生まれながらに好きだった。


 お盆や年末になると、大体は帰ってくる。

ホントは2泊くらいの予定だけど、幼い頃からの友人に会いたくて、無理言って期間を伸ばしてもらった。


 彼にも3日ほどと説明していた。

なぜなら、期間を伸ばしてもらうことについて両親が答えを保留にしていたから。

それで、翌日に急に6泊と決まったため、彼にはこのことを告げることも出来なかった。


 と言っても時間が経てば帰れるのだが。

幼い頃からの付き合いの友人に会いたいという気持ちと、彼に早く会いたいという気持ちが混沌として、どこか矛盾するような感情に苛まれていた。


 ……不意に、彼のことを思い始める。


 私の隣にずっといてくれて、安心感を与えて続けてくれて人。

私にずっと構ってくれて、どこか可愛らしさのあった人。

頼りないように見えるけど、横目から見ればとてもカッコいい人。


 ――私の、初恋の人。


 今すぐにでも話したい。

連絡でもメッセージでも何でもしろと思うかもしれないが、そうもいかない。

高校に入ってから、変に意識しすぎて、いつもドキドキしちゃってる。

それゆえに、自分から話しかけるなんてできやしない。


 ……だって好きだもの。

でも、彼がどう思ってるか分からないから、積極的に行けない。

それがどこか、歯痒かった。

 

 ……しかし、想いならもう何度も伝えていた。

ユウくんはそのことに気付いていなかっただろうけど。

でも、ユウくんには伝わらないと分かった上で、何度も伝えていた。

考えてみれば、これが良かったのか悪かったのか分からないけれど……。


「…はぁ」


 一人でため息を吐く。

体温が自然に上がる感じがする。

それも、外気が暑いからとかではなく、きっと心持ちに原因がある。


「……会いたいな…」


 ぼそっと漏らした言葉は、誰に伝わることなく、夏の雪国の空に消えた。

……だが。


 



 …………………………






 頼もしい背姿が見えた。

見覚えがある。

どこか、包まれるような、安心感のある優しい香りが漂ってきた。


 ……え? 

な、なんでいるの?


 呆然と立ち尽くす私。

彼が近づくにつれて距離は狭まり、気づけば……

……視線がバッチリ合っていた。



「「あ」」



 そして、同時に声を漏らす。


 すると、彼は足早にこちらに寄ってくる。

額の汗を拭いながら、駆け足でどんどん近づいくる。


 一方私はと言うと、あまりにも突然のことでどうしたらいいのか分からない。

……いや、ね?

確かについさっき会いたいとは言ったけどさ。

……言ったんだけどさ!


「…はぁはぁ。

 やっと見付けた」

「う、うん……

 …お、お疲れ様?」


 結果、棒立ちのままよく分からない返しをしてしまう。

感動の再会もなにもあったものじゃない。

どういう状況なのかさっぱりだ。


「えっと……

 ……なんで、ここに?」

「なんでって……

 ……お前に会いに来たに決まってるだろ?」

「い、いや……

 ……でも、どうしてここが?」

「前の年始に、お前がここから年賀状送ってくれたろ?

 それを大事に保管していてな……。 

 それに書いてあった住所を頼りに伝って来たんだ」

「なっ……

 ……なんでそこまでして…」


 確かに、年賀状を送ったことはあった。

だが、それはもう2年前の年末のことだ。


 ただでさえ忘れっぽい彼が、自分の部屋の整理整頓もできない彼が、大事に持っていてくれたというのが信じられない。

その上、時間が経てばいずれ会えるのにも関わらず、今この瞬間に会いに来てくれたことがなおさら信じられない。


 唖然とする私を前に、ユウくんは恥ずかしそうに、どこか照れながらも、目線を逸らして言った。


「…はぁ。

 俺は確かに忘れっぽくて、お前に頼ってばっかりだけどさ、好きな女の子に会いたいっていう気持ちには、正直になるしかないと思ってさ。

 あと6泊するって、今朝聞いたらさ、お前とそんな長い間会えなくなるとか冗談じゃないと思って……

 ……わざわざ2時間半かけて来たんだよ」

「…ゆ、ユウくん……」


 突然の「好き」という言葉に、私の頭の中が真っ白になる。


 目に入るのはユウくんだけ。

その後ろの田園風景と、少年少女が楽しげに野原を走り回っているけれど、一切そんなことなど気にもならない。


「…じゃ、じゃあさ。

 とりあえず家に上がってれない?」

「…わ、分かった」


 家の中に入ると、両親は歓迎してくれた。

すぐにお茶を出すと、おばあちゃんが気遣ってくれたけど、それくらいは自分でやると言っておいた。


 お茶を沸かしている間、茶パックが入っていた白い包み紙と、キッチンの側に置いてある1本の鉛筆に目がいった。

……そこで、良いことを思いついた。


 この包み紙に、「愛してるよ」と書いた。

……うん、恥ずかしい。

今まではこんなこと書いてこなかったから。

でも、今しかないと思って、これをポケットに忍ばせた。

いつ渡そうかと、タイミングを見計らう。


 やがて茶が湧くと、6つのコップにそそくさと注いだ。

そして、ユウくんと両親と祖父母が団らんとするテーブルに配膳した。


「あ、ありがとう」

「希奈ちゃん、ありがとね…」


 ユウくんとおばあちゃんが優しくそう言ってきた。


 やがて、皆に配り終えたので、配膳する時に使った御盆を返しに行こうとすると…。


「希奈、何か落ちたよ」


 と、ユウくんから指摘が。

ユウくんが拾い上げると、それを受けとった。


 …って、これって私がさっき書いたやつじゃん!?

お父さんとかに読まれてないよね!?

運良くユウくんの目の前で落としたからユウくんにしか読まれてないよね!?

ねぇ!?


 あまりの恥ずかしさに焦りながらも、それを急いでポケットに戻すと、すぐさまキッチンへと出戻る。

そして御盆を片付けてまた戻ろうとすると。


「…おっと」


 こっちに来たユウくんとぶつかった。

すると、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。

でも、読めないはずだし大丈夫――



「今さら愛してるってなんだよ。

 そんなの分かってるって――」



 一瞬の忘我の後、胸の奥から沸々と何かがこみ上げてきて──


「え?」

「…ん?

 どうしたんだ?」

「なんで読めたの?

 ねぇ、どういうこと?」


 私の中で、何かの歯車が狂い始める。

するとやがて。


「あれ、あれれ」


 さっきとは別の理由で思考停止する私を前に、ユウくんはどこか気まずそうな笑みを浮かべて……。


「悪い、言ってなかったな。

 俺、実はお前の字読めるんだよな」

「え──」


 …え?


 ……どういう?

私の文字が読める?

あんなに汚いのに?

え、文字、読める。

私の文字が……読める!?


「い、いつから……?」

「いつからって……

 ……割と子供の頃からかな?」

「…は、はいぃ!?」


 子供の頃から……?

…ってことは……


「な、な、ば、ば――」


 首を傾げる彼から目線をそらしながら。


「バカァァァァーーーーー!!!」


 大声で叫んで、その場にうずくまった。


 和気あいあいと団らんしている家族に聞こえたら……

……だなんて一切忘れる。。


 そして時間が1秒でも過ぎるうち、気まずさ、恥ずかしさが増したので頭を抱えた。


「ア゛ア゛ァァアアァァァァーーーー!!!」


 分かってた。

伝わってた。


 あれも、これも。

好きも、カッコいいも。

大好きも、全部。

あれも、それも……どれもこれも!!


「ウ、ア、ア゛、ア゛!! アアァァーーー!!!」


 ヤバい、死ぬ。

これは死ぬ。

恥ずか死ぬ! 

無理、生きていれない。

無理、ホント無理。

もうお嫁に行けない。

無理。

恥ずかしすぎて無理。


「…あの、大丈夫か?」

「ううぅっ!?」


 背中を叩かれ、頭を抱えたまま跳ね上がる。


 恐る恐る見つめてみると、そこには誇るような半笑いでこちらを見つめてくる彼の姿。


 その視線とこの笑みに、またしても恥ずか死にそうになる。


「あの、その。

ひとまずは返事が欲しいんだが……」

「……ん、返事?」

「いや、さっきのあれ。

 一応、というか告白のつもりで言ったんだけど……」


 そう言って小首を傾げる彼に、私はキリと視線を鋭くさせると、またしても叫んだ。


「ユウくんのバカ!」


 そして。


「大好き!」


 その言葉に対し、彼はニヤッと悪戯っぽい、どこか照れくさそうな笑みを浮かべながら。


「これからは直接言えよな」


 そう切実な願いを打ち明けてきた。


「もちろん!」

よろしければ高評価、ブックマーク等をお願いします。

どうも底辺高校生作家でした。

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