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五年子達〜呪われた世代が神を討つ〜  作者: 碧甫
第三章 ホワイトハウス編 
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二十三話 束の間のアメリカ

アメリカ編登場人物

A組

増田力 主人公。意思でパワーを増幅する能力者。ホワイトハウス警備中に五年子の少年ポーカーと仲良くなる。

月影夜流 リキの親友。時間歪曲の能力者。リキがポーカーと仲良くしているのを少し嫉妬している。

鏡堂響 反射の能力者。リキと同級生。補佐の山田と共に警備にあたっている。


文字島遊太 文字を自由に変える能力者。リキの先輩で、お調子者の明るい性格。


音峰凛 声を使う能力のため、普段はガスマスクのようなものを着用している。リキの先輩で、遊太と共に警備にあたっている。


零部隊

神楽蓮 リキ達A組の担任で零部隊所属。普段は眠そうで、自分のことをジョニーと呼ばせている。


望月感司 零部隊の隊長。禍野街にいた元零部隊隊長 五十嵐の部下だった。


朝霧 風吹 零特専高の校長で零部隊副隊長。風の能力を持ち、皆から慕われている。


山田 零部隊所属でA組の補佐役。補佐の中で唯一の女性。本名は七瀬。


佐藤 零部隊所属で山田同様、補佐役の一人。高身長の黒人で、リキ達に多国語を教えている。本名はワンバラ・トゥンガ・ウェレナオロ。


田中 零部隊所属の補佐役の一人。メガネをかけた男性で、本名も田中。


アメリカ側

ポーカー・ベッテン アメリカの警備としてホワイトハウスにいた五年子。リキと仲良くなり、コインゲームで遊んだ。


イーグル・フリード ポーカーと同様、アメリカの五年子。翼が生えており、ホワイトハウスの外を飛びながら警備していた。



 リキがポーカーとゲームをしている頃、会議室には重苦しい空気が満ちていた。


「そろそろ本題に入ろう。率直に聞きます──日本には“五年子”に関わる、非常に重要な場所が存在しますよね?」


 通訳を通し、アメリカ大統領は低い声で問いかけた。

 総理は横に座る望月に目を向ける。


「望月君、どうなのかね?」


 望月はわずかに言葉を詰まらせながら答えた。


「……もちろん、日本は世界で最初に五年子が出現した国です。初出現地域や、五年子を祀る寺院などは全国に点在しています。」


 望月の言葉を、横にいた風吹が通訳として即座に英語へと訳す。

 しかし大統領は小さく頭を振り、片言の日本語で一言だけ告げた。


「……フジサン。」


 その瞬間、望月・蓮・風吹の三人は一斉に顔を見合わせた。

 総理は眉を寄せ、困惑気味に聞き返す。


「フジサン……とは、富士山のことですかな?富士山は日本の象徴的な山ですが、五年子との関係は……特に──」


 風吹は戸惑いながらも、総理の言葉を忠実に訳した。

 大統領は側近の一人に耳打ちし、再び通訳を通じて言う。


「我々はすべて把握しています。隠すことではないでしょう。」


 総理はますます理解できず、望月を見る。


「望月君……あの山が本当に関係しているのかね?」


 望月はゆっくりうつむき、短く答えた。


「関係……ありません。」


──だが、その言葉はすぐにアメリカ側の提示した資料によって否定された。


「これは、最近の富士山周辺で観測された“五年子の波長と類似する反応”のデータです。

ご覧の通り、火口付近に“五年子由来の核”のような反応が存在している。」


 望月は資料を見つめ、息を呑んだあと、静かに口を開いた。


「……あれはアメリカの仕業だったのですね。富士山は150年前の噴火以降、立ち入りが厳しく制限されていましたが……数ヶ月前、人影のようなものが現れ、警備を強化していました。その時点で……もう情報が漏れていたということですか。」


 淡々と語る望月に、総理は言葉を失う。


「望月君……それでは、アメリカ側の言うことは“事実”なのかね?」


「……はい。」


「なぜ政府のトップにすら報告しなかったのだ!」


 総理の声が鋭く響く。

 望月は冷静だが、わずかに悔しさを滲ませて答える。


「この情報が漏れれば、五年子を巡って各国が動き……争奪戦、最悪は戦争に発展する恐れがありました。

そのため、この件は“五年子対策本部の上層部”のみに留め──」


「だが実際には、こうして外国に漏れているではないか。」


「……申し訳ありません。ちょうどその時期、国内での暴動や禍野街の件が激しくなり、そちらの対処を優先していた間に……」


「言い訳は聞きたくない。」


 総理は深く怒りを募らせていた。

 その時、アメリカ側から突然ひとつの提案が出された。


「この情報は、まだ他国には伝えていません。

そこで──日本とアメリカで“条約”を結びませんか?」


 その内容は、

“富士山の領土をアメリカへ譲渡する代わりに、アメリカは日本を他国およびその他の脅威から完全に保護する”

 というものだった。

 総理は即答を避け、慎重に言った。


「この情報は私にとっても初耳でして……今日は一度、持ち帰らせていただきたい。」


 すると大統領は強い口調で告げた。


「わかりました。ですが──条約を結ぶまでは、日本側の帰国は難しいと思ってください。」


 会議室のドアがゆっくりと開き、重たい空気が廊下へと滲み出る。


「お疲れ様です!」


 正門を守っていた補佐の田中が深く礼をした。

 だが、望月も総理も何も返さず、ただ険しい表情でその横を通り過ぎていく。

 後ろから出てきた蓮が、ようやく一言だけ声をかけた。


「長時間の警備ご苦労だった。……ちょっと厄介なことになってな。当分日本には戻れない。A組を集めてくれ」


 その言葉で、警備についていたA組たちは蓮と合流し、アメリカ政府が用意したホテルへ移動することになった。



 ホテルのロビーに全員が集まると、蓮が鍵束を手に話し始める。


「今日は本当にお疲れだったな。いい話じゃないが、当分日本には戻れそうにない」


 その一言で、A組はざわついた。

 しかし、ただ一人、リキだけは目を輝かせていた。


「えっ、じゃあ……アメリカ観光できるんですか?」


 蓮は小さくため息をつく。


「……まぁ、次の会議は三日後だ。それまでの間は各自自由に過ごせ。

ただし “五年子であることを絶対に悟られるな”。

緊迫した状況だ。お前たちが何かやらかせば国際問題になる。

能力の使用は禁止だ。忘れるな」


 そう告げると、蓮は一人ひとりに部屋の鍵を配っていった。

 リキとヨルと響が三人部屋、遊太と凛が二人部屋で、補佐の田中と佐藤や、山田と風吹もそれぞれ二人部屋になった。

 蓮と望月隊長は、総理たちの部屋に入り、そのまま警護につくこととなった。



 その夜。

 リキ達の部屋では、リキがベッドの上ではしゃぎながら今日の出来事を話していた。


「それでね、ポーカーって子と仲良くなってさ。一緒にコインゲームで遊んだんだ」


 楽しそうに話すリキの横で、響は笑いながら聞いていたがヨルは微妙に不機嫌そうだった。


「でさ!明日は一緒にアメリカを回ることになった!」


「へぇー、それは良かったな。……ヨルも一緒に行くのか?」


 響が尋ねると、ヨルはそっぽを向いて首を横に振った。


「いや、俺はいい」


 そしてすぐに響へ顔を向ける。


「代わりに響、明日一緒に回ろうぜ」


 しかし響は気まずそうに頬をかきながら言った。


「悪ぃヨル……俺、明日は先約があるんだ」


「えっ、響もアメリカに友達できたの?」


 リキが食いつく。

 響はニヤッと笑って胸を張った。


「いや、明日遊ぶ――てかデートするのは山田さんだ」


「山田さんって、あの補佐の?」


 リキが目を丸くすると、響は勢いよくうなずく。


「今日の警備、ずっと一緒だったからさ。次第に仲良くなって。初めて会ったとき、俺吹き飛ばされただろ?

あの時のお詫びってことで、明日一緒に回ることになった!」


「良かったじゃん響!吹き飛ばされたおかげだね!」


「なんかその言い方だとあんま嬉しくねぇけど……まぁ、明日が楽しみすぎて寝れねぇよ」


「俺もだよ!」


 リキと響が楽しそうに盛り上がる横で、ヨルは布団をかぶりながらぼそりと呟いた。


「……あっそ。お前ら二人はそれぞれ楽しめよ。俺は明日、部屋で一人で過ごすわ」


 そのままヨルは背中を向け、布団に潜りこんでしまった。

 ヨルが眠りについた後も、リキと響はいつまでも明日の予定を話し合っていた。



 翌日。

 ピピピッ、ピピピッ

「んっ、」

 ヨルがかけていた目覚ましが部屋に鳴り響き、目を覚ますと、リキも響もすでに支度を終えていた。


「じゃあねヨル。言ってくるよ」


 リキと響はそういうと早々に部屋を出ていった。

 ヨルは朝から少し憂鬱だった。



「それじゃ、お互い楽しもうね」


 ホテルロビーで響と別れたリキは、ポーカーと待ち合わせている公園へ向かった。

 アメリカの街並みを歩くだけで胸が躍る。昨日からずっと楽しみで、リキは夜もまともに眠れなかった。


 公園に着き、しばらく待っていると――


「リキー」


 ポーカーが手を振って走ってきた。


「ポーカー、昨日ぶりだね。今日が楽しすぎて眠れなかったよ」


 リキが言うと、ポーカーは吹き出した。


「お前、大袈裟だなぁ。――よし、早速行くか」


 そう言ってポーカーはリキの肩を軽く叩き、二人は次々と街を巡り始めた。



 一方その頃、響はロビーで山田さんを待っていた。

 予定時刻を10分ほど過ぎても姿が見えず、少し不安になりながら椅子で足を揺らしている。


 20分が経ったころ、階段を駆け下りる急いだ足音がロビーに響いた。


「響くん、ごめんなさい!」


 山田さんが息を弾ませてやって来た。

 響はその姿を見た瞬間、反射的に視線を逸らした。


 いつもの戦闘服ではなく、落ち着いた上品な私服。

 それがあまりにも似合いすぎていて、直視するのが恥ずかしかったのだ。


「ありがとうございます」


 口をついて出たのは、意味の分からない言葉だった。


「え?」


 山田さんが瞬きをする。


「あ、いえ……その……」


 誤魔化す響に、彼女は苦笑しつつ事情を話した。


「同部屋の風吹さんがね、朝から高熱で倒れちゃって。ずっと看病してたの」


「風吹さん、大丈夫なんですか?」


 響が身を乗り出すと、山田さんは安心させるように微笑んだ。


「今は田中に任せてきたから平気。……本当に遅れてごめんね」


 響は少し上を向いて息を整え、

 それから小さな声で、でもはっきりと言った。


「そんな……俺、山田さんと遊べるなら、何時間でも待つつもりでしたよ」


 山田さんは一瞬だけ目を丸くし、それから柔らかく微笑んだ。


「響くん、ありがとう。――今日は二人きりだから、“七瀬”って呼んでください」


 途端に響は顔を赤くする。


「な、七瀬さん……い、行きましょう」


 そう言って二人はホテルを後にした。



 その頃――

 ヨルは部屋で一人、むしゃくしゃしていた。


 ドタ、ゴトン。


「なんでみんな、どっか行っちゃうんだよ……」


 布団にくるまり、体をバタバタさせながら文句を言っていると――


 ドンドンッ。


 扉を叩く音が響いた。

(やべ、騒ぎすぎた……)

 苦情を言われるのでは、とビクビクしながら扉に近づき、ゆっくり開ける。

 そこに立っていたのは――遊太と凛だった。

 ヨルは反射的に頭を下げる。


「ごめんなさい!」


 返事がないので、おそるおそる顔を上げると、二人が呆気にとられたように立っていた。


「な、先輩たちか……びっくりしました」


 ヨルが胸を撫で下ろすと、遊太がニッと笑った。


「ヨル、一人なんだろ? 部屋の外からリキと響が楽しそうに出ていくの見えたぞ。響なんか女連れてたからな」


「リキは昨日会ったアメリカの子と遊びに行って……響は補佐の山田さんとデートらしいです」


そう告げると、遊太も凛も、同時に「は?」という顔をした。


「響がデート? そんなバカな……。ってか補佐の山田って……ああ、いつも戦闘服しか見てなかったから分かんなかったのか」


 遊太は納得したように頷き、ヨルを覗き込む。


「で、ヨル。……お前、ぼっちか?」


 ヨルは少し俯き、蚊の鳴くような声で答えた。


「……そうですよ」


 その瞬間、遊太がパッと手を叩いた。


「よし。なら先輩の出番だな。――三人でアメリカ観光行くぞ」


 隣で凛も、親指を立てて、手を軽く横に振っていた。

 ヨルはその優しさに胸が熱くなり、顔を上げて勢いよく答えた。


「――はいっ!」


 こうして三人は、笑いながらアメリカ観光へと繰り出していった。



 しかしその頃。

 総理の部屋では、望月隊長と蓮が揃い、重々しい空気の中で次の会議に向けた打ち合わせが進められていた。


 リキも、響も、そしてヨルも

それぞれの場所で、束の間の自由を楽しんでいた。


 だが、その平穏は静かに、確実に終わりへ向かっていた。

二十三話ありがとうございます碧甫です。

最近は週一投稿になってしまっているので自分でも整理するため前書きに登場人物をまとめてみました。

それではまた次回

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