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五年子達〜呪われた世代が神を討つ〜  作者: 碧甫
第三章 ホワイトハウス編 
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二十二話 ロストコイン




『まもなくワシントン州に着きます』

 零部隊専用機の無線から声が聞こえる。

 日本を夜に出発したリキたちは、目を覚ますと翌日の昼頃にはついにアメリカに到着していた。

 A組のみんなにとって海外は初めてで、期待と緊張で胸がいっぱいだった。


 軍用機はアメリカの空軍基地に着陸する。

 リキは窓の外に広がる何もない平原を見て息を呑んだ。

 そして、広大な土地に軍用機が次々と止まると、そこには大勢の軍隊が出迎えていた。


「ようこそ、アメリカへ」


 本場の英語に、リキたちは思わず興奮する。


 総理や大臣が先頭を歩き、その後ろに望月隊長が整列した軍隊の間を無言で進む。

 さらにその後ろに蓮と風吹先生、そしてリキたちが続く。


 リキは左右を交互に見ながらつぶやいた。


「すげー、みんなでっけぇー。なんか急に偉くなったみたいだな」


 後ろのヨルに声をかけると、ヨルは少し苛立ったように言った。


「ああ、それはいいから、早く行けよ。前、空いてんぞ」


 表では冷静に振る舞うヨルだが、心の奥では興奮が沸き上がっていた。


 さらに後ろでは響が手を振りながら歩いていた。

 それに気づいた補佐の山田さんが苦笑しながら声をかける。


「響くん、恥ずかしいからやめてください」


 その後、リキたちは空軍基地から軍用車に乗せられ、目的地であるホワイトハウスへ向かう。

 道中、アメリカの街並みを楽しみにしていたリキだったが、カーテンで完全に遮断されており、外の景色は全く見ることができなかった。



 ホワイトハウスに着くと、大統領と数名の大臣が日本の総理と握手を交わし、そのまま建物の中へ入っていった。

 望月隊長と風吹先生も同行する。

 蓮は会議室に入る前、リキたちに軽く目を向けた。


「田中、佐藤、山田、頼むぞ。

それと、A組、ここから先は自分たちで考えて任務を全うしろ。」


 蓮は補佐三人とリキたちに一声かけると、そのまま会議室へ入っていった。


 代わって、補佐の田中さんがリキたちに指示を出す。


「ここからは二人一組で分かれてもらいます。

私と佐藤は会議室の扉前、

ヨル君とリキ君は会議室東側の通路、

遊太君と凛君は西側の通路、

そして響君は山田さんと階段下の警備をお願いします。」


 全員、それぞれの定位置についた。


 リキたちの東側通路には、アメリカ側の警護として一人の青年がいた。

 彼もまた、リキたちと同じく五年子である。


「こんにちは」


 佐藤さんの言語授業のおかげで、リキたちは英語を話すことができた。


 青年は一度立ち止まり、リキの方をちらりと見たが、そのまま無言で通り過ぎていく。


「俺の英語、下手だったかな……」


 少し落ち込むリキに、隣のヨルが軽く肩を叩く。


「リキ、普通、国のトップの会議で相手の国の人に話しかけたりしねぇよ」



 警護を始めてから、すでに四時間が経過していた。

 時折、廊下の窓に人影のようなものがちらりと見えるが、すぐに消えていく。


 立ちっぱなしで疲れたリキは、思わずぼやいた。


「早く敵、来ないかな……。ずっと立ちっぱなしで、流石にしんどいよ」


 ヨルが横で答える。


「敵が来ることを望んじゃダメだろ。まぁでも、なんせホワイトハウスだからな。アリ一匹だって中には入れない」


 二人の集中力もそろそろ切れかけた頃、再びアメリカの青年が通路に現れた。

 この四時間、彼はホワイトハウスをひとりで巡回していたのだ。


 リキの前を通り過ぎるとき、青年の小声が耳に届く。

 リキは思わず口を開いた。


「何してるの?」


 不意の声に、青年は少し驚いた。

 返事をしようか迷ったが、四時間も一人だったせいか、つい会話に応じる。


「ゲーム」


 リキは返事をもらえたことに嬉しくなり、さらに聞く。


「どんなゲームなの?」


 青年は少し笑みを浮かべ、説明した。


「簡単なコインゲームさ。流石に暇すぎて、やることなかったからね」


「えっ、じゃあ俺たちも混ぜてよ!」


 リキはすぐに頼むが、横のヨルが制止する。


「おいリキ、今は任務中だ。遊ぶなんて言語道断だろ」


 ヨルは青年を一瞬、鋭く見つめる。

 青年はその視線を受け止めつつ、淡々と言った。


「君たちは日本の警備で来てるんだろ?

まぁ、ここはこんな警備がいるほど入りやすい場所じゃない。外でずっと飛んでる影も見えるだろう。あれは俺たちの仲間だから、外の見張りはある。だから、ここはそんなに堅苦しくならなくても大丈夫だよ。俺はポーカー・ベッテン」


「よろしく、ポーカー。じゃあ俺たちもゲームやっていい?」


 リキは目を輝かせて聞く。


「俺はやらないぞ」


 ヨルは即座に断る。

 しかしポーカーはリキを見て少し考えたあと、笑った。


「そうか……一人じゃ退屈だし、まぁ一緒にやるか」


 ポーカーは両手に二枚ずつコインを取り、片方をリキに差し出した。


「君の名前は?」


「俺はリキ。あっちはヨルさ。よろしく」


「よろしく、リキ」


ポーカーはリキをチラリと見て、ゲームの説明を始めた。


「俺の考案したゲーム、その名も『ロストコイン』。ルールは簡単。自分の持ってるコインを全部相手に渡した方が勝ちだ。


まず、1人二枚ずつコインを持った状態でスタート。先行が一枚以上コインを持って、その面も決める。後攻はその枚数と面を当てる。


枚数と面の両方が当たったら、相手に自分のコインを一枚渡す。枚数だけ当たって面が外れた場合は何も起こらない。枚数も外れたら、相手から一枚もらう。これを交互に繰り返すんだ。


もし自分のコインが一枚だけの時は、相手は枚数がわかるから、面だけを当てる。面が当たればコインを渡す。外れたら何もなし。単純だろ?」


 長々とした説明にリキは少し眩暈がした。


「ごめん、あんまり理解できなかった」


 リキが申し訳なさそうに言うと、ポーカーは笑って答える。


「まぁ、やってるうちになれるさ。とりあえずやってみよう」


 そう言うと、ポーカーはリキにコインを二枚渡した。コインにはキングとクイーンが描かれていた。


「じゃあ、試しに俺が最初に握るよ」


 ポーカーはコインを握った拳をリキに突きつける。


「さぁ、当ててみて」


 リキはあまり理解していなかったので、適当に答える。 


「じゃあ、一枚でキング!」


 ポーカーはそっと拳を開けた。中には一枚のキングが入っていた。


「お見事。両方当たったから、コインを一枚俺に渡して」


第1ターン目終了

リキ 1枚 ポーカー 3枚


「次はリキの番だね。でも一枚しか持ってないから、俺はキングかクイーンを当てるだけだ」


「よし、決めた」


 リキはクイーンの向きで握り、ポーカーの前に拳を出す。


「うーん、じゃあキング」


「ざんねーん、クイーンでした」


「ちがったかぁ。今回はコインの変動なしだね」


第2ターン目終了

リキ 1枚 ポーカー 3枚


「リキ、ここで当てたら君の勝ちだよ。頑張って」


「あれ、もう勝っちゃうの? なんだかよくわからないけど、頑張るぞ」


 リキは張り切る。


 ポーカーは拳を差し出し、リキの前に持ってくる。


「さあ、当ててごらん」


「うーん、じゃあ一枚でキング」


 ポーカーはニヤリと笑った。


「残念、今回は3枚でした。じゃあ俺の勝ちだからコイン一枚もらうね」


第3ターン目

リキ 2枚 ポーカー 2枚


「これで最初の状況に戻ったね。大体理解できた?」


 ポーカーが聞くと、リキは少し困惑しつつも答える。


「うーん、とにかく当てればいいんだよね。わかった」


「よし、手元2枚ずつだし、もう一回最初からやろう」


 ポーカーは再びコインを握り、リキに見せた。


 リキは少し考える。

(そうか、枚数が多い方が面を当てるのが難しいな……でも相手もわかってるはず。よし、裏をかいて一枚にしよう。俺、結構頭いいかも)


「じゃあ一枚でクイーンかな?」


 リキは意気消沈した顔で拳を開く。中には一枚のクイーンが入っていた。


「よし、僕の勝ちだ」


 ポーカーは微笑み、リキを見る。


「な、なんでわかったの?」


 リキは少し傷ついた。

 遠くでヨルが呆れながらもリキの肩を叩く。


「やっぱお前、頭脳戦は向いてないな」


 そのとき、東通路の窓から一匹の鳥が飛び込んできた。


「敵か?」


 ヨルが急いで戦闘体制に入る。

 ポーカーは首を振る。


「違う、仲間だよ」


 外から現れたのは、ワシのような翼を持った人間だった。


「ポーカー、あんま馴れ合うな。もっとちゃんと警備しとけよ」


「すまない、イーグル。気をつけるよ」


 ポーカーは外の男を指差し、リキ達に言った。


「彼はイーグルフリード。俺たちと同じく外周を警備してる。彼のおかげで、内側の警備はあまり必要ないんだ」


 リキとヨルはイーグルに軽くお辞儀する。

 イーグルも少し誇らしげに窓から飛び立った。


 外の世界で活躍する新たな五年子たちを見て、リキもヨルも胸を躍らせた。


三章始まりました。碧甫です。ここ最近忙しくてあまり書けてなくて申し訳ないです。今後も週一投稿になるかもしれませんのでよろしくお願いします。それではまた次回

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