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五年子達〜呪われた世代が神を討つ〜  作者: 碧甫
第二章 零特専校編
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第十五話 日常に紛れた影


 ピピッ、ピピッ、ピピッ——

「ん……」

6時30分

 リキ達の一日が始まる。

 歯を磨き、制服に袖を通す。

——零部隊管轄・特異専門学校。通称「零特専校」。 制服の胸には、戦闘服と同じ“零”の文字が刻まれている。男子は黒のスーツに赤いネクタイ。女子は黒スーツとスカートに赤いリボン。


6時45分。

 準備を終えたリキは、まず響の部屋の前に立った。

「ひびきー!遅れるぞ!」

ドンドンドン

 何度かノックすると、ようやく中から声が返る。

「んんっ……」

 起きたらしいのを確認して、リキは次にヨルの部屋へ。

「おはよう」

 まだ寝巻き姿のヨルが眠そうに顔を出す。

「リキ、朝からうるせぇな」

「えへへ……ヨル、ネクタイ締めて」

 リキはネクタイを結ぶのが苦手だ。

 毎朝こうしてヨルに頼んでいる。

「いい加減覚えろよ」

 ヨルに呆れられながらも、リキはケロッとしている。


7時05分

 二人で部屋を出る前に、もう一度響の部屋へ。

「ひびきー!」

「うるせぇっ!起きてるっての!」

 耳を塞ぎながら響が出てきた。三人そろって寮を出る。

 寮の一階の端には、他とは違う重い鉄扉が一つ。

 鍵が何重にもかけられ、監視カメラが常にその前を見張っている。

 リキは通りすがりに、ふとその扉を見た。

「……ここ、やっぱ気味悪いな」

「気にすんな。ただの保管室だろ」

 ヨルがそう言って肩をすくめる。


7時30分

 学校に着くと、まずは食堂へ。

「らっしゃいらっしゃいらっしゃい!」

 すっかり慣れたが、シゲさんはいつでも元気だ。

「シゲさん、おはよう!」

「おう、お前ら。朝からシゲちゃん特製モーニングで体力つけろよ!」

 三人は席につき、湯気の立つプレートを前に目を輝かせた。


7時50分

 食べ終わる頃、女子二人が食堂に入ってくる。

「リキ!あなた朝からうるさいですわ!三階の女子部屋まで聞こえましたの!」

 文句を言いながら、ジーリンがやってくる。

「ごめんごめん。響が何回叩いても起きないからさ」「俺は一回で起きたわ!」

 響が反論しても、周囲は笑っている。


8時00分

 教室に戻った三人は、すぐに戦闘服へ着替え校庭へ。始業までの30分、休憩なしのランニング。基礎体力の鍛錬だ。


8時30分

 息を切らせて戻ると、すでに女子たちも着席して授業が始まる。

 この日の一限は「多国言語学」。将来の外交任務を見据えたカリキュラムだ。

 先生は黒人の佐藤先生——本名はワンバラ・トゥンガ・ウェレナオロ。アフリカ出身で、英語にフランス、ポルトガルにイタリア語、そして日本語まで自在に操る多言語の達人だ。学生たちにとっては発音も授業もハードだが、どこか惹き込まれる熱を持っている。

 その後、数学や、社会などを学び——


12時00分

 昼休み。五人は迷わずシゲさんのもとへ。

 食堂の扉を開けると、もう香ばしい匂いが漂っている。

「おう、お前ら!腹減ったろ!」

 すでに全員分の昼食が並んでいた。


12時30分

 昼食を終えた彼らは、午後の地獄訓練に備え30分だけ仮眠をとる。


13時00分

 チャイムと同時に飛び起き、戦闘服に着替え、校庭へ急ぐ。


13時15分

 集合時間を5分過ぎて、最後に蓮がのんびり現れた。

「あー、眠っ……お前ら、早起きすぎだろ」

「ジョニーさんが遅すぎるんですよ!」

 昼過ぎだというのに、蓮はまるで今起きたばかりのような顔をしていた。

「さて——午後は能力訓練だ。今日の課題は“応用反応訓練”。」

「応用反応訓練?」

 リキが小声でつぶやくと、ヨルがすぐ横で答える。

「要は“咄嗟の判断力”だ。攻撃を見てから防御してたら遅い。感じるより先に動けってやつだな。」

「そうそう、それ。」

 蓮が軽く指を鳴らすと、校庭の中央に的が浮かび上がる。全員の前に一つずつ、球体型のドローンが展開された。

「このドローンはお前らの動きを感知して攻撃してくる。壊すなよ、避けるのが目的だからな。」

 そう言った途端、ドローンたちは一斉に動き出した。各自がそれぞれの能力を駆使して攻撃をかわしていく。光が反射し、水が舞い、時間が歪む。

 だが——リキだけは違った。

「よしっ!」

 拳を握り、ドローンに向かって突撃。

 瞬間、乾いた破裂音。ドローンは粉々に砕け散った。

 蓮は頭を抱えた。

「リキ……今日は“避ける訓練”なんだよ。なんで毎回壊すんだ。あれ一台いくらすると思ってんだ?

あぁ、また望月隊長に怒られる……」

 リキは苦笑いしながら頭をかいた。

「ご、ごめんなさい……」


17時00分

 一通りの訓練が終わり、最後に神気測定が行われた。

 午後の訓練が終了する頃には、太陽が赤く傾き始め、校庭全体が黄金色に染まっていく。

「今日はここまで!シャワー浴びて飯食って寝ろ! 明日も訓練だからな、寝坊すんなよ!」

「ジョニーさんこそですよ!」

 響の声とともに笑いがこぼれる。

 

 シャワーを浴び、汗と砂を流した後、教室に戻ったリキたちは、それぞれの時間を過ごし始める。

 夕食までの間は、寮で休むか、各々が好きなことをして過ごすのが日課だ。


18時00分

 寮に戻ると、リキとヨルは屋上へ向かった。

 夕陽が水平線へ沈んでいく。橙色の光が二人の横顔を照らす。

 二人は屋上の柵にもたれながら、五十嵐さん達を思い出す。

 屋上の反対側では、毎度のようにジーリンが紙飛行機を飛ばしていた。風に乗った白い紙が、沈む夕陽の中をゆっくりと滑っていく。


19時00分

 シゲさんの夜飯タイム。鍋から立ち上る香ばしい匂いが、今日一日の疲れを一気に吹き飛ばす。

「おうおう、みんな!今日もよく頑張ったな!

夜は特製――“シゲちゃんビーフシチュー”だぁ!」

 その声と同時に、食堂が一気に明るくなる。

 湯気の向こうから漂う肉と野菜の甘い香りに、誰もが思わず笑顔をこぼした。

 笑い声と食器の音が響く中、五人の小さな日常がそこにあった。


20時00分

 夕食を終えて寮に戻ったリキたちは、それぞれの夜を過ごしていた。



 響の部屋では、いつものようにお母さんと通話していた。

 小さな画面の中で、優しい笑みを浮かべた母の顔が映る。

「響、友だちとは仲ようしよると?」

「うん。母ちゃんも無理せんでな。いつか俺が、腹いっぱい食わせちゃるけん」

「母ちゃんは大丈夫たい。響も、自分の人生、楽しまな損ばい」

 お母さんとの会話の中では地元の方言がつい出てくる。

 通話が終わると、響はほんの少し目を潤ませながら、

「……よし」

 と呟いて机に突っ伏した。



 真里もスマホを手に、家に電話をかけていた。

「うん、ちゃんと食べてるよ。……ペガちゃん元気?」

「ワンッ、ワンワンッ!」

「ふふ、そっか。……またペガちゃんに、抱きしめてもらいたいな」

 電話の向こうでは、母の優しい声とペガちゃんの鳴き声が聞こえた。

「……うん!それじゃまたね」

 通話を切ると、彼女はそっとスマホを抱きしめた。



 ヨルの部屋。机の上には針と糸。彼はじっと針を見つめ、タイミングを測るように息を整えた。

 次の瞬間、針を真上に掲げ——そのまま落とす。落下するわずかな一瞬で、糸を通そうとするが――

「くっ、また失敗か……」

 自分の能力を少しでも向上させようと毎日ヨルは練習していた。

 机の上は無数の小さな穴だらけ。それでもヨルは諦めず、何度も挑戦を繰り返していた。



 ジーリンの部屋。壁には龍天嵐ロン・テンラン――彼女が推している中国の俳優のポスターが貼られている。

 天嵐が微笑む視線の下で、ジーリンは夢中でノートに何かを書いていた。



 リキの部屋。机の上には開いたままのノートとペン。宿題の途中で寝落ちしたリキの頬には、インクの跡が少しついている。

 窓の外では、夜空に無数の星が瞬いていた。その柔らかな光が、静かにリキの寝顔を照らしている。



——寮の一階。重い鉄扉の向こうで、低い男の声が響いた。

「……あと二日、か」

 薄暗い部屋の中、服の右腕に書かれた文字が蛍光灯の光を反射して浮かび上がる。——F-2。


 こうして、零特高専の1日が終わりを迎える。

十五話ありがとうございます。碧甫です。

今日はリキ達の1日を書いてみました。

日常の中に紛れた影。一体誰のことなのでしょうか。

それではまた次回

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