表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王殲滅  作者: 蒼乃
7/9

交渉


こうして、調査団はリークとテレサを除いて出発した。

だが──1ヶ月の調査を終えても、彼らが目にしたのは、ただ果てしなく続く霧と、沈黙する平原だけだった。

サイクロプスの影はなく、原因となるような魔法の痕跡すら見つからなかった。

唯一変わらなかったのは、深い霧が晴れる気配すらないということだった。

《メルティエールは、孤立したままだった》

名は「蒼蓮の書楼」。

この国の中でも最古の記録を有する図書館で、まるで聖域のように静かな空間だ。書楼の名は、その蒼き蓮の紋章を掲げた創設者の一族に由来する。

陽光を取り込む高い天窓、幾重にも積まれた古書の山。空気は紙とインクの香りで満ちていた。

リークとテレサは、朝からずっとそこにいた。




「やっぱり全部読んで調べるのは無理があるな……」

リークはぼそりと呟きながら、天井にまで届きそうな書棚を見上げる。

「数十万冊もあるって、書庫の管理人さんが言ってたわ。探すだけで一生終わるかもしれないわね」

テレサもため息混じりに言った。

だが諦めなかった。

2人はそれぞれ散って、関連しそうな本を片っ端から目で追った。書棚の上段にあった古書が気になったリークは、踏み台に足をかけて手を伸ばす。

そのときだった。

**「パタン」**と音を立てて、一冊の本が自然に床に落ちた。

リークは一瞬息を呑む。

まるで「読め」と言わんばかりの偶然。

「テレサ、ちょっと来て」

そう声をかけながら、そっとその本を拾い上げる。

装丁はボロボロで、金属の留め具が外れかけている。だが中身は……不思議と風化していなかった。

テーブルに運び、2人でページを開いた。


書物の内容(抜粋)

『時は遠き昔。

忽然と現れた霧により、幾つもの町が道を見失い、交易は断絶された。

霧の中には見えざる“魔の獣”が潜み、旅人を飲み込むと伝えられた。


人々はそれを「モンステラの霧」と呼んだ。


魔王モンステラ――それは霧と共に現れ、国を一夜で飲み込むほどの存在であったが、

勇者によって討たれ、記録の奥に葬られた。』


ページを繰るごとに、リークとテレサの目は見開かれていく。

「霧の被害……交易の断絶……サイクロプスの出現。全部……今と重なってるじゃない」

テレサが声を落とす。

「でも、モンステラって魔王は……倒されたはずだよね?」

リークも戸惑いを隠せない。

だが、偶然とは思えなかった。

まるで何かが「忘れられた真実」を告げようとしているかのように。

「記録が事実だとすれば……可能性はゼロじゃない」

テレサは強く本を閉じた。

「このこと、誰かに――」

その瞬間だった。

窓の外、王都の通りを小さな一団がゆっくりと歩いていた。

「……ねえ、あれ……」

テレサが窓辺に近づいて言う。

兵士たちが、何かを囲むように警戒しながら歩いていた。中にはフードを被った男女。父と娘らしき姿。そして娘の胸には、小さな丸い何かが隠れているように見えた。

「スライム……?」

緑色の髪が、午後の陽に煌いていた。

その異質な雰囲気に、テレサの勘が鋭く反応する。

「怪しいわね……行ってみましょう」

「図書館から?大広間まで……」

「今、動かなきゃ後悔するわよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ