03 - 迷子?
すいません、遅くなりました!
モノラスへ向かうように言われ、2時間くらい歩き続けていた。しかし・・・
「・・・迷った?」
おかしいな?アズエルに言われた通りにまっすぐ歩いていたはずなのに、まだ森を抜けられない。
途中でリンゴのような木の実とったり、見たことない草を観察したりしてただけで、方向はあっていたはずなのになぁ・・・。
私は少し広がった場所を探し、そこで休憩することにした。
やけに落ち着きすぎてる?だって森を抜けれないんだからしかたないじゃん!お腹も空いてきたし!
先ほど取ったリンゴのような木の実をアイテムボックスから取り出そうと中を確認すると、木の実の他にはアズエルから貰ったお金の入った小袋のと、手紙が入っていた。
木の実を取り出し、一口齧る。う~ん!おいしい!味はリンゴだ!
そして私は木の実を食べながら、手紙を読む。内容を読んで、私はすごいワクワクしてきた!
だって手紙の内容は、魔法に関してのことだったんだもん!
火魔法の『炎球』、水魔法の『水弾』、雷魔法の『電撃』、風魔法の『風刃』、土魔法の『土壁』といった、5属性の攻撃魔法の使い方だ。
私の場合、『魔法創造』で簡単にできるそうだけど、想像力が必要らしい。他の魔法は自分の目で見て覚えるか、基本魔法の応用で自分だけの魔法を創造できるそうだ。というか、魔法が作れるというのは、まさに最強なのでは?!
想像力があれば、最強な魔法も作れるなんて、『魔法創造』って最強じゃんか!これに関してはアズエルに感謝してもいいね!
ただ一つだけ、属性が書かれていない魔法があった。名前がやばそうだから覚えないようにしよう。しかもこの魔法だけ詠唱が書かれていて、危険そうだし見なかったことにしよう。
それより!魔法よ魔法!さっそくやってみよう!
まずは炎球・・・は、もしできたとしても、まだ森を抜けれてないし、暴発して火事になったら大変だし、これは後回し!
じゃあ水魔法の『水弾』かな?幸い、周りは木がたくさんあるから的としてちょうどいい。
私は右手を1本の木にかざし、水のボールを想像すると、野球ボールくらいの水の塊が現れた。
すごいすごい!私本当に魔法使えてる!ではさっそく!
「水弾!」
その瞬間、水の塊が狙っていた木に命中!当たった木はバキバキバキ!っと音を立てながら倒れた。
これが水弾・・・バレットっていうくらいだから、弾丸みたいになるのかとおもったけど、感覚的には水の塊を木に当てただけだった。
まてよ?さっき私は野球ボールをイメージしちゃってたから、弾丸みたいにならなかったんじゃないか?よし、もう一度やってみよう!
さっき狙っていた木の隣へ手をかざし、もう一度水弾を試す。今度は野球ボールではなく、弾丸をイメージして・・・。
「水弾!」
バンッ!
思った通り、水の塊は弾丸の形となり狙った木に命中!もしかしてこれって、込めた魔力によって威力や弾丸の数が増えたりしないかな?よーしいろいろ試してみるぞ!
アズエルからの手紙に書いていた魔法を全て試していると、気づけば空はオレンジ色になりかけていた。って、夢中になりすぎた!やばいどうしよう!まだ森抜けてないのに、このままじゃ野宿することになっちゃう!
さすがに野宿は避けたいと思った私は、風魔法の飛翔を唱え、森の上まで飛ぶ。
さっきの魔法の練習中、空も飛べないかと試していたら習得したのだ。空を飛べば、モノラスもすぐみつかるだろうしね!
森の上空で止まり、周りを見渡すと、街らしき場所を見つけた。
私は街らしき場所を目指してひとっ飛び~。
まぁさすがに街中に飛び降りるわけにはいかないから、近くに降りて、街に入った。
「うわぁ~・・・」
街の様子は人で賑わっており、アニメや漫画で見たことあるようなザ・異世界!って感じがする。
ここがモノラスなのかな?
少し街の中を散策することにした。特に屋台!アクセサリーや魔道具っぽいものが並んでて興味をそそられる。
ぶらぶらと歩きながら屋台をみていると、いい匂いがしてきた。
ぐるるるぅ~
お腹の音がなり、いい匂いに釣られて屋台の前までくると、お腹のでているおじさんがたくさんの串焼きを焼いていた。どれもおいしそう!
「へいらっしゃい!おや、お嬢ちゃん見かけない顔だね」
「あ、はい。さっきこの街についたばかりです」
「そうかいそうかい!ようこそ、モノラスへ!」
そう言って、屋台のおじさんはさっき焼いていた串焼きを渡してきた。
私は少し戸惑いながらも、串焼きを受け取り、一口食べてみる。
うわっ!なにこれ!?噛めば噛むほど肉汁があふれてくる!味は豚肉に似てるかな?
「はっはっはっ!そんなに美味しかったか?サービスしてよかったぜ」
「ありがとうございます!これすごくおいしいです!あの、ちなみになんのお肉なんですか?」
「これか?オークの肉だよ」
「えっ・・・?!」
「ん?オークを知らないのか?冒険者ギルドからいつも仕入れてるんだ」
オークって、異世界の定番モンスターだよね?やっぱりいるんだ。それにしても、オークの肉ってこんなにおいしいんだ。オークと聞いて一瞬驚きはしたけど、不思議と抵抗感はなかった。魔族に転生(不本意)した影響もあるのかな?
って、ちょっとまって冒険者ギルドがこの街にあるの!?
お金稼ぎもしたかったし、異世界に来たならやっぱりハンターギルドには行きたいよね!
「おじさん!冒険者ギルドってどこですか?」
「お?嬢ちゃん冒険者ギルドに行きたいのか?それなら明日行ったほうがいい。なにやら今日は冒険者ギルドは慌ただしいようだからな。だから今日は宿に行って旅の疲れを癒しな」
なにこのおじさん、すごくやさしいんだけど。しかし冒険者ギルドが慌ただしいって、いったいなにがあったんだろう。今回はこの優しいおじさんの言うことを聞いて、おとなしく宿でも探そうかな。
親切おじさんは近くにいい宿屋があると教えてくれた。ほんと感謝しかない。今度はちゃんとお金払って串焼きいただくよ。
私は親切おじさんにお礼を言って、さっそく教えてもらった宿屋へ向かった。
目印を教えてもらったおかげで、宿屋はすぐに見つかった。
中に入ると、カウンターに優しそうなおばさんが笑顔で迎え入れてくれた。
「いらっしゃい!何泊していくかい?」
「えっと、とりあえず2泊でお願いします」
「あいよ。うちは1人1泊1500エルだから、2泊で3000エルね」
アズエルの手紙には、この世界のお金の単位のことも書いていて、どうやら前世の単位と同じらしいから、安心していいようだ。ちなみにアズエルからもらったお金は5万エルあった。割と気前のいい堕天使である。
私は言われた通りにお金を払い、カギをもらって案内された部屋に入って休むことにした。
荷物も特にないし、正直疲れてないけど、部屋のベッドに倒れこむ。さっきまで魔力の練習をしてたというのに疲れないのは、魔族だからなんだろうなー。私の魔力は底なしか!
ベットから上体だけ起こして、部屋の隅に置いてある魔道具のランプに明かりをつける。
あ、そういや魔法どれくらい増えたかな。
「ステータスオープン」
==============================================
名前 :イルミナ ♀
年齢 :16
種族 :人間
レベル:10
称号 :堕転の女神の使者
HP :1780/1780
SP :520/520
STR:135
AGI:165
VIT:180
INT:200
DEX:130
LUK:170
アクティブスキル
水弾・氷結・氷の剣
電撃
風刃・飛翔
土壁・石弾
身体強化
パッシブスキル
魔法創造
完全鑑定・隠蔽・危機感知・全状態異常耐性・剣術・武術
==============================================
偽装の腕輪を装備しているからか、実際どれくらい魔力を消費しているのかわからないけど、結構魔法覚えたなぁ。
魔法は一度覚えたら、その魔法から派生させることができて、いろいろ覚えることができた。
あの森での練習は楽しかったなぁ。さすがに森の中で火属性魔法を使う勇気はなかったから覚えなかったけどね。
それにしても、自分だけの魔法を作れる魔法創造って本当に優秀だなぁ。創造するだけで、その魔法ができちゃうんだから。
特にできて感動したのは氷の剣!水を凍らせることできたりしないかな~って考えてたら水の塊を出して氷を想像したら氷になってもしやと思ってやってみたらできたからもう感動!
森の木を試しに切ってみたらゼリーのようにスパスパ切れて気持ち良かった。
うれしすぎて氷の剣で木を切ってたらいつのまにかスキルの剣術もついたし、身体強化ができるようになったら武術のスキルも覚えたみたい。いや~どんどんチートになっていくね!このまま最強目指すのも悪くないかもしれない。
ただ、勇者討伐に関してはまだ気が引けるから、当初の目的通り5つの神器の破壊をするつもりだよ。
よし、外はもう暗くなってきたし、今日は寝て明日冒険者ギルドに行って情報収集だ!
私は魔道具ランプの明かりを消し、心を躍らせながらベッドへダイブして、そのまま眠りについた。
* * *
イルミナがモノラスへ到着する少し前、冒険者ギルドで事件が起きていた。
「なぁ聞いたか?今モノラスの森でデカい魔物が大暴れしてるらしい」
「え?俺が聞いたのは、盗賊団が魔道具を使って森を破壊しようとしているって聞いたぞ」
「まじかよ。確かに爆発のような音もしてたらしいし、木が倒れる音がすごかったらしいぜ?」
冒険者ギルドの飲み屋スペースで、二人の冒険者がそんな話をしていた。
そんな二人の冒険者に近づく、一人の女性がいた。
淡い栗色の長い髪、瞳はエメラルドグリーンの綺麗な見た目で、騎士のような恰好をしている。
「すいません。その話、詳しくお聞かせてもらえますか?」
噂話をしていた二人の冒険者は一瞬驚いたが、情報を話した。
騎士の女性は二人の話をきいてすぐに冒険者ギルドを飛び出し、情報を元に馬で現場へ向かった。
モノラスの森を訓練場にしていた彼女にすれば、庭も同然。特徴を聞いてすぐに場所はわかっていた。
そして現場へ到着し、その光景をみて彼女は驚愕した。
「これは・・・」
不自然に伐採された木。切り口は焦げていたり、少し凍っている箇所があったり、濡れている箇所があった。
草も木も駆られていて、まるで大きな魔物が暴れていたようにも、魔道具で森を焼いたような、悲惨な状態になっていた。
魔物の気配も、盗賊の気配もないのが不思議だ。一体ここで何が起きたんだろう。
彼女はこのことをギルドマスターへ報告するために、再び馬にのってモノラスに戻ろうとしたその時、
上空に人影らしきものが見えた。
顔は見えなかったが、何やら辺りを見渡しているようだった。
人影はきょろきょろしたかと思えば、すぐにどこかへ飛んで行った。
「あの方角は・・・モノラス?」
彼女は急いでモノラスへ馬を走らせる。が、途中で空に浮かんでいた人影を見失ってしまった。
焦っても仕方ない、一先ず急いでギルドマスターに報告しなくてはいけない。
馬を走らせながら、彼女は通信用の風の魔道石を懐から取り出し、ギルドマスターへつなげる。
『おう、カーラ。どうした?』
「マスター、モノラスの森で不審な事件が起きたようです。急ぎ調査隊の編成をお願いできますか?」
『不審な事件?どういうことだ』
事情を簡潔にギルドマスターに話すと、ギルドマスターは二つ返事をして通信を切った。
通信用の魔道石を懐に直し、
「あの人影はなんだったんだろう・・・モノラスは大丈夫かな」
不安な気持ちを抱きつつ、彼女はモノラスへ急ぐのだった。
アズエル「イルミナさん、初めての魔法はいかがでしたか?」
イルミナ「いやもう、最高だね!異世界転生してよかったよ!」
アズエル「それはよかったです!あ、自由にしていいとはいいましたけど、約束は守ってくださいね?」
イルミナ「わかってるわよ。あっ!でも情報もらってないからどこに行けばいいかわからないんだけど!」
アズエル「それはほら、情報は自分で集めて冒険するのが楽しめるかなって」
イルミナ「うっ、一理ある・・・」
アズエル「でしょ~?まぁモノラスで情報集めはできると思いますよ」
イルミナ「そうなんだ?魔法創るのが楽しすぎて、モノラスまだ探索できていないんだよね」
アズエル「ふふっ、楽しめているようで安心しました。次回からも頑張ってくださいね!」
イルミナ「うん!!最初は信用できないって思ってたけど、少しはあんたを見直したわ」
アズエル「え~少しなんですかぁ?」
イルミナ「当たり前でしょ!」