01 - 冒険の始まり
冒険だぁい(*^▽^*)
真っ暗な視界が、徐々に明るくなってくる。
目をゆっくり開けると、視界には青空が広がっていた。
どうやら私は、寝転がっているらしい。
頭がまだ朦朧としていると、見たことある金髪の女の子の顔が横からひょっこりと覗きこんできた。
「あ、おはようございます。目が覚めましたね?」
転生する前に見た、翼の生えた金髪の女の子だった。
彼女はニコニコと優しい笑顔でこちらを見ている。
「・・・おはよう、ございます・・・?」
私は彼女に答えつつ、ゆっくりと身体を起こし、あたりを見渡してみた。
緑が一面の草原。見慣れているビルやマンション等の建物がない場所である。
本当に、私は異世界にきたのだろうか?
「はい!あなたは私と契約し、無事に異世界プロンセラに来ることができました!」
女の子はパチパチパチと手を叩きながら、私が疑問に思っていたことに答えてくれた。
って、ちょっとまって?契約なんてしたっけ?
「えーっと、転生される前に、質問をされたと思うんですけど、その時に了承は頂いてますよ?」
あの時かー!確か聞かれたのって、今世に未練があるかと、異世界に興味があるか、彼女の手伝いをするか、だったよね?契約なんて言葉出てきてないきがするけど。
ん?ちょっと待てよ?そういえば、最後の手伝いについて、すごく気になることを言っていたような・・・。
そのタイミングで確か、私は意識を失っていた気がする。
「あ、覚えててくれました?そうです、あなたには勇者を倒してもらいたいのです!」
女の子はそう言いながら、剣を振りかざすジェスチャーをしている。
「ちょ、ちょっとまって!?えっ、転生したら勇者か英雄になって、魔王を倒すとかじゃないの!?」
そうよ!普通転生したら勇者や英雄になって、魔王と戦うんじゃないの?!
私が生前に読んでいた漫画やラノベも、そういうのが多かったし、少し期待してたんだけど!
「あはははっ!そんなありきたいじゃ面白くないじゃないですか!」
女の子は右手を口にあて、笑いながら言う。
なんか馬鹿にされてる気がするけど、今は無視しよう。
「それでは改めまして・・・こほん。私の名前は堕転の女神、アズエル。勇者討伐のため、あなたを転生召喚しました!」
堕転の・・・女神・・・?
堕天使とかはよくきくけど、堕転の女神って何・・・?
「そうですね、簡単に言うと、魔王側の女神でしょうか。この世界では数百年に5回ほど、勇者が異世界より転生召喚されたことがあります。ですが私は考えたんです。魔王側も転生召喚すれば、太刀打ちすることができるのではないか?と。魔王だって、勇者に勝てる世界線があってもいいと思いません?」
「む、無茶苦茶すぎるっ!そもそも、魔王は人間を滅ぼしたり、悪いことばかりするやつらのことでしょ?そんなのーーー」
「それは、人間たちのエゴですよ。魔族たちからすれば、言いがかりのいい迷惑です。魔族だからという理由で、何故討伐されないといけないのですか?なので人間は滅ぼすべき存在です。下等で愚かしい生き物、それが人間ですよ?」
アズエルはそう言いながら、表情が少し険しくなっていた。
彼女の過去に、なにかあったのだろうか?
アズエルの言う通り、人間は愚かではあるが、すべての人間がそうではないと、私は思う。
「湿っぽい話はこれくらいにして!改めまして、ようこそ異世界へ!イルミナさん!」
「イルミナ・・・?」
「はい!せっかく異世界に転生したのですから、前世の名前を使われるよりはいいかと思ったのですが、お嫌でしたか?」
「イルミナ・・・か。うん、悪くない、かも?」
「ちなみに、ご自分の容姿とか、ステータスは気になりませんか?」
少し悪戯っぽい表情でアズエルが言う。
そうだ!今の私の容姿やステータスってどうなってるんだろう?
前世ではステータスなんて見れないし、ここは教えてもらわなきゃね。
「では、右手を出してください。手の平のを上にして、ステータス・オープンと唱えてください」
私は言われた通りに手の平を上にし、
「ステータス・オープン」
すると手の平の上に、バーチャル映像の様なウィンドウが現れた。
そこには、私自身の情報が記載されていた。
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名前 :イルミナ ♀
年齢 :16
種族 :魔族
レベル:99
称号 :堕転の女神の使者
HP :999,999/999,999
SP :1,999,999/1,999,999
STR:∞
AGI:∞
VIT:∞
INT:∞
DEX:∞
LUK:∞
アクティブスキル
魔法創造
パッシブスキル
完全鑑定・隠蔽・危機感知・全状態異常耐性
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・・・え?レベル99!?
それになにこの馬鹿げた数値は!?
いやいやいいや!!その前にめちゃくちゃ気になるとこがあるんだけど!
「私の種族魔族なんだけど!?え、人間やめちゃったの!?」
「まぁ、勇者を討伐するために召喚したので、魔族になるのは必然といいますか・・・あ、鏡いります?」
アズエルはそう言いながら、どこからか手鏡を私に差し出してきた。
私はそれを奪い取るように受け取り、自分の顔を確認した。
鏡に映った自分の顔をみて、驚愕する。
肌の色は薄紫色。目玉は真っ黒で、瞳は金色だった。
髪の色は少しピンクっぽく、頭の両サイドにはよく漫画等でみるような悪魔の角が生えていた。
これが、今の私の姿・・・。
「安心してください!割と魔族の中では美形ですよ?」
慰めるつもりでいったのか、アズエルはニコやかに言ってくる。
わくわくしていた異世界転生を果たしたというのに、私の心は晴れることはなかった。
私はこの瞬間、この堕転の女神を一生恨むと胸に誓うのだった。
アズエル「改めて、転生おめでとうございます!」
イルミナ「・・・」
アズエル「あれ?うれしくないんですか?念願の異世界転生ですよ!」
イルミナ「私が望んだ異世界転生はこんなんじゃない!」
アズエル「まぁまぁ、いいじゃないですか。魔族の中では美人ですし、モテモテですよきっと!」
イルミナ「嬉しくないわバカ!それになによこの化け物じみたステータス!」
アズエル「だってイルミナさん、チート能力欲しそうだったので良かれと思って」
イルミナ「それは否定しないけど・・・だからって魔族だなんて・・・」
アズエル「安心してください!次回はいいものをお渡ししますので♪」
イルミナ「はぁ・・・」