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第5話 ドラゴン幼女VS黒装束団

「ルナ、しっかり掴まってろ!」

「うん!」


俺はルナを小脇に抱えたまま、魔導市場の雑踏を駆け抜けていた。

背後からは、黒装束の集団と不気味な詠唱の声。


「《黒炎の鎖・拘束せよ》!」


ブュオオッン!


黒い鎖の形状をした魔法が回転しながら、屋台の隙間を這うように俺達目掛けて伸びてくる!


「ちょ、それ当たったら即アウトじゃん!? てか、市場でそんな魔法使うなよ! 迷惑考えろぉぉぉお!」


俺は果物屋の山を飛び越え、紙一重で鎖をかわした。


だが――


「《捕らえろ、忌子の竜》!」


ズドオオオン!


背後で屋台が爆発。人混みが悲鳴を上げ、辺りは騒然となった。


「誰だ、こんな事をやったのは!?」

「黒装束の集団がまた暴れてるぞ!!」

「あの子供が原因か!?」


視線が一斉にこちらを向く。


(くそ……巻き込みたくないのに!)


だが、逃げ切るにも限界がある。

そのとき、ルナが小さく呟いた。


「……カイン。にげて。あたし、つかまっても――」

「は? 何言ってんだよバカ!」


思わず怒鳴ってしまった。


「お前は俺の……大事な客だ。置いていけるわけねぇだろ!」

「……!」


ルナの赤い瞳が、一瞬だけ揺れた。

驚き、戸惑い、そして――ほんの少しの、喜び。

手が小さく震えている。


「……カイン。だいすき」


 ドラゴンと言ってもまだ子供。恐いんだろう。

 俺はルナの頭をそっと撫でてやった。

……その直後。

ルナの背中から、ぱさりと翼が広がった。


「ちょ、今ここで変身するのか!?」

「うん。おなかいっぱいになったから、ちょっとだけ。おりゃっ!」


バッサアアァァッ!!


白銀の翼が大きく広がり、次の瞬間――


その姿は、見る者すべてを圧倒する“真の竜”へと変貌していた。


煌めく鱗、鋭い爪、燃える瞳。


――銀鱗の竜、ルナ。市場上空に、顕現。


「うわあああああああ!!??」


「こらぁーー! “ごはんの人”いじめるなああああ!!」


ルナは黒装束の集団に飛びかかる。


* * *


「《魔力封鎖・結界展開》!」


黒装束たちは即座に結界を展開。ルナの動きを封じようとする。が、

空気が震え、地面にひびが走る。

鱗の隙間から魔力がにじみ出し――


「《白銀竜の咆哮》!!」


ズオオオオォォォン!!!


ブレス一閃。


「ぎゃああ!」

「なんだこの魔力……!?」

「竜種クラスじゃない……!?」


結界が砕け、黒装束たちが派手に吹き飛ぶ!


「おいルナ! それ以上やったら市場が……!」

「大丈夫。屋台だけ燃やす」


それが一番ダメーーーーー!!


* * *


ブレスで黒装束を吹き飛ばし、屋台ごと天高く打ち上げる。


「おお! あのドラゴン、空中殺法!?」

「観光イベントかな?」

「えっ今人が飛ばされたよね!?」


一部観光客にはショーと勘違いされ、スライム屋台には長蛇の列が。


「うちの生クリームは安全っスよー!! 飛びません!!」


妙な宣伝が功を奏していた。


「くっ……撤退だ。禁忌の竜が、ここまでとは……!」


黒装束の集団は煙玉で逃走。


(今、何か重要なこと言わなかった!? “禁忌の竜”って何だよ!?)


ルナはふぅっと息をつき、ふにゃっと幼女の姿に戻る。


「つかれた。おひるね……したい」


ぽてんと俺の足元に座り込む。その姿に、周囲からは一斉に拍手と歓声が。


「ドラゴンちゃん、すごーい!」

「あの子供、勇者の関係者!?」

「あれはきっと伝説の存在だわ!」


……と、同時に俺はというと、全身ガクガクで気絶寸前。


(……買い出しに来ただけ、だったんだよな、俺……?)


「カイン。つぎ、ごはん」

「まだ食うのォォォオ!!??」


* * *


その日の夜。

俺たちは魔界ギルドに戻ると――こう告げられた。


「市場の屋台半壊の責任として、《清掃ボランティア100日分》ね!」

「俺のせいなのぉぉぉぉ!!!」

「市場で起きたこともお世話係の責任だよ」


 愕然とする俺に、美人顔で拷問級のことを言うリリスさん。


「カイン、がんばってねー! ルナちゃん、めっちゃ強かったよねー!」

「うん、わたし悪い奴らやっつけたーーー」


(いや、お前せいだろおがぁぁぁ!!」


その日から俺の新たな役職は、


《ドラゴン幼女のごはん係 兼 市場清掃ボランティア隊長》


……誰かこれを“英雄”って認めてくれ。


だが、そんな日常すら――嵐の前の静けさにすぎなかった。


* * *


――――数日後


魔界ギルドに届いた、一通の手紙。

それはとある貴族からの“招待状”であり――

「禁忌の竜」にまつわる、世界を揺るがす騒動の始まりだった。

面白かったら本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです!

ブックマークもしていただくとさらに嬉しいです!

10話くらい投稿してブクマ付かなかったら続き辞めようかなと思います。

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