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06 ドーン・オブ・ザ・デッド

 周囲には、さらに多くの傀儡たちが次々と姿を現す。どれもおぞましい姿で、顔は青白く、四肢は痙攣し、口元から血を垂らしながらも、目にはわずかな意識の光が残っている。唇を震わせ「助けて…」「殺して…」と訴える者、かすかにすすり泣く者さえいた。だが彼らは容赦なく操られ、武器を握りしめて、かつての戦友へ襲いかかっていった。

「撃て!近づけるな!」

 指揮官が声を張り上げる。

 銃声が轟き、弾雨が傀儡たちへ降り注ぐ。しかし体内に根を張る蔓のせいで、手足を吹き飛ばされようと、胴が裂けようと、蔓さえ残っていれば彼らは前進を続けた。片脚を失った者は身を引きずり、片腕のない者は頭を仰け反らせ、顔を歪めながらも、蔓に操られた四肢でなお攻撃を繰り出してくる。

「こいつらは死なない!体ごと吹き飛ばすしかない!」

 副官が青ざめ、半ば叫ぶように声を上げた。

 重砲弾とロケット弾が次々と炸裂し、爆風が泥と血を巻き上げる。傀儡たちは粉々に砕け、蔓も黒焦げになった。だがそれでも蔓は津波のように押し寄せ、逃げ場のない勢いで数名の兵士の胸や喉を貫いた。血肉が飛び散り、絶叫が戦場を満たす。

 蔓の怪物は広場の中央にどっしりと根を張り、緋色の双眸で一同を冷然と見下ろしていた。地中からはさらに蔓が狂ったように噴き上がり、新たな傀儡たちがゆっくりと前へ進み出てくる。

 植物の傀儡たちは剣や銃、短剣を振りかざしていた。それだけではない――かつて神に授けられた能力までも失ってはいなかった。

 赤い光を宿す双眸の傀儡は、手をひと振りしただけで烈火を噴き上げ、兵士たちの列を瞬く間に炭へと変えた。炎が揺らめき、絶望の叫びが響き渡る。その傀儡は顔を歪め、唇を痙攣させ、涙と炎に濡れながらか細く呟く。

「ごめん……逃げて……もう、制御できない……」

 言葉が終わるより早く、炎がすべてを呑み込み、かつての戦友を灰へと帰した。

 別の傀儡が手を振ると、周囲の空気が一瞬にして凍りついた。兵士たちは透明な檻に閉じ込められたように、一歩も動けない。

 一人の兵士が目を見開き、叫んだ。

「やめろ!アーロン!聞こえるだろ!?」

 傀儡は苦悶の色を宿す目を揺らし、震える唇から、かろうじて声を絞り出した。

「た……すけ……て……」

 その声は今にも途切れそうなほど弱々しかったが、両手だけはなお、空気そのものを締め上げるように固く握りしめられていた。

 次の瞬間、圧縮された空気が悲鳴のように軋み、骨が砕け散る鈍い音が響く。兵士の身体は肉片となって崩れ落ちた。

 続いて、別の傀儡が低く唸り声を上げ、口から目に見える音波の波紋を吐き出した。

 その波動をかすめた兵士たちの血管は、血が沸き立つかのように膨張し、肌は真紅に染まり、絶叫が次々と上がる。

 一人の兵士が地面に崩れ込み、頭を抱えながら悲鳴を上げた。

「血が……沸騰する!助けてくれ!!」

 その傀儡は涙で濡れた顔のまま、嗄れた声で叫ぶ。

「殺して……!私じゃ止められない!」

 音波は止むことなく広がり続け、さらなる兵士たちの肉体を内側から裂き、戦場はまさに地獄と化した。

 さらに絶望的だったのは、傀儡が手足を失い、肉を裂かれても──宿主の心臓が鼓動し、脳が死んでいない限り、蔓がその肉体を完全に支配し続けることだった。

 意識は鮮明なまま、痛覚も記憶も残り、自らが仲間を殺していく光景をすべて見せつけられる。解放は――死のみ。

 銃声が飛び交う中、兵士たちは叫び続ける。

「殺せ!奴らを殺せ!!」

 だがどれほど火力を叩き込んでも、蔓の怪物の猛攻を止めることはできなかった。

 廃墟の中央では、全身を蔓に絡め取られた女兵士が、涙に濡れた目で必死に顔を上げていた。

 彼女はすでに身体の支配権を失って久しい。蔓は鉄鎖のように臓腑へ食い込み、絶え間なく内側を裂き続けていた。

 女兵士は震える唇をわずかに開き、掠れた声で願うように言った。

「お願い……撃って……」

 向かい合う戦友は、涙をこらえながら迷いに迷った末、ついに引き金を絞った。

 銃声が響き、弾丸が女兵士の額を正確に貫く。

 瞳孔がふっと緩み、涙が頬を伝い落ちる。唇にはかすかな微笑が残ったまま、彼女の身体は静かに崩れ落ちた。

 宿主を失った蔓は、力を失って枯れ、砂のように崩れ落ちた。

 ――彼女はようやく救われたのだ。

 超常の力と植物の肉体、そこへさらに蔓の侵攻が重なり、傀儡たちは瞬く間に新たな犠牲者を取り込み続けた。隊は瓦解し、防衛線は破れ、血と肉は泥と混ざり合い、戦場には再び煉獄が広がった。

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