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21 ルート・オブ・テラー

「植物の傀儡だ!」

 警備員が叫び、立て続けに三発発砲する。弾丸は胸を貫き、濃い緑色の液体が四散した。だが傀儡は微動だにせず、背後で蔓を生き物のように蠢かせながら、ゆっくりと近づいてくる。湿った腐臭を帯びた空気をまとい、そのまま一気に迫ってきた。

 痩せた学生の唇が震え、途切れ途切れのかすれた声が漏れる。

「痛い……助けて……」

 その声は悲痛でかすれ、瞳には深い苦しみが宿っていた。意識はまだ残っている。しかし、もはや自分の体を操ることはできなかった。

 生徒たちは悲鳴を上げながら四方へ散り散りに逃げ出した。草むらや壁際、排水溝から蔓が狂ったように噴き出し、足の遅れた二人の生徒を瞬く間に絡め取る。

 一人は棘だらけの蔓に喉を貫かれて血を噴き上げ、もう一人はもがく最中に腕を無理やり引きちぎられた。血しぶきが四方に飛び散り、悲鳴が夜空に響き渡る。血は緑色の樹液と混ざり合い、むせ返るような悪臭が広がり、芝生の上には黒ずんだ染みが瞬く間に広がっていった。

「退却! 今すぐ退却だ!」

 警備員たちは叫びながら発砲し、管理棟へ向かおうとする人々の突破を必死に援護した。銃弾が夜空を切り裂くが、狂ったように伸び続ける蔓の勢いを止めることはまったくできなかった。

 恐怖に駆られた生徒たちは四散して逃げ惑い、なかにはパニックのまま近くの校舎へ駆け込み、身を隠そうとする者もいた。だが重い木製の扉を押し開けた瞬間、薄暗い廊下の奥からいくつもの歪んだ人影が揺らめきながら現れた。

 かつて見慣れた教師や生徒たちの顔は、いまや青黒く変色して歪み、痣だらけで、目は血走っている。口や鼻からは鮮やかな緑の蔓が這い出し、皮膚の下では血管が異様に浮き上がっていた。

「ああっ——!」

 先頭にいた少女が悲鳴を上げた次の瞬間、一本の蔓が彼女の喉を貫いた。血しぶきが剥がれかけた漆喰の壁に飛び散る。残った者たちは恐怖に震え上がったが、もはや逃げ場はなかった。

 植物の傀儡たちが潮のように押し寄せる。手には学生のリュックサックやジャケットを握る者もいれば、壊れた椅子の脚、はさみ、引き抜いた鉄棒、割れたガラス瓶などを手にした者もいる。その動きはぎこちなく、不気味だった。

 狭い廊下には銃声と悲鳴、そして蔓が肉を引き裂く湿った音が入り混じる。血しぶきが四方に飛び散り、壁も天井も濃い赤色に染め上げられていった。

 一体の植物の傀儡が、命からがら逃げ惑う生徒に飛びかかり、乱暴に床へ押し倒した。手にした鉄棒が容赦なく振り下ろされ、頭や胸を何度も打ち据える。血が飛び散る。生徒は苦痛に絶叫しながら体を震わせ、やがて力尽きて息絶えた。

 だがその傀儡の目には涙が浮かび、顔は苦痛に歪んでいた。震える声で何度も呟く。

「ごめんなさい……ごめんなさい……こんなつもりじゃなかった……」

 その表情はまさに苦悶そのものだったが、まるで意識と肉体が完全に引き裂かれてしまったかのように、残酷な行為を止めることができない。恐怖と悲鳴が古びた校舎の中に充満し、そこはまるで地獄のような悪夢へと変貌していった。

 そのとき、血だまりの中に倒れていた学生が、恐怖に震える声で叫んだ。

「先生、助けてください!」

 教授は顔色こそ青ざめていたが、目は暗く沈み、口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。

「もう遅い……」

 彼は低く呟いた。

 学生は必死にもがき、泥と小石を掴みながら外へ這い出そうとした。爪は折れ、血がにじみ出ていた。どうにか体の半分を引きずり出したその瞬間、太い蔓が突然背中を貫き、胸元から血が噴き上がった。泥の中で両手が数度震え、やがて力なく垂れ落ちる。頭は血だまりの中へ横倒しになり、口元には吐ききれなかった助けを求める言葉が、かすかに残っていた。

 校舎の中では血が川のように流れ、死体が折り重なり、切断された手足が血の海の中で転がっていた。むせ返るような血臭は濃密で、まるで空気そのものが凝り固まりそうだった。数体の学生が、蔓に操られた傀儡のようにゆっくりと立ち上がる。空洞の眼窩には不気味な光が宿り、蔓が口や鼻、眼窩から這い出して体を歪ませ、糸で操られる人形のようにゆらりと近づいてきた。砕けた身体からは、断続的なうめき声が漏れる。

「痛い……助けて……」

 痛みと絶望が入り混じり、凄惨で耳を裂くような悲鳴となって周囲に響き渡り、聞く者の背筋を凍らせた。

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