第2話:契約
両親の死亡通知が届いてから二年後の春。
俺は、地元である六王山市の六王山高校という高校に進学していた。
六王山市は別段特筆すべき名所や、観光スポットがあるわけではない。
それなのに、何十年も昔から、六王山市には人が集まっていた。
何があるわけでもないのにどうしてだろうかと考えてしまうのは、地元住人である俺の当然の疑問であったわけだが――。
事件は、その六王山高校の入学式が終わった後に起きた。
我が家の目の前で人が倒れていた。
うつ伏せに倒れた人物は、地面にキスをするように倒れている。
「だ、大丈夫ですか!?」
「・・・・・・」
返事はなかった。
まさか、死んじゃってます!?
「・・・を・・れ」
ぼそぼそとした声で何かを言っているが、声が小さすぎて何を言っているのか聞こえなかった。
「な、何ですか!?」
せめて声が聞こえるように、倒れ伏した人を仰向けにしようと近づいたときだった。
「触れるなぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
倒れていたのは女だった。
女は怒声を上げて言った。
しかし、遅かった。
既に、俺は女性の腕に触れていた。
「逃げろっ!!」
女性は俺を見て言う。
え?
なに?
俺、何かまずいことしちゃいました~?
『我は生ける神話。
私は歩く伝承。
僕は黙示録。
己はパンドラの箱。
ここに契約は完了し、神代が築かれる。
感謝しよう。この出会いに。
讃えよう。この奇跡を。
全ては我が契約者の物に。
今こそ、その名を叫ぼう。
神代の王の名。
その名は帝崎聖夜。
汝、世界の王となれ』
不思議な声だった。
男とも女ともわからない声が、朗々と何かを話している。
本当に何なんでしょうか!?
「・・・悪く思ないでください」
今度の声ははっきりと聞こえてきた。
耳元で囁くようにだったが、聞き間違えるはずがなかった。
声の主は六年間という長い時間を共に過ごしたシュタイナーさんのものだった。
腹が熱く火照り出した。
鈍い痛みも感じる。
これは・・・もしかして?
「・・・あー、コレは死ぬな」
俺の腹には、恐らく日本刀だと思われる刀が刺さっていた。
あー、恐らくというのはね、今激痛でしっかりと確認なんて出来ないからです。
「まだやり残したこといっぱいあるのに・・・」
それが人間としての、俺の最期の言葉になった。