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 ――透けていた。

 足元で寝そべっていた大が、毛を逆立てる気配を感じて上体を起こし、身体をねじるようにして丘を振り仰いだ風斗かざとは我が目を疑う。

 淡い光を纏って、若い女――少女がひとり丘の上に立っていた。

 鮮やかな夏の空と風にそよぐ梢が、その細い体の輪郭の向こうに透けて見える。

 ひとならぬものであることは瞭然だったが、怖くはなかった。

 真昼の鮮やかな陽ざしの中だったせいなのかも知れないし、『彼女』が泣いていたからかも知れない。食い入るように遠くを見つめる瞬きを忘れたように見開かれた瞳から、ぽろぽろと零れていく。悲しみでも、怨みでもない、風斗には理解できない不思議な涙だった。

 大の首を宥める様に撫ぜて、風斗はそっと立ち上がり、丘を登る。彼女は気づかない。

 細い手足に、ぴったりとした不思議な服。童女のような、肩を覆うほどの長さの髪。

 異装をさしひいてもなお、少年の目に彼女は綺麗に映った。

 声は・・・届くのだろうか。

「……なにを泣いているんだ?」

 たぶん、運命の織物はその自覚もなく最初の糸が渡されるのだ。



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