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賢者失格  作者: 麻理茂
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惑いの森

平田 結はアルティオーネ クロニクル、通称『アルクロ』と言うゲームにハマっていた。

元々、ゲームは好きだったがロールプレイングと乙女ゲーム要素が合わさったこのゲームは、高校生の結の乙女の心をガッツリと掴んでしまった。


恐ろしや…乙女ゲーム!イケメンの力!と思いつつ、今日も学校が終わったら、まだ攻略していないキャラを攻略する為、アルクロをやり込もうと結は決めている。


「……ここ、何処だっけ?森なんて近所にあったっけ…?」


気がつくと木々が深く茂る(しげる)薄暗い森に結は居た。それから日が暮れても結は、出口を見つけられずに走って、走って、ひたすら森の中を闇雲に走っていた。


あれから逃げる為、あれに捕まったら終わってしまう捕まったらーーー殺される。

本能がそう頭に呼びかける。


結を食料としてしか認識していないと思われるソレは、見た目は猪のように見えるが、身体半分程の牙が付いており、獣と言うよりゲームに出てくるモンスターのように見えた。


モンスターだと確信があっても、ここにはゲームの中の勇者や仲間達は居ない。ゲームでは、ただの木の剣や盾でも倒せたりするが、今の結はどちらも持っていないし、ゲームと同じく倒せるとは限らない。違ってもやり直しはきかないと思うとアレに向かって行くのは自殺行為。


その間も猪の口からは、だらしなく唾液が落ちて周りを焦がした。そこからは、酢のような強い匂いが(ただよ)い周りに広がる。


「……っ、だ、誰か助けてっ!お願い!!!」


背後に迫る今まで体験した事の無い恐怖を感じながら結は、力強く叫んだ。誰かに届いて欲しいと願って……。


しかし、彼女の声は、弱々しく今は、森の中にこだまするばかりでーー虚しく、森の闇に沈んでいった。


♢♢♢♢♢♢


惑いの森(まどいのもり)のその奥深くには、古い神殿が寂しく建っている。


今は、もう人々が訪れなくなったその場所には、年中靄が立ち込めーー永年にわたり湧き水が神殿の大半を沈めていた。人が踏み入れなくなって久しい神殿には、沢山の植物達が根を下ろし青々とした葉を蓄え神殿を包み込むよう(つた)をはっていた。


廃墟同然の古い神殿を守る様に植物が包み込み特別な場所だと象徴しているかのようだ。植物達は活き活きと育ち植物達の鼓動が聞こえてくる様な気がさえする。


平田 結がモンスターに追われる数時間前、神殿の奥深くへと王宮魔導師セシルは足を踏み入れていた。

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