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カウントダウン1(ミッシェル・マリアナ視点)

「じゃあ、後は任せるね」

「はい、ご期待に応えて見せます」


 そう言ってダンバート様の部屋を出て、収穫物を確認して上がりそうになる口元を必死で押さえながら自室に戻る。

 まあ、貰ったのはどうっていう事ない殺鼠剤。

 ただ、濃度次第では人間にも応用が利くかもしれない、っていうので、ダンバート様が実験したがっていたようだ。

 ただの男爵家の人間が、最期に王子の役に立てるのだからむしろ光栄に思うべきだろう。

 自室に戻って薬の入った瓶を机の上に置いて、防音結界を張って、さらに視覚麻痺の結界も張ってから、にやりと笑う。


「人形遣いじゃないよ。僕はシナリオライターだよ、ナティコト様」


 メレディスも気が付いていないけど、僕の前世は『デュオスカーラ・アンダーワールド』のシナリオライターだった。

 まあ、メレディスの前世が誰だったのかは知らないけど、僕の部下の一人だったんだろうなぁとは思う。

 正直、乙女ゲームそのままのメレディスだったら、絶対に愛せないし、シナリオブレイクしてでも婚約破棄をしてたところだけど、実際のメレディスは僕のことめちゃくちゃ愛してくれてるし、健気だし、あれで想いを返さなかったら男が廃るって感じだよ。

 でもヒロインまで転生者になるなんて思わなかったな。

 これもお約束っていうやつなのかもしれないけど、乙女ゲームのヒロインを演じてればまだよかったのに、アレじゃあ応援する気も失せるってものだよね。

 発言内容からして、まだ配信してた時期のユーザーっぽいけど、あれじゃあ、なんどもイベントをやり直したり、攻略情報ガン見だったんだろうな。

 隠しキャラであるミッシェルが登場しないまま終わったアプリだったけど、まあ、関わってきたゲームシナリオのなかではこだわって作ったと思う。


「まったく、大人しくシナリオをかき回すだけなら見逃してたのに、メレディスに手を出そうとするから」


 あの時、メレディスをひっつかんで殴ろうとしなければ、まだゲームを続けられたかもしれないけど、もう終わりだよ。

 ナティコト様は上手くマリアナ嬢を殺してくれるだろうから、僕がするべきことは後顧の憂いを断つために、マリアナ嬢の実家を消し去る事。

 家を取り潰すぐらいなら、僕の権力でどうにでも出来るけど、生きてたら何をされるかわかったものじゃないから、念には念を入れておいた方がいいだろう。

 それにしても、ナティコト様は鋭いな。

 似たような狂気を持っているからかもしれないけど、あんなに鋭いキャラ設定じゃなかったと思うんだけど、今のメレディスの影響を受けているのかもしれない。

 僕が変わって、多少周囲が変わったように、メレディスの周囲が変わっても当たり前だろう。

 メレディスが乙女ゲームの設定通りに隣国から帰ってきてすぐに、僕と婚約をしたけど、あの時にはもうメレディスは前世の人格になっていたんだと思う。

 それがよかったな。

 乙女ゲームの設定では、隣国でのトラウマから婚約者になった僕に初めは献身的に、それこそ乙女ゲームのヒロインに対するように真摯に接する。

 それがミッシェルがメレディスに固執する原因になるのだが、僕はそもそもメレディスのことは推していた。

 献身的にヒロインをサポートする異常なまでの性格は、僕が作り上げたと言ってもいいかもしれない。

 今のメレディスが嫌いなわけじゃないし、むしろキャラクターであった時よりも愛おしいと思える。

 それは生身で接しているせいかもしれないけれど、メレディスがまっすぐに僕の事を愛してくれるのが心地いい。

 もちろん、僕もできうる限り最大限、メレディスを愛している。


「その結果、ヒロインが犠牲になるのは、まあ、お約束ってね」


 そう呟いて暗い笑みを浮かべてしまう。

 まったく、優しくて人当たりがよく、頼りになるミッシェルとしては見せられない顔だな。

 でもまあ、これもまた、今の僕なのだから仕方がない。


◇ ◇ ◇


「ねえ」

「はい、なんですか? ナティコト様」

「これあげる」

「え? ジュース?」


 急に声をかけられて渡された瓶の中身を見て首を傾げた。

 こんなイベント無かったと思うんだけど、あたしが頑張ってるから特別イベントが発生したとか?


「特製ジュース。部屋に帰って飲んでみて」

「わかりました!」


 ふふ、今までの塩対応はただ単に好感度が足りてなかったせいなのね。


「味の感想、後でちゃんとお伝えしますね」

「あー、いいよ。僕は味を知ってるから」

「そうなんですか? あ、もしかしてあたしのために頑張って作ってくれたとかですか?」

「まあ、そんなとこかな」

「嬉しいです! 大切に飲みますね」

「いや、一気に飲んでいいよ」

「そうですか? なんだかもったいない気がします」

「気にしないで、じゃあね」


 そう言って離れて行ってしまったナティコト様の背中を見送ってにんまりと笑う。

 ちょっと心配だったけど、夏季休暇前までにこの調子で好感度を上げて行けば問題ないわね。

 他の攻略対象が気になるけど、とりあえずナティコト様だけでも落とせてるみたいだしよかったわ。

 身分制度ってのも、あたしがナティコト様の恋人になって、ナティコト様を後ろ盾に出来れば、この学園での地位も一気に上がるわ。

 まさに一石二鳥じゃない。

 やっぱりあたしはヒロインね、お助けキャラがいなくてもちゃんと攻略対象を落とせるなんて、才能が違うわ。

 このジュース、皆に自慢したいけど、とりあえずは二人の秘密イベントなのかもしれないし、黙ってた方がいいわよね。

 あーでも、あの役立たず女には教えてあげてもいいかも。

 あの女の悔しがる顔を見るのも悪くないわね。

 どこでシナリオが狂ったのかは知らないけど、どうせ自分の爵位に胡坐をかいてるだけのバカ女なんだから、あたしを楽しませるぐらいしてもらわないとね。

 ほんとにあたしって優しい。

 あんな役立たず女に少しでも役を上げようとしてるんだもん。

 感謝して生きて欲しいものだわ。

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