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カウントダウン3(ゼシュティア視点)

「あの無礼な男爵令嬢、ボクに任せてもらってもいい?」


 ナティコトがそう言った時、やはり最初に動くのはこいつか、とため息を吐き出した。

 別に、あんな男爵令嬢一人どうなろうと関係ないが、臣下になるものに操作されるようでは、王の器とは言えないな。

 他の者が話している間、何も聞いていない、何も知らないと言うような顔で食事を食べているミッシェルを見る。

 すました顔をしているが、こいつが今回の首謀者なのは調べがついている。

 一番動かしやすいナティコトにターゲットを絞り、あの愚かな男爵令嬢を動かした。

 ミッシェルはメレディスが関わってくると容赦がないからな、どうせあの男爵令嬢がメレディスに対して何かしたか、しかけたのだろう。

 ナティコト達が席を立って、残ったのは私とシルバーン、そしてミッシェルだけになる。


「ミッシェル」

「はい、なんでしょうか、ゼシュティア様」

「メレディスに迷惑をかけるような真似はするなよ」

「いきなりですね。僕がメレディスに迷惑を? まさかそんな真似をするつもりはありませんよ」

「……まあ、そう言うか」

「何かお気に障るような事でもしてしまいましたか?」

「ふん、こそこそ動くのだけは貴族らしいとだけ言っておこう」

「よくわかりませんが、褒め言葉として受け取っておきます」


 まったく、食えない男だ。

 メレディスが認めるだけの才能はあるという事だろうが、いかんせんナティコトに近い狂気を隠し持っているのがよくないな。

 気づいている者はほとんどいないが、メレディスは気づいていながら付き合っているのだろうな。

 狂気のトリガーが自分だという事もわかっているのだろう。


「それで、あの男爵令嬢はメレディスに何をしたんだ?」

「いつも通りですよ、メレディスもいい迷惑です」

「……そうか」

「もうお戻りですか?」

「ああ」


 ミッシェルの問いかけに短く答えて食堂を後にする、途中で見かけたダンバートと軽く会話をして、最後にミッシェルについて忠告をしておいた。

 ダンバートは病弱であるがゆえに敵が少ない。

 だから、警戒心が他の王子よりも薄い。

 別に兄として手を貸してやるつもりはないが、学園に居る間に公爵子息が王子を手にかけるなどというスキャンダルはごめんだ。

 王族同士での潰し合いなら問題ないのに、そこに高位とは言え貴族が絡むと問題になると言うのは、気疲れしてしまうな。


「あ、ゼシュティア兄上」

「なんだ、私に何か用か?」

「あの男爵令嬢の件で、ちょっと話があるって言うか、ね?」

「手短に済ませ」

「まあまあ、とりあえずボクの部屋に入ってよ」


 手招きをされて、渋々とナティコトの部屋に入る。

 男だと言うのに、可愛らしいコーディネートで整えられているナティコトの部屋に入るのは憂鬱だ。

 部屋の中に入って見れば、王宮の部屋と変わらない可愛らしいものであふれ返った部屋に、ため息を吐き出してしまう。


「まあ、座ってよ」

「遠慮する。手短に話せ」

「手短にすむかはゼシュティア兄上次第だよ」

「私次第? どういうことだ」

「まあ、とりあえず座ってよ」

「……はぁ」


 仕方がないので勧められたソファーに座る。

 もしこれが貴族の子女だったらお茶を出さない事を不敬だと思ったかもしれないが、ナティコトの部屋で出されるお茶など、危険すぎて飲む気にもならない。


「それで、話は何だ」

「ミッシェルの事なんだけど、ゼシュティア兄上はどう思う?」

「……メレディスのいい婚約者だと思うが?」

「建前はどうでもいいよ」


 ばっさりと言ってくるあたり、ナティコトらしいと言えるが、王子でなければ不敬罪で処罰を与えている所だ。


「あの男爵令嬢がさぁ、この間メレディスに掴みかかったらしいんだよね。もちろん、メレディスに届く前にミッシェルが止めたみたいだけど、それがとどめだったんじゃないかなぁ」

「という事は、お前は今回、裏で糸を引いているのがミッシェルだとわかっているという事か」

「うん」


 悪びれなく言う姿には、いっそ感心すらしてしまいそうだ。


「それでミッシェルには何のお咎めも無しか?」

「えぇ、ミッシェルに何かしたらメレディスが怖いよ。それに、どんなに操られていたとしても、ボクのお気に入りの彫刻を壊したのはあの男爵令嬢だし?」

「まあ、迷惑をかけられているのは事実だし、ちょうどいい厄介払いと言う所か?」

「そんなに深く考えてないよ」


 まったく、おちゃらけているこの態度が曲者なんだ。

 さも自分は何も知らないと言うような顔で、何を考えているかわかったものじゃない。

 王位は狙っていないと常々言っているが、こいつの背後はそう簡単に手放したりはしないだろう。


「流石に男爵令嬢とはいえ、簡単に人殺しを堂々とする王子を、王位につけようというバカはいないと思うんだよねぇ」

「愚か者は何処にでも湧いてくるだろう」

「飽きないよねえ、ボクにとってはどうでもいいんだけど、ゼシュティア兄上にとっては重要事項ってところかなぁ?」

「お前のそう言う所が気に入らないんだ」

「あはは、何の事かわかんないけどねえ。でも、ボクはゼシュティア兄上の敵に回るつもりはないよ?」

「今はその言葉を信頼してやる。それで、メレディスに何を聞くつもりなんだ?」

「殺していいかとか、殺し方にリクエストがあれば聞こうかなぁって」

「そうか、好きにしろ」


 呆れて席を立ってドアに向かうと、背後からナティコトの声が聞こえてくる。


「でも、ミッシェルは怖いよねえ」


 その言葉には賛成だが、これ以上この部屋でナティコトと話を続ける気も起きないので、そのまま部屋を出て自室に戻った。

 …………ミッシェルが怖いだと?

 そんなものとっくに知っているに決まっているだろう。

 まあ、メレディスが関わらなければ無害だが、私達のような近しい者は特に注意しなければいけないだろう。

 その間に恋愛感情がなくとも、なにがミッシェルの狂気の引き金になるかわかったものじゃないからな。

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